ヤンキー女が悪役令嬢になりまして~神様から皇帝を恋に落として世界を救ってほしいと言われたが、頼むやつ間違ってねぇか?~

荷居人(にいと)

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1章いや、令嬢らしくとか無理なんで

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「恋に落とす気あります?」

今私は何故か神様の乗り移った死体メイドに説教を受けている。それは未来の皇帝さんやらとの顔合わせのことについてその場にいなかったはずの神様が私の行動を全て把握する術をもっていたから他ならない。とはいえ、無事婚約は結ばれたわけだし、まず人選を間違っていると私は訴えたはずだ。神様は私に期待しすぎだと思う。まだ皇帝を倒せと言われた方ができる気がするんだけど。

「こ、こんどあうやくそくはした」

「どこに筋トレに誘う令嬢に恋する男子がいるとお思いで?」

「い、いやぁ……まあなるようになるっしょ」

「はぁ………せめて泥だらけなのはなんとかならなかったんですか………」

「いやぁ、ついにむりやりべんきょーさせようとおいかけてきてるとばかりおもって、ひっしににげてたらこけてどろみずにばっしゃーんと。じかんがないからこのままっていったのはおやじだぜ?」

「それは……恐らく婚約がなくならないかと貴方の今のお父様があえてそうしたのでしょうね」

「はあ?なんでだよ」

「未来の皇帝が人嫌いになる一因でもありますが、彼はこの世界では珍しい黒髪のせいで悪魔の子と言われているのです。それ故、できれば関わりたくないのでしょう。ただ、国王に王命を出されては公爵と言えど断れませんから」

神様の言葉に私は一気に未来の皇帝………今ではまだ私と同じくらいに幼い男の子を思い浮かべる。私の前世じゃ当たり前だった黒髪だからこそ気にはしなかったが、不安そうにしていたのはその理由があったからかと思うと納得と同時に腹が立って仕方ない。ただ髪が黒いだけでまだ子供である彼を傷つける人達に。そんなことが幼い頃からあればそりゃ人嫌いにもなるってものだ。

「よし、きめた!」

「はい?」

「あたい、あいつのみかたになる!そんなやつらほろぼされてとうぜんだ!」

「いやいやいや!何言ってるんですか!?世界を救ってほしいと言ってるのに!」

「ほかのせかいはほろぼさないようにしてこのせかいだけほろぼすならもんだいねぇだろ?いのちはだいじにしねーとな!」

「命を大事にするなら世界を存続させましょうよ……!」

「このせかいいがいが、ぶじならいいんだろ?」

「ん?………確かにそうですね」

「なら、みらいのこうていさんとやらがひとぎらいになってせかいほろぼすまえにひとぎらいのげんいんになるやつらぶっつぶしてやればいいじゃん!かみくろいだけであーだこーだいうやつらばかりのせかいなんてろくなせかいじゃねーよ」

「なるほど……その考えはありませんでした」

「よし、そのためにはやっぱきんとれだな!」

「………筋トレをする理由がほしいだけじゃないですよね?」

「そんなわけないだろー?」

それも少しあるけど、私自身見た目で決めつけるやつや影でこそこそ言うやつらが昔から嫌いだし、喧嘩を覚えてから私の正義に反する存在として前世でも成敗していた。それがこの世界では少しばかり過激になるというだけ。正義は優しいものばかりじゃなく、時には厳しくあるもの。痛い目に合わないとそれを理解しないものがいることを私は知っている。

「とりあえずそれはそれとして未来の皇帝さんの心を掴まないことにはこの世界以外が無事な保証はありませんから、次回会う時は自己紹介くらいはまずしてくださいよ」

「おう!」

そういや婚約したのに名前すら知らねぇやと思いながらも、前世で学んだことを再び思い返す。ダークヒーローという新たなヒーロー感を知ることになったアニメの話を。あの話のおかげで私はヒーローは優しくあるべきだという価値観をなくせたのだから。

ダークヒーローならきっと世界を滅ぼすのもまた正義に違いない。………あれ?それなら未来の皇帝ってダークヒーローだったりするのか………?

「なんでしょう……物凄く何かを否定しなくてはいけない気がします」

私の思考は神様の呟きによって何故かかき消えた。とても大事なことだったはずなのに思考に介入するとは……神様パワー恐るべし。とはいえ今は筋トレに集中しないといけないし、まあいっか!
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