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1章いや、令嬢らしくとか無理なんで
2~未来の皇帝視点~
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誰も彼もが僕を毛嫌いする。庶民と国王からできた子供である僕はそれだけでも遠巻きにされるというのに、悪魔の色とされる黒の髪を持って生まれたせいで誰もが僕の後ろ楯になることはなく、ついには公爵家の娘と婚約することで後ろ楯を得ようとする父に僕はどうしてそこまでと思いながらも何も言えなかった。
父にまで見捨てられれば僕は生きていくことすら難しくなると幼いながらに悟っていたから。
でもそれはそれとしても向こうの女の子が僕を見てどう思うか、より辛い日常が増えるだけじゃと期待はせず始まりを告げた顔合わせの日。彼女は予想を上回るお人だった。
泥だらけのままに現れ、その場にいた人たちをぎょっとさせ、僕の父に対しておっさんと言い放っては彼女の父だろう公爵に拳骨をされたかと思えば仕返しとばかりに頭突きをかまし、僕の知る令嬢の姿ではないあまりにやんちゃな婚約者となる人物に驚くばかりで気を病むなんて暇はなかった。
「随分……元気がよいな……?」
さすがに笑って許していた父も驚きを隠せないとばかりに苦笑いをしている。父は相手の令嬢がどういう子か知らずにただ僕の後ろ楯のために婚約を結ぼうとしているのだと改めて思う。
「まあね!あたいはうまれてからかぜひとつひいたことないし!」
「えっと……けんこうてきなんですね………?」
へへんと自慢気にいう令嬢は僕が知る人たちと違って僕を変な目で見ることもなくただ真っ直ぐに接してくれる。残念ながら人との関わりが最低限の僕はどう対応していいかわからずこんな疑問系な返ししかできないわけだが。
「おう!けんこうがいちばんだ!あんたはよわそうだなぁ?きんとれしてるか?」
「き、きんとれ、ですか?」
きんとれ………まさか筋トレだろうか?令嬢が言う言葉とは思えない話に益々変わった子だと思わずにはいられない。
「どろでよごれるのきにするか?」
「い、いえ………」
「なら、うでみせな」
「は、はい………」
人に触れられるなんて亡くなった母親を最後にいつぶりだろうか?誰もが悪魔の呪いがと触れようとしない僕に令嬢は寧ろ泥で僕が汚れることを気にするだけで躊躇いなく僕の腕をくまなく触っている。慣れないことにどきどきしつつも腕を触る彼女は真剣な目付きで僕の腕を見ていた。
「うーん、こどもだからこんなもんか……よし!こんやくするんだし、あすからいくらでもあえるよな!」
「え?」
「あたいがあんたをきたえてやる!だからふあんそうにしてんじゃないよ!」
「!」
力強い物言いに僕が彼女に心を持っていかれたのはどうしようもないことだった。嫌われものの僕との婚約を受け入れきっている上、また僕と自分から会うような物言いに、隠していたつもりの不安まで見抜かれて、例え初の顔合わせの短時間とはいえ彼女に惹かれずにいるなんて無理な話だ。
「ふむ?予定よりいい縁談になったな……で、大丈夫か?サブレ公爵」
「な、内蔵が……口から、出そうです……ぐっ」
「誰か、医師を呼んでやってくれ」
そんなこんなで僕と彼女の顔合わせは終わった。自己紹介そっちのけで。
…………………あれ?
父にまで見捨てられれば僕は生きていくことすら難しくなると幼いながらに悟っていたから。
でもそれはそれとしても向こうの女の子が僕を見てどう思うか、より辛い日常が増えるだけじゃと期待はせず始まりを告げた顔合わせの日。彼女は予想を上回るお人だった。
泥だらけのままに現れ、その場にいた人たちをぎょっとさせ、僕の父に対しておっさんと言い放っては彼女の父だろう公爵に拳骨をされたかと思えば仕返しとばかりに頭突きをかまし、僕の知る令嬢の姿ではないあまりにやんちゃな婚約者となる人物に驚くばかりで気を病むなんて暇はなかった。
「随分……元気がよいな……?」
さすがに笑って許していた父も驚きを隠せないとばかりに苦笑いをしている。父は相手の令嬢がどういう子か知らずにただ僕の後ろ楯のために婚約を結ぼうとしているのだと改めて思う。
「まあね!あたいはうまれてからかぜひとつひいたことないし!」
「えっと……けんこうてきなんですね………?」
へへんと自慢気にいう令嬢は僕が知る人たちと違って僕を変な目で見ることもなくただ真っ直ぐに接してくれる。残念ながら人との関わりが最低限の僕はどう対応していいかわからずこんな疑問系な返ししかできないわけだが。
「おう!けんこうがいちばんだ!あんたはよわそうだなぁ?きんとれしてるか?」
「き、きんとれ、ですか?」
きんとれ………まさか筋トレだろうか?令嬢が言う言葉とは思えない話に益々変わった子だと思わずにはいられない。
「どろでよごれるのきにするか?」
「い、いえ………」
「なら、うでみせな」
「は、はい………」
人に触れられるなんて亡くなった母親を最後にいつぶりだろうか?誰もが悪魔の呪いがと触れようとしない僕に令嬢は寧ろ泥で僕が汚れることを気にするだけで躊躇いなく僕の腕をくまなく触っている。慣れないことにどきどきしつつも腕を触る彼女は真剣な目付きで僕の腕を見ていた。
「うーん、こどもだからこんなもんか……よし!こんやくするんだし、あすからいくらでもあえるよな!」
「え?」
「あたいがあんたをきたえてやる!だからふあんそうにしてんじゃないよ!」
「!」
力強い物言いに僕が彼女に心を持っていかれたのはどうしようもないことだった。嫌われものの僕との婚約を受け入れきっている上、また僕と自分から会うような物言いに、隠していたつもりの不安まで見抜かれて、例え初の顔合わせの短時間とはいえ彼女に惹かれずにいるなんて無理な話だ。
「ふむ?予定よりいい縁談になったな……で、大丈夫か?サブレ公爵」
「な、内蔵が……口から、出そうです……ぐっ」
「誰か、医師を呼んでやってくれ」
そんなこんなで僕と彼女の顔合わせは終わった。自己紹介そっちのけで。
…………………あれ?
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