婚約破棄を告げられた瞬間王子やめろ抗議が始まりました～悪役令嬢はみんなのアイドルだったようです～

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「み、皆さん酷いです！ユーザ様はこの国の王太子ですよ!?」

皆様の態度に口を挟んだのは怒りで顔を真っ赤にする殿下ではなく、その隣にいる乙女ゲームのヒロインであるリアンヌと殿下に紹介された令嬢。愛らしいその顔を辛そうに歪めて目に涙を溜める姿はそれこそ守ってあげたくなる人がいてもおかしくない。

「はい、今はそうですね……でも貴女もおわかりですか？」

「え……？」

リアンヌの言葉に同意しながら問いかけるのは私ラフィーナと同じく公爵家の令嬢であり、本来私の次に殿下の婚約者候補としてあがっていたアルマ・カーラン様だ。彼女が代表とばかりに殿下をクソ王子と言っていた令嬢や令息の前に立ちリアンヌを見据える。何を……とばかりに呆然とするリアンヌを助けようとする人はいない。

「ご自覚がないようですね。貴女みたいな方を選ぶ時点でそのクソ王子はもはやこの国の未来の王に相応しくないのですよ？今はまだラフィーナ様と縁を切られてませんからクソでも王子と呼んで差し上げますが……あ、ご安心くださいませ。クソ王子が放った婚約破棄発言は私たちがしっかり報告いたしますから」

「ひ、ひどい……っ」

「貴様！未来の王妃になんたる言い草を！」

ついには泣き出したリアンヌに殿下が怒りの声を爆発させた。驚きで既に私は涙を見せてはいないけど、私の時とはえらい違うなと少し悲しくなる。それはそれとして、そんな怒鳴る殿下に対して怯える人は誰一人としていない。寧ろにこにこと笑みを今だ絶やさないため私からしても不気味に感じてしまう。なんで皆様はここまで殿下に挑発的なんだろうという疑問と共に。

「いや～、そんなのが王妃になったら国が潰れますって」

「なっ！お前まで……エヴァン！」

さらにはアルマ様に同意とばかりに現れた殿下と同じく乙女ゲームでは攻略対象の宰相の息子エヴァン・ユージン様。まさか攻略対象がヒロインであるリアンヌの味方をしないとは思わなかった。殿下以外の攻略対象が見当たらないとは思っていたけど。

「エヴァン様！確かに私は庶民の出ですが、ユーザ様や国民たちのためにも頑張るつもりです！だから……っ」

そんなエヴァン様の態度に負けじとまるで悲劇のヒロインみたいに涙ながらに叫ぶヒロインリアンヌ。

「え？何を頑張るの？子作り？君の子は誰もいらないんじゃないかな？子供を悲しませるだけだから自己満足な子作りは反対だよ。命は大事にしようね」

「そんな酷いこと……っ」

「ひどいひどいって……それしか言えないの？さっきから同じことばっかで少しくらい言い返せないわけ？守られるだけの王妃は人形と一緒だよ？」

エヴァン様の言葉に思わず頷きたくなる。王妃は時には自分で自分を守る術がなくてはいけない。言われっ放しでは相手の思うつぼだから。まあこれは殿下の言葉に泣いてしまった私が言えたことではないけど……王妃は弱いばかりじゃ務まらないのは事実。

「エヴァン！いい加減に……」

「いい加減にするのはてめぇだよ。クソ殿下」


我慢ならないとばかりにエヴァンの胸倉を掴もうとした殿下を止めたのはまたしてもエヴァン様と同じく急に現れた攻略対象の騎士長息子リドル・リエーガー様だった。