ヤンキー女が悪役令嬢になりまして~神様から皇帝を恋に落として世界を救ってほしいと言われたが、頼むやつ間違ってねぇか?~

荷居人(にいと)

文字の大きさ
上 下
4 / 17
1章いや、令嬢らしくとか無理なんで

2~未来の皇帝視点~

しおりを挟む
誰も彼もが僕を毛嫌いする。庶民と国王からできた子供である僕はそれだけでも遠巻きにされるというのに、悪魔の色とされる黒の髪を持って生まれたせいで誰もが僕の後ろ楯になることはなく、ついには公爵家の娘と婚約することで後ろ楯を得ようとする父に僕はどうしてそこまでと思いながらも何も言えなかった。

父にまで見捨てられれば僕は生きていくことすら難しくなると幼いながらに悟っていたから。

でもそれはそれとしても向こうの女の子が僕を見てどう思うか、より辛い日常が増えるだけじゃと期待はせず始まりを告げた顔合わせの日。彼女は予想を上回るお人だった。

泥だらけのままに現れ、その場にいた人たちをぎょっとさせ、僕の父に対しておっさんと言い放っては彼女の父だろう公爵に拳骨をされたかと思えば仕返しとばかりに頭突きをかまし、僕の知る令嬢の姿ではないあまりにやんちゃな婚約者となる人物に驚くばかりで気を病むなんて暇はなかった。

「随分……元気がよいな……?」

さすがに笑って許していた父も驚きを隠せないとばかりに苦笑いをしている。父は相手の令嬢がどういう子か知らずにただ僕の後ろ楯のために婚約を結ぼうとしているのだと改めて思う。

「まあね!あたいはうまれてからかぜひとつひいたことないし!」

「えっと……けんこうてきなんですね………?」

へへんと自慢気にいう令嬢は僕が知る人たちと違って僕を変な目で見ることもなくただ真っ直ぐに接してくれる。残念ながら人との関わりが最低限の僕はどう対応していいかわからずこんな疑問系な返ししかできないわけだが。

「おう!けんこうがいちばんだ!あんたはよわそうだなぁ?きんとれしてるか?」

「き、きんとれ、ですか?」

きんとれ………まさか筋トレだろうか?令嬢が言う言葉とは思えない話に益々変わった子だと思わずにはいられない。

「どろでよごれるのきにするか?」

「い、いえ………」

「なら、うでみせな」

「は、はい………」

人に触れられるなんて亡くなった母親を最後にいつぶりだろうか?誰もが悪魔の呪いがと触れようとしない僕に令嬢は寧ろ泥で僕が汚れることを気にするだけで躊躇いなく僕の腕をくまなく触っている。慣れないことにどきどきしつつも腕を触る彼女は真剣な目付きで僕の腕を見ていた。

「うーん、こどもだからこんなもんか……よし!こんやくするんだし、あすからいくらでもあえるよな!」

「え?」

「あたいがあんたをきたえてやる!だからふあんそうにしてんじゃないよ!」

「!」

力強い物言いに僕が彼女に心を持っていかれたのはどうしようもないことだった。嫌われものの僕との婚約を受け入れきっている上、また僕と自分から会うような物言いに、隠していたつもりの不安まで見抜かれて、例え初の顔合わせの短時間とはいえ彼女に惹かれずにいるなんて無理な話だ。

「ふむ?予定よりいい縁談になったな……で、大丈夫か?サブレ公爵」

「な、内蔵が……口から、出そうです……ぐっ」

「誰か、医師を呼んでやってくれ」

そんなこんなで僕と彼女の顔合わせは終わった。自己紹介そっちのけで。


…………………あれ?
しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

淡泊早漏王子と嫁き遅れ姫

梅乃なごみ
恋愛
小国の姫・リリィは婚約者の王子が超淡泊で早漏であることに悩んでいた。 それは好きでもない自分を義務感から抱いているからだと気付いたリリィは『超強力な精力剤』を王子に飲ませることに。 飲ませることには成功したものの、思っていたより効果がでてしまって……!? ※この作品は『すなもり共通プロット企画』参加作品であり、提供されたプロットで創作した作品です。 ★他サイトからの転載てす★

王子の逆鱗に触れ消された女の話~執着王子が見せた異常の片鱗~

犬の下僕
恋愛
美貌の王子様に一目惚れしたとある公爵令嬢が、王子の妃の座を夢見て破滅してしまうお話です。

ヒロイン不在だから悪役令嬢からお飾りの王妃になるのを決めたのに、誓いの場で登場とか聞いてないのですが!?

あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
ヒロインがいない。 もう一度言おう。ヒロインがいない!! 乙女ゲーム《夢見と夜明け前の乙女》のヒロインのキャロル・ガードナーがいないのだ。その結果、王太子ブルーノ・フロレンス・フォード・ゴルウィンとの婚約は継続され、今日私は彼の婚約者から妻になるはずが……。まさかの式の最中に突撃。 ※ざまぁ展開あり

えっ、これってバッドエンドですか!?

黄昏くれの
恋愛
ここはプラッツェン王立学園。 卒業パーティというめでたい日に突然王子による婚約破棄が宣言される。 あれ、なんだかこれ見覚えがあるような。もしかしてオレ、乙女ゲームの攻略対象の一人になってる!? しかし悪役令嬢も後ろで庇われている少女もなんだが様子がおかしくて・・・? よくある転生、婚約破棄モノ、単発です。

私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~

あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。 「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?

【完結】極妻の悪役令嬢転生~あんたに払う安い命はひとつもないよ~

荷居人(にいと)
恋愛
「へぇ、それで悪役令嬢ってなんだい?」 「もうお母さん!話がさっきからループしてるんだけど!?」 「仕方ないだろう。げーむ?とやらがよくわからないんだから」 組同士の抗争に巻き込まれ、娘ともども亡くなったかと思えば違う人物として生まれ変わった私。しかも前世の娘が私の母になるんだから世の中何があるかわからないってもんだ。 娘が……ああ、今は母なわけだが、ここはおとめげぇむ?の世界で私は悪いやつらしい。ストーリー通り進めば処刑ということだけは理解したけど、私は私の道を進むだけさ。 けど、最高の夫がいた私に、この世界の婚約者はあまりにも気が合わないようだ。 「貴様とは婚約破棄だ!」 とはいえ娘の言う通り、本当に破棄されちまうとは。死ぬ覚悟はいつだってできているけど、こんな若造のために死ぬ安い命ではないよ。

月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~

真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。

崖っぷち令嬢は冷血皇帝のお世話係〜侍女のはずが皇帝妃になるみたいです〜

束原ミヤコ
恋愛
ティディス・クリスティスは、没落寸前の貧乏な伯爵家の令嬢である。 家のために王宮で働く侍女に仕官したは良いけれど、緊張のせいでまともに話せず、面接で落とされそうになってしまう。 「家族のため、なんでもするからどうか働かせてください」と泣きついて、手に入れた仕事は――冷血皇帝と巷で噂されている、冷酷冷血名前を呼んだだけで子供が泣くと言われているレイシールド・ガルディアス皇帝陛下のお世話係だった。 皇帝レイシールドは気難しく、人を傍に置きたがらない。 今まで何人もの侍女が、レイシールドが恐ろしくて泣きながら辞めていったのだという。 ティディスは決意する。なんとしてでも、お仕事をやりとげて、没落から家を救わなければ……! 心根の優しいお世話係の令嬢と、無口で不器用な皇帝陛下の話です。

処理中です...