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乙女ゲームではヒロインが男爵家の表記はあったが、ラストネームまではなかった気がする。読み過ごしただけかもしれないし、記憶にないだけの可能性もあるけど。バッハなんて前世の記憶がなければ聞き覚えすらなかったに違いない。
そんな私だから乙女ゲームでヒロインのイラストがなければリアンヌがヒロインとは私は思いもしなかっただろう。
婚約破棄を言われた時も相手がヒロインだからというのもあり、余計自分の結末を諦めようとした。ヒロインのイラストが記憶になければもう少し余裕を持っていられただろうか?
今考えても仕方ないけれど……でも、こんな子に涙を見せたことが本当に恥ずかしくなる。
「正気か?ラーダ」
「了承どころか、求婚した覚えもないです。これが……ああ、失礼。この令嬢が私の隣に生涯居座るというなら死ぬ方がマシですね」
酷い言われようだなと思う。それにラーダ殿下は体の弱さ故に王位継承権を一度は辞退したのだから冗談にしては重い。まあ、本気だろうけど。あのヒロイン……リアンヌを見ていれば気持ちはわかる。エヴァン様も激しく首を縦に振って同意なさっているし。
「ふむ、そういうわけだが……?不敬どころか偽証罪としても貴様を罰する必要があるようだ」
「……不敬だなんて……ふふふ……血は繋がらなくとも親子なんですからお許しください。それにラーダ様は照れておられるだけですもの、女性に慣れてなくて可愛らしいでしょう?」
「君みたいな女性には慣れたくないかな……」
「まあ……私みたいな可愛らしい女性には慣れる気がしないだなんて初で可愛らしいですね!ふふふ」
「まあ、こんな感じで都合のいいようにしかとってもらえないんですよ」
ここまで都合よく解釈できるリアンヌにある意味感心する。ラーダ殿下はため息まじりに困ったものだといった表情で陛下を見れば、陛下も理解したのだろう。ふふふと笑うリアンヌを見て陛下の表情が少しばかりひきつったのがわかる。
「拷問でもしたか?」
陛下の言葉に誰もが横に首を振った。拷問した結果がこれなら些か令嬢にはきつかっただろうと引くことはなかったかもしれない。
だけど残念ながら拷問なんてひとつもしてなければ、リアンヌは勝手にこうなった。王妃になれないと知って……ただそれだけで。
「あ~、ただ陛下がラーダ殿下に代理で告げた言葉によってこうなっただけです」
「なるほど、欲深さがこうなったわけか」
エヴァン様の言葉に陛下が唸るように頷く。
「ふふ、欲深い?ヒロインの私が?陛下、違います。私は王妃になると決まっているだけです。だって私ヒロインですから!ふふ、あははっ」
リアンヌの言葉に誰もが理解できないとばかりに表情を歪めるが、私だけは理解できた。ああ、ヒロインも私と同じく転生者だったのだと。
そう理解した時だった白い何かが……言わずもがな猫様が目の前を通って陛下に猫パンチをしたのは。
「ぐふ……っ」
「ね、猫様ーーーっ!?」
会場には私の大きな声が響き渡った。
そんな私だから乙女ゲームでヒロインのイラストがなければリアンヌがヒロインとは私は思いもしなかっただろう。
婚約破棄を言われた時も相手がヒロインだからというのもあり、余計自分の結末を諦めようとした。ヒロインのイラストが記憶になければもう少し余裕を持っていられただろうか?
今考えても仕方ないけれど……でも、こんな子に涙を見せたことが本当に恥ずかしくなる。
「正気か?ラーダ」
「了承どころか、求婚した覚えもないです。これが……ああ、失礼。この令嬢が私の隣に生涯居座るというなら死ぬ方がマシですね」
酷い言われようだなと思う。それにラーダ殿下は体の弱さ故に王位継承権を一度は辞退したのだから冗談にしては重い。まあ、本気だろうけど。あのヒロイン……リアンヌを見ていれば気持ちはわかる。エヴァン様も激しく首を縦に振って同意なさっているし。
「ふむ、そういうわけだが……?不敬どころか偽証罪としても貴様を罰する必要があるようだ」
「……不敬だなんて……ふふふ……血は繋がらなくとも親子なんですからお許しください。それにラーダ様は照れておられるだけですもの、女性に慣れてなくて可愛らしいでしょう?」
「君みたいな女性には慣れたくないかな……」
「まあ……私みたいな可愛らしい女性には慣れる気がしないだなんて初で可愛らしいですね!ふふふ」
「まあ、こんな感じで都合のいいようにしかとってもらえないんですよ」
ここまで都合よく解釈できるリアンヌにある意味感心する。ラーダ殿下はため息まじりに困ったものだといった表情で陛下を見れば、陛下も理解したのだろう。ふふふと笑うリアンヌを見て陛下の表情が少しばかりひきつったのがわかる。
「拷問でもしたか?」
陛下の言葉に誰もが横に首を振った。拷問した結果がこれなら些か令嬢にはきつかっただろうと引くことはなかったかもしれない。
だけど残念ながら拷問なんてひとつもしてなければ、リアンヌは勝手にこうなった。王妃になれないと知って……ただそれだけで。
「あ~、ただ陛下がラーダ殿下に代理で告げた言葉によってこうなっただけです」
「なるほど、欲深さがこうなったわけか」
エヴァン様の言葉に陛下が唸るように頷く。
「ふふ、欲深い?ヒロインの私が?陛下、違います。私は王妃になると決まっているだけです。だって私ヒロインですから!ふふ、あははっ」
リアンヌの言葉に誰もが理解できないとばかりに表情を歪めるが、私だけは理解できた。ああ、ヒロインも私と同じく転生者だったのだと。
そう理解した時だった白い何かが……言わずもがな猫様が目の前を通って陛下に猫パンチをしたのは。
「ぐふ……っ」
「ね、猫様ーーーっ!?」
会場には私の大きな声が響き渡った。
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