ヤンキー女が悪役令嬢になりまして~神様から皇帝を恋に落として世界を救ってほしいと言われたが、頼むやつ間違ってねぇか?~

荷居人(にいと)

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1章いや、令嬢らしくとか無理なんで

6~ディオ視点~

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僕の婚約者はどうしようもなくおバカらしい。まさか自分の名前を忘れるなんて思わなかったし、あまりに二度目に会ってすぐうんうん悩む様子にやっぱり僕との婚約者が嫌になったんじゃと一瞬でも思ったのがあほらしいくらいに。

誰も知らないことだが、僕は最近嘘を見抜けることに気がついた。最初は時々人の周りに見える黒いもやもやが何かと思っていたが決まって思ってもないことをあからさまに言う人を見ていて知ったこと。だからこそ婚約者が本当に自分の名前を忘れていることに呆れもしたけど、自分のは忘れても僕の名前は忘れないと許可もせず呼び捨てする彼女の言葉は嬉しくもあり久々に笑いが込み上げた。何が面白いのか自分でもよくわからないが、彼女には決まって黒いもやが見られず僕を偏見した目で見ないんだと改めて安心したが故かもしれない。

何より名前で呼んでもらうのがこんなにも嬉しいことだなんて僕は彼女に呼ばれて初めて気がついたのだ。

「ねぇ、ぼくもルルリアってよんでいいですか?」

「よびにくくねぇか?リアでいいって」

「うん、ならリアってよびますね」

笑いが落ち着いて僕も彼女を名前で呼びたいと思い聞けば、愛称とも言える呼び名を許可されてなんだか心がぽかぽかと温まる。名前で呼び合うだけのことがとても新鮮で、こんなに幸せなことだと知れたのは嘘偽りと無縁そうな僕の婚約者リアのおかげだ。

「うーん、しゃべりかたもあたいにはかえろよ?」

「えっと……どのように……」

「ていねいにしゃべるなってこと!あたいもていねいにはなさなきゃってなるじゃん………むりだけど」

確かに無理そうだと言いそうになったもののなんとか心の中に留めて考える。口調を崩すなんてしたことがなかったから。少しでも生意気な態度をとろうものなら周囲が余計にと周りばかり気になっていたせいかもしれない。でもリアを見ていたらそんなのを気にする方が馬鹿馬鹿しく思えてしまうのだから不思議だ。僕は僕でいいと言われてもないのにそう思えてしまう。

「リアのまえだけはそうする」

「おう!そんなかんじだよ!やればできんじゃん!」

にかっと笑い、当たり前のように僕を褒めるリア。嘘偽りのない褒め言葉はやっぱり嬉しくて、リアの周りは黒いもやどころか白く光ってすら見える。それは眩しいわけではなく、温かい何かに包まれているようなそんな感じ。

ああ、だめだな。リアは僕にとって魅力的すぎて好意は大きくなるばかり。手放したくないと思うのも時間の問題………いや、すでに手遅れかもしれない。本来なら彼女は第一王子の婚約者候補に入っていてもおかしくない身分だ。未来の王妃をリアが望んだら僕は捨てられるかもしれない。今は大丈夫でも未来はわからないのだから。

でもそれなら………リアのために世界征服とかしてもいいかもしれない。僕には実際髪以外にも悪魔と言われる力があるのだから。ああ、でもリアが怖がったらどうしよう?

「よし、じゃあそろそろきんとれだ!からだきたえてつよくなるぞー!」

「………そうだね」

うーん………でも、リアなら寧ろ喜びそうだと思うのは僕だけだろうか?
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