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1章いや、令嬢らしくとか無理なんで

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赤ちゃんのときから前世の記憶がある辛さをどれぐらいの人が知っているか。せめて歩けるようになってからの配慮がほしかったと思うがそんな日も終わりを告げた。

「ふふふ、ははははは!ついにはしれるまでににゃったぞ!」

「おめでとうござぐへらぁっ」

溜め込んでいたイライラをぶつけるように笑うメイドに飛び蹴りをかます。ようやく鬱憤が晴らせて清々しい気分だ。

「よ、幼児とは思えない身のこなしですね……」

「いや、ぜんせにくりゃべたらまらまらまだまだだ」

「仮にも令嬢ですからそこは鍛えずとも大丈夫ですよ……」

やれやれと疲れた様子を見せるメイドの正体は神様。本来なら死体であった人間の体に入り込んで私のフォローをするために現世に降りてきたらしい。現世に来れるなら私じゃなくてもと思ったら死体のせいでえらく冷たい身体は、触れられたことで魔女扱いされ処刑されて終わったのだとか。普段は神様専用特別な手袋などで体温などを誤魔化しているが、肌を触られたら死体の冷たさだから注意が必要らしい。

生きてる人間にはなれないので結局は私みたいなやつに頼むしかないのだとか。神様も万能ではないようだ。まあ、万能なら皇帝を殺してでも止めていただろうし。

まあ、それはともかく私がその未来の皇帝に会うのはもう少し先らしいのでその間に鍛えなければ。何があるかわからない世界だからな。

まじゅはうれたてからだまずは腕立てからだ!」

「だから令嬢は身体鍛えたりしなくていいんですよぉ~!」

そんな神様メイドは無視して私は神様の言う婚約の顔合わせの日まで使用人に言われても、親に言われても、祖父母に言われようとも前世と変わらず趣味の筋トレに没頭した。この世界では剣も扱うので剣術もいつしか習ってやると思いながらもそれなりに転生人生を楽しんでいる私だった。

勉強は頑張ろうとはしたが、マナーとか礼儀とか前世から捨てていた私には難しく逃げる毎日。幼児の身体だろうと扱いに慣れれば小回りがきいていいもので、幼くしてやんちゃなお嬢様と周りが言っているのを知りながらもどうしても今更いい子になんてなれないままにあっという間に時は過ぎて………

「えーっと………だいじょうぶですか?」

婚約の日、私は泥だらけで未来の皇帝と会うことになるなんて思いもしなかった。

「…………まさかこんやくのひだとおもわず、にげたのがだめだった」

「え?」

「すまねぇ……こんなかっこうで。あたいはただべんきょうからにげたかっただけなんだ!」

「お、お前は、陛下の御前でまで生意気な言葉遣いを!」

謝罪したのに今の父に叱られるという。6歳の子供に言葉遣いを求めるなと私は言いたい。寧ろ目の前の私の婚約者ともなる未来の皇帝は同い年であるはずなのだが、あまりにいい子ちゃんすぎないかと逆に心配になるぐらいだ。

「構わん構わん。元気があっていいではないか」

「なかなかはなしがわかるな、おっさん!」

「ルルリアーっ!」

「いってぇな!」

ついには拳骨までされたので仕返しに私は父の腹に頭突きをかます。

「ぐふぅっ」

全く、虐待はいけないのを知らないのかと思いながらも座り込む父にふんと顔を背けた。
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