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「し、失望だと?貴様みたいな女に失望されたところで……!」

私の言葉に苛立った様子が見られる。怒りをぶつけようとしたところに水を差された、そんな気分なのだろう。邪魔するなとばかりに睨まれる。

「殿下、殿下の私に対しての主観はどうでもいいです。それよりも他に考えるべきことがあるでしょう」

「「「そうだそうだ!」」」

睨まれたところで余計に殿下に対して心が冷えていくだけ。自分のことしか考えないこんな人を王になどさせるわけにはいかない。そんな気持ちが大きくなる。何より何故か後ろから大きな同意の声が聞こえてきたため、より自信を持てた。

「ぐっ生意気な……っ!」

「生意気を言われるのはそれだけ殿下がだめな証拠です。怒り散らすだけなら子供にだってできましてよ!」

「「「そうだそうだ!」」」

びしっと指を差して言うもかっこをつけすぎただろうかと少しばかり気恥ずかしくなる。なんだか後ろからの大勢の声にのせられている気がしてならない。

「………こほん」

「「「そうだそうだ!……あ」」」

「皆様、お気持ちは嬉しいですが少しお静かにお願いします」

「「「はい!」」」

揃った声に大丈夫だろうかと些か心配ながらも私だけではなく、恐らく皆様それぞれ気分があがっているのだろうことが確認できた瞬間だった。このままでは私の言うことすべてにそうだそうだと同意しかねない。

気恥ずかしさを誤魔化した咳ですらこれなのだからこれはよくないと冷静になろうと注意する。ここで冷静さをかけば殿下となんら変わらない。

それでも私に味方してくれているのだろう気持ちは嬉しく思う。理由こそわからないけど、その期待を裏切りたくはない。そのためにも気分乗るままに殿下に言うのは違う。あくまで冷静に対処すべき案件だ。

「ふ、ふん……随分と味方をつけたものだな」

「殿下は随分と敵をお作りのようで」

そう言い返すと殿下の睨みがより強くなる。間違ったことを言ったつもりはないので言い返されるとは思わない。

「~~っ!私は……っいや、ああ、そうか!これは貴様の策略だろう!自分の味方で固めて私とリアンヌを貶める気だったんだな!貴様ら全員反逆者か!そうかそうか!」

「まあっ!そうだったんですね!さすがユーザ様です!」

「そうだろう、そうだろう!」

ようやく気づいたとばかりに叫ぶ殿下にため息が出そうになる。言い返せないからとそんな考えに至るなんてと。仮にそうだとして大声で叫ぶことではない。どこまでも愚かな殿下を褒め称えるのはリアンヌのみ。それが理由なら何故ここにいるはずの衛兵が今だ動こうとしないのか疑問にも思わないのだろうか。

私も急な婚約破棄で狼狽えてすぐに気づけなかったとはいえ、クソ殿下と叫ばれた時点でおかしかったのだ。何故衛兵は仮にも王族への不敬に対して動かないのかと。

気づいてないのはきっと殿下とリアンヌだけだろう。
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