上 下
2 / 4

幼少期一部編

しおりを挟む
エリーナと出会った運命の日、エリーナが泣きすぎて話せない状況だったため筆談をとった。実はそれからもエリーナは常に泣いていて泣き声しか聞いたことはない。

それでも筆談しながら僕に一生懸命伝えようとする姿は可愛らしくて、笑ったらもっと可愛いんだろうなと想像する。

「ひく……っうぐ」

そんな想像をしていたらくいくいと可愛らしい手が僕の袖を引っ張るのでああ、文字が書けたのかと紙を見た。

『わたし、げーむではきりあすさまがいちばんおしでした』

「おし?」

エリーナは前世の影響かたまにわからない言葉を書く。もしかしたら僕の勉強不足かもしれないとも思うので俄然エリーナのためにも勉強しないとと燃えているのはここだけの秘密だ。エリーナに引かれたりしたら僕が泣く自信があるから。努力は見せびらかすものじゃないと従者も言っていたし。

「う……っう……っ」

『すきってことです』

この瞬間推しって言葉は一生忘れない言葉となった。初めてのエリーナからの好きという言葉なのだから当然である。

「……エリーナ、ここにじぶんのなまえと、僕のことがすきってかいて」

「……っ?」

『えりーな、きりあすさまがすき』

「たからものにする!」

「や……っうう……っ」

思わず嬉しくて紙を持っては懐に仕舞えばエリーナが恥ずかしそうに泣きながらこちらを見つめる。え、なに、かわいい……これが未来の悪役令嬢だなんて誰が思うだろう?

エリーナの話を信じるとしてもエリーナが悪いことするとは思えないし。エリーナが悪いことして死んじゃうなら僕は王子をやめてでも庇う。絶対げーむとかいう僕みたいにヒロインって子と浮気とかしない。

こんな可愛いエリーナを放って他の女の子と仲良くだなんてげーむの僕を殴りたいくらいだ。でもヤキモチ妬いて意地悪するエリーナは可愛いかもしれないけど……それでエリーナが死んじゃうなら阻止しないといけない。

そんな感じで僕たちは会える日を仲良く過ごしていたんだけど……ある日、教育係に言われた言葉で、僕は筆談なしにエリーナの言いたいことを理解しようという決意が宿る。

それは貴族内で珍しい恋愛結婚をしたと言われる教育係エドワイド・ラント先生からどうすればエリーナともっと仲良くなれるかと勉強の休憩時間に聞いたときだった。

「そうですなぁ、私たちは誰よりもラブラブであると言われたら否定できませぬ。何せ何も言わずとも意志疎通ができますからな」

「こ、ことばもなく?」

「相手を想う気持ちさえあれば時に言葉なく互いを理解できますとも」

この時、エドワイド先生が時と場合によると遠回しに言っていたつもりだったようだが、泣いて言葉を言えないエリーナに筆談させてばかりじゃ仲良くなれないんだと本気で思った僕。げーむとやらの話をきいてから仲良くなれないのはエリーナを不安にさせる一因でもあるということでもあった僕はその日からエリーナが僕に何を伝えたいかの特訓を開始した。

「ひっく……」

「りんごがたべたい!」

「うく……っ」

『おしいです。あっぷるぱいがたべたいです』

「あっぷるぱいかー!くそぅ……ジード、アップルパイ用意して!」

「……はい」

答えを出されて悔しい思いをしながらも近くにいた従者ジードにエリーナの食べたいものを用意するように言う。そういうわけで始まったエリーナと仲良くなる特訓はみるみるうちに上達し、ジードに何故わかるんです?と言われようともわかるからわかると返せるぐらいに成長した。

これでいつ泣いていても黙っていてもエリーナの言いたいことがわかるぞと確かな自信を持って。

「えぐ……っ」

「きにしなくていいよ!なくのはつかれをとるのにだいじなんだってエドワイドせんせいがいってたから!つかれをためるとしんじゃうこともあるみたいだからいっぱいないていいよ!」

おかげですぐエリーナの不安も汲み取れてよかったと思う。いつかエリーナに笑う日が来ることを願いながらも、泣くほどに未来を重く受け止めてそれがストレスになっているだろうエリーナの涙を止めることはできない。

だから今はたくさん泣いてその分思いっきり笑える日が来たらと願う。それまで不安や恐怖は僕が全て感じとってなくしてあげるから。

~宣伝幼少期編一部終了~








あとがき
思った以上に続き読みたいと言ってくださる方がいたことに驚きと喜びでいっぱいです。

書くとすれば改めて新作で出すかと思います。タイトルはもう少し短くできないかと検討中です。

泣いてばかりのヒロインになにこいつと思われないかひやひやだったための宣伝小説ですが、意外と受け入れてもらえているようで何よりです。

他にも意見あればぜひお願いします。爵位に関しては本編にて明らかにする予定のためあえての名前のみです。

話やキャラについての意見も嬉しいですが、タイトルについても意見いただけたら参考にしたいです!あまりにも長いので……。

ちなみに今回はあっさりと書きましたが、長編では特訓場面はもっと長くなるかと思います。
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

婚約者は紙袋がお好き

荷居人(にいと)
恋愛
私の婚約者はとても優しい。でも私はだめだめでいつも婚約者に迷惑をかけてしまう。 「何か彼に喜んでもらえることできないかな……」 そうして彼を観察していて私は閃いた。 「私、紙袋を被って生きる!」 「いや、何言ってるかわからない」 親友に呆れられながらその宣言通り紙袋を被って生活し始めた私に婚約者は…………

ブラック企業を退職したら、極上マッサージに蕩ける日々が待ってました。

イセヤ レキ
恋愛
ブラック企業に勤める赤羽(あかばね)陽葵(ひまり)は、ある夜、退職を決意する。 きっかけは、雑居ビルのとあるマッサージ店。 そのマッサージ店の恰幅が良く朗らかな女性オーナーに新たな職場を紹介されるが、そこには無口で無表情な男の店長がいて……? ※ストーリー構成上、導入部だけシリアスです。 ※他サイトにも掲載しています。

【R18】愛され総受け女王は、20歳の誕生日に夫である美麗な年下国王に甘く淫らにお祝いされる

奏音 美都
恋愛
シャルール公国のプリンセス、アンジェリーナの公務の際に出会い、恋に落ちたソノワール公爵であったルノー。 両親を船の沈没事故で失い、突如女王として戴冠することになった間も、彼女を支え続けた。 それから幾つもの困難を乗り越え、ルノーはアンジェリーナと婚姻を結び、単なる女王の夫、王配ではなく、自らも執政に取り組む国王として戴冠した。 夫婦となって初めて迎えるアンジェリーナの誕生日。ルノーは彼女を喜ばせようと、画策する。

女性執事は公爵に一夜の思い出を希う

石里 唯
恋愛
ある日の深夜、フォンド公爵家で女性でありながら執事を務めるアマリーは、涙を堪えながら10年以上暮らした屋敷から出ていこうとしていた。 けれども、たどり着いた出口には立ち塞がるように佇む人影があった。 それは、アマリーが逃げ出したかった相手、フォンド公爵リチャードその人だった。 本編4話、結婚式編10話です。

乙女ゲームの愛されヒロインに転生したら、ノーマルエンド後はゲームになかった隣国の英雄と過ごす溺愛新婚生活

シェルビビ
恋愛
 ――そんな、私がヒロインのはずでしょう!こんな事ってありえない。  攻略キャラクターが悪役令嬢とハッピーエンドになった世界に転生してしまったラウラ。断罪回避のため、聖女の力も神獣も根こそぎ奪われてしまった。記憶を思い出すのが遅すぎて、もう何も出来ることがない。  前世は貧乏だったこら今世は侯爵令嬢として静かに暮らそうと諦めたが、ゲームでは有り得なかった魔族の侵略が始まってしまう。隣国と同盟を結ぶために、英雄アージェスの花嫁として嫁ぐことが強制決定してしまった。  英雄アージェスは平民上がりの伯爵で、性格は気性が荒く冷血だともっぱらの噂だった。  冷遇される日々を過ごすのかと思っていたら、待遇が思った以上によく肩透かしを食らう。持ち前の明るい前向きな性格とポジティブ思考で楽しく毎日を過ごすラウラ。  アージェスはラウラに惚れていて、大型わんこのように懐いている。  一方その頃、ヒロインに成り替わった悪役令嬢は……。  乙女ゲームが悪役令嬢に攻略後のヒロインは一体どうなってしまうのか。  ヒロインの立場を奪われたけれど幸せなラウラと少し執着が強いアージェスの物語

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

巨乳令嬢は男装して騎士団に入隊するけど、何故か騎士団長に目をつけられた

狭山雪菜
恋愛
ラクマ王国は昔から貴族以上の18歳から20歳までの子息に騎士団に短期入団する事を義務付けている いつしか時の流れが次第に短期入団を終わらせれば、成人とみなされる事に変わっていった そんなことで、我がサハラ男爵家も例外ではなく長男のマルキ・サハラも騎士団に入団する日が近づきみんな浮き立っていた しかし、入団前日になり置き手紙ひとつ残し姿を消した長男に男爵家当主は苦悩の末、苦肉の策を家族に伝え他言無用で使用人にも箝口令を敷いた 当日入団したのは、男装した年子の妹、ハルキ・サハラだった この作品は「小説家になろう」にも掲載しております。

図書館の秘密事〜公爵様が好きになったのは、国王陛下の側妃候補の令嬢〜

狭山雪菜
恋愛
ディーナ・グリゼルダ・アチェールは、ヴィラン公国の宰相として働くアチェール公爵の次女として生まれた。 姉は王子の婚約者候補となっていたが生まれつき身体が弱く、姉が王族へ嫁ぐのに不安となっていた公爵家は、次女であるディーナが姉の代わりが務まるように、王子の第二婚約者候補として成人を迎えた。 いつからか新たな婚約者が出ないディーナに、もしかしたら王子の側妃になるんじゃないかと噂が立った。 王妃教育の他にも家庭教師をつけられ、勉強が好きになったディーナは、毎日のように図書館へと運んでいた。その時に出会ったトロッツィ公爵当主のルキアーノと出会って、いつからか彼の事を好きとなっていた… こちらの作品は「小説家になろう」にも、掲載されています。

処理中です...