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クールぶった中身受け溺愛変態?×面食い平凡(面食い平凡視点)
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メイン登場人物
クールぶった中身溺愛変態?……五十嵐琉聖
面食い平凡……野木純
設定
同級生の高校2年生。琉聖からの告白で付き合ったものの、目があってもすぐ逸らされる純。付き合う前から目は合うと思っていたもののその際もすぐ逸らされ対して変わらない関係に純は不安にかられる。そんな時琉聖が女子に告白され向き合う様子を見て………。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『ずっと好きだった……付き合って、ほしい』
イケメンってついつい見てしまう俺だがゲイだったわけではない。それでも先日男と付き合う決心をしたのは同級生でもある五十嵐琉聖が俺好みのイケメンだったなんて理由としてはあまりにも最低な気がする。
でも琉聖となら男同士でも嫌悪感を感じなかったからこそ琉聖のたった一言の短い告白に応じたわけだが……進展どころか寧ろ距離が開いている気がする。
「なぁ、一緒に帰らね?」
「……いや、今日は用事が」
「ふーん……」
付き合ったからには帰りくらいはと誘って一度と一緒に帰ったことはない。なんなら誘う前は一瞬目が合うも、すぐ逸らされ逸らされたままの会話。じっと視線を向けようとこちらに向くことはない。
付き合うとはなんだろう?好きならもっと……なんて不満が募るのはそれなりに俺も琉聖を意識している証拠なのだろうか。
でもそれも付き合う前より避けられているような気がしているせいだろう。まだ付き合う前の方が会話はできていた。なんなら会話さえすぐ切られているのが最近わかってきて胸が痛くなることがある。とはいえ、本来クールで通ってる彼は普段からあまり話さない人だから気のせいだと思い続けて耐えた。
そしてついにはふと見た時に琉聖が誰かと会話してるのを見て何となくもやっとさえしたけどそれにも気づかぬふりをして………でも、それももう無理だなと思ったのはたまたま昼休みに琉聖に告白する女子との様子を見た日。決して覗き見とかそんなんじゃない。
「好きです!付き合ってください!」
やっぱイケメンはモテるなぁとふと通りかかってあの二人の見えない死角だったものの向かいたい場所へ行こうとすれば明らかに見つかるのでそれが終わるのを待つしかなかった。
「ごめん」
あ、断ってくれた。なんて思うよりも俺はなんで俺との昼食断って告白受けてんの?とか、人見て話せるじゃんとかそんな暗い考えばかり浮かんでいて、ああだめだだめだと振り切ろうとした時だった。
「ううん、いいの!気持ち伝えたかっただけだからっ」
「そ、ありがと」
「あの、よかったら今日だけでいいからご飯食べない?」
「ああ」
なんで俺はだめでその女とはご飯一緒に食べるの?よりも女子と目を合わせても俺の時のように逸れることのないそれにショックを受けた。
うん、知ってたよ。俺もう琉聖をずっと好きだったの。気づいたら耐えられない気がしたからずっと気づかないふりをしてた。嫉妬するに決まってんじゃん、胸痛くて当たり前だろ?
「琉聖のばーかっ!大嫌いだ!」
「え?何?」
「……!純!」
気がつけば二人の雰囲気をぶち壊すように叫んでいた。情けなくも涙まで出てきて久方ぶりに琉聖に呼ばれた名前に振り向くことなく走って逃げてそのまま帰宅。
泣いて帰ったからか、母は心配する様子はあったが問い詰めないでくれて、部屋に引きこもった俺に学校には連絡いれといたからという気遣いにこれほど親の存在がありがたい日はないだろうとさえ思えた。
ああ、明日どうしようなんて冷静になり始めたのは日が沈んだ頃で、ポケットに入れていたスマホを見ればたくさんの電話の着信履歴とメールとメッセージアプリライム。多くは琉聖で、後は友達。
琉聖のメールとライムを見れば全部似たようなこと。
『話せないか?』
話さないのはお前だろ。
『どこにいる?』
家だよ、でも答える必要あるか?
『電話、出てくれ』
ついに別れ話でもすんのか?
心で嫌みたらしく言うも本人の前では言えるはずもない情けない俺。ああ、女々しすぎんだろ……ほんと。
『俺は今でも好きだ、愛してる』
今更なんだよ……とは思うのに嬉しく思う自分が嫌だ。気づかぬふりをしてきた代償だろうか。
「愛してるだなんて嘘くせぇ……うそ、だろ……っ」
ああ、せっかく止まっていたのに。思ったよりも堪えている自分がどこまでも惨めだ。
『もういい。別れよ、疲れた』
ライムでそれだけ返してスマホの電源を切る。ブロックまではできない俺はやけくそ気味だからだろうか。いや、繋がりを断ちきるのが怖いのかもしれない。
「純、ご飯いる?」
「いらない」
ああ、もうそんな時間かなんて思い母に悪いと思いながら断る。そして次の瞬間。
ピンポンピンポンピンポン………
インターホンの連打の嵐。
「もう、こんな時間に誰かしら……?開けますから待ってくださいな~」
「誰だよ、もう」
一度鳴らせばわかるってと思いながら布団を被る。しかし、それもすぐ剥がれることとなった。
「純……!」
焦るような男性の声。それは今最も聞きたくない人の声。
「出てけ!」
こんなとき、鍵つきじゃない自分の部屋が恨めしい。というか何故こいつが入ってきてるんだと気が気じゃない。
「わ、別れたくない!あれは違うんだ!告白はされたけど断って……」
あまりらしくないくらいに慌てた声。それと言い分からして勘違いさせてるのがわかる。告白を断ったのは見ていたから知ってるなんて琉聖は知らないしな。大方、俺の誘い断って女といたから……なんて思っているのかもしれない。
ああ、でももうそれが理由でもいいか。
「何が違うんだ?」
でも顔は見たくない。また目を逸らされたら耐えられないと布団を被ったまま聞く。
「二股とかそういうのじゃないってことで………」
「俺との食事の誘いは断ってあの子のは了承してたじゃん」
「あれは……」
それだけ聞いてたふりしとけば告白を断ったのも嘘だと思ったふりをしても無理はないだろう。だってこれは事実だ。
「言い訳とかいいから。どうせ俺のことからかってんだろ?お前普段クールで真面目なイメージだったからついつい信じちまったわ」
「違う!」
「いいよ、否定しなくても。俺避けられてるの知ってたし」
「それは……!」
「俺が断らなかったから本当は困ってたんだろ?よかったな、ようやく別れられるぞ」
ああ、自分で言ってて心が壊れそうだ。ただでさえ泣いているのがバレないようこれでも必死だというのに。
「違う!別れたくなんてない!」
お前そんな大声出すキャラでも必死になるキャラでもないだろうになんでそんなこと言うのかもはや何がしたいのか俺にはわからない。
「いい加減にしてくれ!」
だからこそもう否定をする言葉以外出そうにない。もう疲れたと俺の心が叫んでいるから。
「いやだ!」
いつもならあっちから引こうとするのにこれじゃあ真逆だ。
目を、目を合わせればいつものように引くだろうか?なんて悲しい考えが浮かんで布団から出て琉聖を見れば琉聖は驚いた顔をしていつものように目を逸らす。
やっぱり逸らすのかよ。俺が泣いていたとしても。
「いっつもいっつも目、逸らすくせに……!なにが、わかれたく、ない……だよっ!」
「純……?」
「そんなに……っ平凡顔は、見苦しい……っですかぁ?」
これでもイケメンと釣り合うなんて思ってたわけじゃない。それでも俺は………。
「そんなんじゃ……!」
「何も、しないなら……っ話すらしたく、ないなら……っもう、関わらなきゃいいだろ……っ!」
「違う………っ!」
「な……っ!は、なせ!」
否定の言葉と共に抱き締められて、思考が追い付かない俺は抵抗するが残念ながらイケメンの力には敵わなかった。こんな風に触れあうのはこれが初めてでもはやキャパオーバーだ。でもこんな時すら顔を胸板に押し付けられて琉聖と顔は合わせられない。
「純の顔を見れないのは純が可愛すぎるからだ!」
「………は?」
とはいえまさかの返しにぽかんとせざる終えなかった。もはやからかわれているのではとこの時ほど思う時はないだろう。
「俺はクールでも真面目でもなければみんなが言うイケメンでもない!」
いや、イケメンではあるだろう。まあ今の様子にクールさがないのは否定しないが。
「純に誤解されたまま別れられたら元も子もないから俺の秘密を話すけど、俺は純を見続けたら鼻血が出るんだ。だから純を見れなかったというか……」
「………は、鼻血?」
言い訳にしても酷すぎる。さすがに信じれないと思えばばっと離され、じっと琉聖に見つめられる。
なんか改めて見つめられると………ん?
「悪い……ティッシュいいか?」
「え、あ、うん」
慌ててベッド近くにある箱ティッシュを渡せば琉聖が鼻をティッシュで押さえる。………つまり、マジで鼻血が出た。
「正直、純の後ろ姿すら鼻血対象なんだ。カッコ悪すぎて目を逸らすようにしてたんだが……かなり気にさせてたんだな、悪い」
鼻を押さえながらしょげる琉聖のレアなこと。本当に反省しているようだ。さすがの俺も鼻血にびびり涙もいつの間にか止まり、冷静になった。
「いや、俺も本当は告白断ってたの見たから……食事、断らなかったのも辛かったけど」
「う……っ次からは断る。それで諦めてくれるならと思ったらな……でも純に嫌われるくらいなら他にどう思われようと告白自体行くべきじゃなかったな」
「琉聖はモテるから仕方ないし、俺だって告白くらいは聞くからそれに関しては何とも……」
「告白、されるのか?」
「え、まあ……」
これでも俺は何故か後輩から琉聖ほどではないがたまに告白されていた。初めて知っただろう琉聖は鼻を押さえたまま俺に真顔で聞いてくる。鼻血が止まらないんだろうが、そんな琉聖もまたかっこいいんだからイケメンとは罪だ。
「………俺は浮かれすぎていたようだ。もはやカッコ悪いところを見せてでも純を離さないようにすべきだった」
浮かれてたんだ……と今この時知った。どう見ても浮かれた感じには見えなかったし。
「というか、鼻、大丈夫か?」
そしてこう話してる間にも幾度と血だらけになっていくティッシュの山にさすがに心配になる。
「純を見ている間は鼻血が止まらなくてな。でも純に別れを告げられるくらいならこれくらい大丈夫だ」
寧ろ俺が見てられない。というかこんなことなら………
「やっぱ別れた方がいいんじゃ……?」
「な、なんでだ?やはり鼻血出す俺はカッコ悪くて嫌いか?」
「いや、だって理由もわからず俺見て鼻血出すとか心配だし……。やっぱ俺じゃ釣り、合わないし……」
なんか自分で言っててへこむ。けど、正直目を逸らされる理由がわかった今少しだけ気持ちは楽になっている。理由が意味不明のものでも。
「釣り合う、釣り合わないなど関係ない。俺が純が好きなんだ。鼻血の理由はわかってるし、心配は不要だ。心配するなら寧ろ別れないでほしい。純に嫌われたら生きていけない」
「そんな大袈裟な……」
「正直、大嫌いと言われた時死ぬかと思った。大泣きして告白してきた女子にどん引かれた」
「え」
あの後大泣きしたのか。え?あの琉聖が?鼻血出すよりも信じられないんだが。
「鼻血を出す理由は明白だ。純を好きすぎて純のあられもない姿を想像してしまう。付き合う前から毎日純の妄想で朝昼晩抜いている」
毎日朝昼晩………?昼って学校……いや、俺何聞かされてるんだ?
「実は純の隠し撮り写真が何枚かあって毎日それを眺めてはにやにやしてるし鼻血も出ているから鼻血慣れはしてる分問題ない。血の気は多い方だ」
だんだん琉聖のイメージが崩されていく……。隠し撮り写真とかいつの間に……ってか琉聖がにやにや?イケメンに似合わぬ言葉だな!いや、今はそうじゃない。
もう思考がマジで追い付かん……。
「正直触りもしなかったのは俺がどうなるかわからなかったからだ。だがさっき思いきり抱き締めたというのに勃起だけで済んでいる」
「………わお」
つい下を見たら琉聖の股間辺りが膨らんでいる。マジか、マジなのか。これは勃起だけで済んでいるで済ませていいのか?
うん、でも俺は俺が思う以上に好きな人から愛されていたようだ。
でも理解が追い付かない。
「これからは鼻血が出ても純を見るし、告白も受けない、純の誘いも断らない……だから別れないでください」
ついには少し距離をとられて土下座された。とりあえず血が垂れないよう鼻は押さえてほしい。にしても好きな人の思わぬ姿にもはや何で泣いてたかさえわからなくなりそうだ。
それでもなんだかんだ嫌いにはなれないし、やっぱり琉聖が好きだと思う自分がいる。
「うん、わかった……。あの、俺は琉聖のカッコ悪いとこ嫌いじゃないよ。それに寧ろ俺、嫉妬とかして女々しいから面倒かもだけど……」
カッコ悪いとこ教えてもらってばかりもと思い勇気を出して自分のだめな部分を言ってみたらすぐに抱き締められた。いや、アレが当たってるんですが!
「ありがとう!嫉妬とかしてくれたんだな、寧ろすごく嬉しい。俺も嫉妬ぐらいはするから心配いらないし、これからは嫉妬する暇がないくらいに愛す。好きだ、純」
うぐ、当たってるのが気にならないくらいにイケメンボイスが耳元に炸裂。鼻血が制服につかないかは少し心配だけど。
「お、俺も……好き」
「可愛すぎ……ぶはっ」
「え、ちょ……おかあさーん!」
何がどうしてそうなったのか、大量の鼻血を振り撒き後ろに倒れた琉聖により部屋が大惨事になり思わず叫んだ言葉は仕方がないと思う。
別の意味でこれから先が不安になる俺だった。
END
あとがき
長くなった……。でも満足!シリアスからのハッピーエンドが好きな私です!外見クールとか無口で中身は受けのことで頭いっぱいな攻めが好きなんですけど共感できる方いますかね?
浮気者はあれだけど勘違いものは結構好きです!攻め序盤最低すぎて嫌だったりしたらすみません。
クールぶった中身溺愛変態?……五十嵐琉聖
面食い平凡……野木純
設定
同級生の高校2年生。琉聖からの告白で付き合ったものの、目があってもすぐ逸らされる純。付き合う前から目は合うと思っていたもののその際もすぐ逸らされ対して変わらない関係に純は不安にかられる。そんな時琉聖が女子に告白され向き合う様子を見て………。
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『ずっと好きだった……付き合って、ほしい』
イケメンってついつい見てしまう俺だがゲイだったわけではない。それでも先日男と付き合う決心をしたのは同級生でもある五十嵐琉聖が俺好みのイケメンだったなんて理由としてはあまりにも最低な気がする。
でも琉聖となら男同士でも嫌悪感を感じなかったからこそ琉聖のたった一言の短い告白に応じたわけだが……進展どころか寧ろ距離が開いている気がする。
「なぁ、一緒に帰らね?」
「……いや、今日は用事が」
「ふーん……」
付き合ったからには帰りくらいはと誘って一度と一緒に帰ったことはない。なんなら誘う前は一瞬目が合うも、すぐ逸らされ逸らされたままの会話。じっと視線を向けようとこちらに向くことはない。
付き合うとはなんだろう?好きならもっと……なんて不満が募るのはそれなりに俺も琉聖を意識している証拠なのだろうか。
でもそれも付き合う前より避けられているような気がしているせいだろう。まだ付き合う前の方が会話はできていた。なんなら会話さえすぐ切られているのが最近わかってきて胸が痛くなることがある。とはいえ、本来クールで通ってる彼は普段からあまり話さない人だから気のせいだと思い続けて耐えた。
そしてついにはふと見た時に琉聖が誰かと会話してるのを見て何となくもやっとさえしたけどそれにも気づかぬふりをして………でも、それももう無理だなと思ったのはたまたま昼休みに琉聖に告白する女子との様子を見た日。決して覗き見とかそんなんじゃない。
「好きです!付き合ってください!」
やっぱイケメンはモテるなぁとふと通りかかってあの二人の見えない死角だったものの向かいたい場所へ行こうとすれば明らかに見つかるのでそれが終わるのを待つしかなかった。
「ごめん」
あ、断ってくれた。なんて思うよりも俺はなんで俺との昼食断って告白受けてんの?とか、人見て話せるじゃんとかそんな暗い考えばかり浮かんでいて、ああだめだだめだと振り切ろうとした時だった。
「ううん、いいの!気持ち伝えたかっただけだからっ」
「そ、ありがと」
「あの、よかったら今日だけでいいからご飯食べない?」
「ああ」
なんで俺はだめでその女とはご飯一緒に食べるの?よりも女子と目を合わせても俺の時のように逸れることのないそれにショックを受けた。
うん、知ってたよ。俺もう琉聖をずっと好きだったの。気づいたら耐えられない気がしたからずっと気づかないふりをしてた。嫉妬するに決まってんじゃん、胸痛くて当たり前だろ?
「琉聖のばーかっ!大嫌いだ!」
「え?何?」
「……!純!」
気がつけば二人の雰囲気をぶち壊すように叫んでいた。情けなくも涙まで出てきて久方ぶりに琉聖に呼ばれた名前に振り向くことなく走って逃げてそのまま帰宅。
泣いて帰ったからか、母は心配する様子はあったが問い詰めないでくれて、部屋に引きこもった俺に学校には連絡いれといたからという気遣いにこれほど親の存在がありがたい日はないだろうとさえ思えた。
ああ、明日どうしようなんて冷静になり始めたのは日が沈んだ頃で、ポケットに入れていたスマホを見ればたくさんの電話の着信履歴とメールとメッセージアプリライム。多くは琉聖で、後は友達。
琉聖のメールとライムを見れば全部似たようなこと。
『話せないか?』
話さないのはお前だろ。
『どこにいる?』
家だよ、でも答える必要あるか?
『電話、出てくれ』
ついに別れ話でもすんのか?
心で嫌みたらしく言うも本人の前では言えるはずもない情けない俺。ああ、女々しすぎんだろ……ほんと。
『俺は今でも好きだ、愛してる』
今更なんだよ……とは思うのに嬉しく思う自分が嫌だ。気づかぬふりをしてきた代償だろうか。
「愛してるだなんて嘘くせぇ……うそ、だろ……っ」
ああ、せっかく止まっていたのに。思ったよりも堪えている自分がどこまでも惨めだ。
『もういい。別れよ、疲れた』
ライムでそれだけ返してスマホの電源を切る。ブロックまではできない俺はやけくそ気味だからだろうか。いや、繋がりを断ちきるのが怖いのかもしれない。
「純、ご飯いる?」
「いらない」
ああ、もうそんな時間かなんて思い母に悪いと思いながら断る。そして次の瞬間。
ピンポンピンポンピンポン………
インターホンの連打の嵐。
「もう、こんな時間に誰かしら……?開けますから待ってくださいな~」
「誰だよ、もう」
一度鳴らせばわかるってと思いながら布団を被る。しかし、それもすぐ剥がれることとなった。
「純……!」
焦るような男性の声。それは今最も聞きたくない人の声。
「出てけ!」
こんなとき、鍵つきじゃない自分の部屋が恨めしい。というか何故こいつが入ってきてるんだと気が気じゃない。
「わ、別れたくない!あれは違うんだ!告白はされたけど断って……」
あまりらしくないくらいに慌てた声。それと言い分からして勘違いさせてるのがわかる。告白を断ったのは見ていたから知ってるなんて琉聖は知らないしな。大方、俺の誘い断って女といたから……なんて思っているのかもしれない。
ああ、でももうそれが理由でもいいか。
「何が違うんだ?」
でも顔は見たくない。また目を逸らされたら耐えられないと布団を被ったまま聞く。
「二股とかそういうのじゃないってことで………」
「俺との食事の誘いは断ってあの子のは了承してたじゃん」
「あれは……」
それだけ聞いてたふりしとけば告白を断ったのも嘘だと思ったふりをしても無理はないだろう。だってこれは事実だ。
「言い訳とかいいから。どうせ俺のことからかってんだろ?お前普段クールで真面目なイメージだったからついつい信じちまったわ」
「違う!」
「いいよ、否定しなくても。俺避けられてるの知ってたし」
「それは……!」
「俺が断らなかったから本当は困ってたんだろ?よかったな、ようやく別れられるぞ」
ああ、自分で言ってて心が壊れそうだ。ただでさえ泣いているのがバレないようこれでも必死だというのに。
「違う!別れたくなんてない!」
お前そんな大声出すキャラでも必死になるキャラでもないだろうになんでそんなこと言うのかもはや何がしたいのか俺にはわからない。
「いい加減にしてくれ!」
だからこそもう否定をする言葉以外出そうにない。もう疲れたと俺の心が叫んでいるから。
「いやだ!」
いつもならあっちから引こうとするのにこれじゃあ真逆だ。
目を、目を合わせればいつものように引くだろうか?なんて悲しい考えが浮かんで布団から出て琉聖を見れば琉聖は驚いた顔をしていつものように目を逸らす。
やっぱり逸らすのかよ。俺が泣いていたとしても。
「いっつもいっつも目、逸らすくせに……!なにが、わかれたく、ない……だよっ!」
「純……?」
「そんなに……っ平凡顔は、見苦しい……っですかぁ?」
これでもイケメンと釣り合うなんて思ってたわけじゃない。それでも俺は………。
「そんなんじゃ……!」
「何も、しないなら……っ話すらしたく、ないなら……っもう、関わらなきゃいいだろ……っ!」
「違う………っ!」
「な……っ!は、なせ!」
否定の言葉と共に抱き締められて、思考が追い付かない俺は抵抗するが残念ながらイケメンの力には敵わなかった。こんな風に触れあうのはこれが初めてでもはやキャパオーバーだ。でもこんな時すら顔を胸板に押し付けられて琉聖と顔は合わせられない。
「純の顔を見れないのは純が可愛すぎるからだ!」
「………は?」
とはいえまさかの返しにぽかんとせざる終えなかった。もはやからかわれているのではとこの時ほど思う時はないだろう。
「俺はクールでも真面目でもなければみんなが言うイケメンでもない!」
いや、イケメンではあるだろう。まあ今の様子にクールさがないのは否定しないが。
「純に誤解されたまま別れられたら元も子もないから俺の秘密を話すけど、俺は純を見続けたら鼻血が出るんだ。だから純を見れなかったというか……」
「………は、鼻血?」
言い訳にしても酷すぎる。さすがに信じれないと思えばばっと離され、じっと琉聖に見つめられる。
なんか改めて見つめられると………ん?
「悪い……ティッシュいいか?」
「え、あ、うん」
慌ててベッド近くにある箱ティッシュを渡せば琉聖が鼻をティッシュで押さえる。………つまり、マジで鼻血が出た。
「正直、純の後ろ姿すら鼻血対象なんだ。カッコ悪すぎて目を逸らすようにしてたんだが……かなり気にさせてたんだな、悪い」
鼻を押さえながらしょげる琉聖のレアなこと。本当に反省しているようだ。さすがの俺も鼻血にびびり涙もいつの間にか止まり、冷静になった。
「いや、俺も本当は告白断ってたの見たから……食事、断らなかったのも辛かったけど」
「う……っ次からは断る。それで諦めてくれるならと思ったらな……でも純に嫌われるくらいなら他にどう思われようと告白自体行くべきじゃなかったな」
「琉聖はモテるから仕方ないし、俺だって告白くらいは聞くからそれに関しては何とも……」
「告白、されるのか?」
「え、まあ……」
これでも俺は何故か後輩から琉聖ほどではないがたまに告白されていた。初めて知っただろう琉聖は鼻を押さえたまま俺に真顔で聞いてくる。鼻血が止まらないんだろうが、そんな琉聖もまたかっこいいんだからイケメンとは罪だ。
「………俺は浮かれすぎていたようだ。もはやカッコ悪いところを見せてでも純を離さないようにすべきだった」
浮かれてたんだ……と今この時知った。どう見ても浮かれた感じには見えなかったし。
「というか、鼻、大丈夫か?」
そしてこう話してる間にも幾度と血だらけになっていくティッシュの山にさすがに心配になる。
「純を見ている間は鼻血が止まらなくてな。でも純に別れを告げられるくらいならこれくらい大丈夫だ」
寧ろ俺が見てられない。というかこんなことなら………
「やっぱ別れた方がいいんじゃ……?」
「な、なんでだ?やはり鼻血出す俺はカッコ悪くて嫌いか?」
「いや、だって理由もわからず俺見て鼻血出すとか心配だし……。やっぱ俺じゃ釣り、合わないし……」
なんか自分で言っててへこむ。けど、正直目を逸らされる理由がわかった今少しだけ気持ちは楽になっている。理由が意味不明のものでも。
「釣り合う、釣り合わないなど関係ない。俺が純が好きなんだ。鼻血の理由はわかってるし、心配は不要だ。心配するなら寧ろ別れないでほしい。純に嫌われたら生きていけない」
「そんな大袈裟な……」
「正直、大嫌いと言われた時死ぬかと思った。大泣きして告白してきた女子にどん引かれた」
「え」
あの後大泣きしたのか。え?あの琉聖が?鼻血出すよりも信じられないんだが。
「鼻血を出す理由は明白だ。純を好きすぎて純のあられもない姿を想像してしまう。付き合う前から毎日純の妄想で朝昼晩抜いている」
毎日朝昼晩………?昼って学校……いや、俺何聞かされてるんだ?
「実は純の隠し撮り写真が何枚かあって毎日それを眺めてはにやにやしてるし鼻血も出ているから鼻血慣れはしてる分問題ない。血の気は多い方だ」
だんだん琉聖のイメージが崩されていく……。隠し撮り写真とかいつの間に……ってか琉聖がにやにや?イケメンに似合わぬ言葉だな!いや、今はそうじゃない。
もう思考がマジで追い付かん……。
「正直触りもしなかったのは俺がどうなるかわからなかったからだ。だがさっき思いきり抱き締めたというのに勃起だけで済んでいる」
「………わお」
つい下を見たら琉聖の股間辺りが膨らんでいる。マジか、マジなのか。これは勃起だけで済んでいるで済ませていいのか?
うん、でも俺は俺が思う以上に好きな人から愛されていたようだ。
でも理解が追い付かない。
「これからは鼻血が出ても純を見るし、告白も受けない、純の誘いも断らない……だから別れないでください」
ついには少し距離をとられて土下座された。とりあえず血が垂れないよう鼻は押さえてほしい。にしても好きな人の思わぬ姿にもはや何で泣いてたかさえわからなくなりそうだ。
それでもなんだかんだ嫌いにはなれないし、やっぱり琉聖が好きだと思う自分がいる。
「うん、わかった……。あの、俺は琉聖のカッコ悪いとこ嫌いじゃないよ。それに寧ろ俺、嫉妬とかして女々しいから面倒かもだけど……」
カッコ悪いとこ教えてもらってばかりもと思い勇気を出して自分のだめな部分を言ってみたらすぐに抱き締められた。いや、アレが当たってるんですが!
「ありがとう!嫉妬とかしてくれたんだな、寧ろすごく嬉しい。俺も嫉妬ぐらいはするから心配いらないし、これからは嫉妬する暇がないくらいに愛す。好きだ、純」
うぐ、当たってるのが気にならないくらいにイケメンボイスが耳元に炸裂。鼻血が制服につかないかは少し心配だけど。
「お、俺も……好き」
「可愛すぎ……ぶはっ」
「え、ちょ……おかあさーん!」
何がどうしてそうなったのか、大量の鼻血を振り撒き後ろに倒れた琉聖により部屋が大惨事になり思わず叫んだ言葉は仕方がないと思う。
別の意味でこれから先が不安になる俺だった。
END
あとがき
長くなった……。でも満足!シリアスからのハッピーエンドが好きな私です!外見クールとか無口で中身は受けのことで頭いっぱいな攻めが好きなんですけど共感できる方いますかね?
浮気者はあれだけど勘違いものは結構好きです!攻め序盤最低すぎて嫌だったりしたらすみません。
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執事視点また考えてみますね!
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(*ゝ`ω・)
思い付いたらしときますww