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当たり前になった危ない日常ー弘也視点ー
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私の人生の中でもし神とやらに感謝することがあると言うならばそれは弘人との出会いだろう。弘人との出会いはなんてことのない出会いが始まりだった。
その出会いの日は、まだ学校にも行ってない幼い私が初めて言い付けを破り勉強をサボるために監視の目を掻い潜って家を出た日。近くの逃げ込んだ公園で弘人と出会った。
「すな……すな、たのしい、すな」
そこではひとりぽつんと気分をまぎらわせるかのように歌を歌いながらも寂しげな雰囲気を漂わせる弘人は一人寂しくせっせと砂場で山を作っていた。だからこそあまりにも寂しげで見てられず声をかけたのは私から。
「たのしいなら、たのしそうにしろ」
今でこそ弘人相手ならもう少し言い方があった気もするが、英才教育を受けながら私は特別な存在だから大事だと思う人以外には弱みを見せるなと言われてきたためにこの態度が普通でもあった。
「だれ?」
そんな私の態度を気にせずきょとんとした顔で首をかしげる弘人は今でも鮮明に思い出せる。同い年でありながら男とは思えない可愛さは反則だろう。思えば同年代を可愛いと思ったのはこれが初めてだった。
その頃、保育園で会う唯一の同年代たちは純粋さのひとかけらもなく、大人を少し幼稚にしたような奴らばかりで、弘人のような身の丈にあった幼い子を見たのもまた弘人が初めてだったからこそ今も尚特別に思えるのだろう。
「わ、わたしはいじゅういんひろやだ」
「ひろとはね、ひろとだよ!ひろっていっしょだね!」
初めての可愛いと思える衝撃に私が言葉を詰まらせたものの、それを一切気にせず何が嬉しいのか名前を聞いた瞬間ににぱっと笑う弘人に、何故家を出る時カメラを持っていかなかったのか今でも後悔している。それだけにこの可愛さは世界一を誇ってもいいと心のメモリアルには残したままだ。
「………そうだな」
とりあえずその時なんとか返事を返した私は自分自身を褒めたい。それくらいに弘人の初笑顔の可愛さは衝撃的だったのだから。
「あの、あのね、いっしょに……あそんでくれる?」
そしてもじもじとしながらいい?いい?といじらしく尋ねてくる弘人は幼い私を横から殴り付けるかのような衝撃をもたらした。私は勉強をサボって逃げてきたことも忘れ、弘人の遊びに付き合ったのは言うまでもない。
この時からだろう。弘人の願いは全て叶えたいと思い始めたのは。
そして不覚にも探しに来たボディーガードや祖母にその日は見つかり、泣く泣く弘人と離れることになった。
離れる時に
「ひく……っまた、あえりゅ?」
泣きながら聞かれては時間を作らずにはいられない。
「ぜったいあう」
そう約束した矢先それを見ていた祖母に帰宅後、言われた言葉がある。
「弘人くんって子が大事なら伊集院家のトップに立ちな!そしたらあの子のお願いは全部叶えられるし、あんたの側に一生置けるよ!」
自身にも他人にも厳しい祖母からの言葉は自分の理想ともいえ、それからは習い事をサボるようなことはせず、知識をつけるごとに弘人の個人情報を調べつくした。
それからは学校も飛び級で一度卒業してから弘人と同じ学校に再度転校という形で伊集院家から公立に通うことの許可をもらい、家を特定してからは合鍵を作るなど徹底し、今では朝起こすのは私の役目。着替えも本来なら手伝いたいが、なんだかいけないことをしている気分になり断念。
何故そんな気持ちになるのか?なんらかの病気を疑ったが、正常だった。それはそれとして今弘人といられるのは努力した日々があるからこそ。
全ては弘人を誰にも奪わせず、幸せにするために。
「ストーカーにさせる気はなかったんだけどねぇ」
「ストーカー?おば様違いますよ。これは大事な人を守るために当たり前のことです。まだまだ私が未熟なため完璧とはいいがたいですが……」
「束縛もほどほどにね」
「?」
たまに祖母が何のことを言っているのかわからないが、今の目標は打倒葉月だとかいう害虫駆除。弘人にうまく寄生しているせいで中々下手に引き剥がせず苦労している。
あれさえいなければ私と弘人だけの世界となるのに。
そんな二人の世界を夢見て今日も私は仕事の合間に弘人を監視する。全ては弘人の安全のために。
おわり
あとがき
………弘也視点にしたら余計に危ないやつでした。まあ、こうなったのは一目惚れで初恋を自覚できないままに勝手に拗らせたと言いますか……。
もはや逃がす気ゼロですよね。嫁とか作ってもいいみたいな感じでありながら実際は許す気なしみたいな。
弘人逃げてー!
登場人物追加説明
伊集院祖母
弘也のおばあちゃん。自分にも他人にも厳しい人。最近は弘也の弘人に対する執着具合に育て方を間違えただろうかとお悩み中。そのため弘人に申し訳なさから弘人には優しかったりする。
伊集院ボディーガード
伊集院家のボディーガード。仕事をしながらも時間あれば男を監視する弘也は同姓愛者なのかと疑いながらも口には出さない。人として監視はやめるよう止めるべきか迷っている。
その出会いの日は、まだ学校にも行ってない幼い私が初めて言い付けを破り勉強をサボるために監視の目を掻い潜って家を出た日。近くの逃げ込んだ公園で弘人と出会った。
「すな……すな、たのしい、すな」
そこではひとりぽつんと気分をまぎらわせるかのように歌を歌いながらも寂しげな雰囲気を漂わせる弘人は一人寂しくせっせと砂場で山を作っていた。だからこそあまりにも寂しげで見てられず声をかけたのは私から。
「たのしいなら、たのしそうにしろ」
今でこそ弘人相手ならもう少し言い方があった気もするが、英才教育を受けながら私は特別な存在だから大事だと思う人以外には弱みを見せるなと言われてきたためにこの態度が普通でもあった。
「だれ?」
そんな私の態度を気にせずきょとんとした顔で首をかしげる弘人は今でも鮮明に思い出せる。同い年でありながら男とは思えない可愛さは反則だろう。思えば同年代を可愛いと思ったのはこれが初めてだった。
その頃、保育園で会う唯一の同年代たちは純粋さのひとかけらもなく、大人を少し幼稚にしたような奴らばかりで、弘人のような身の丈にあった幼い子を見たのもまた弘人が初めてだったからこそ今も尚特別に思えるのだろう。
「わ、わたしはいじゅういんひろやだ」
「ひろとはね、ひろとだよ!ひろっていっしょだね!」
初めての可愛いと思える衝撃に私が言葉を詰まらせたものの、それを一切気にせず何が嬉しいのか名前を聞いた瞬間ににぱっと笑う弘人に、何故家を出る時カメラを持っていかなかったのか今でも後悔している。それだけにこの可愛さは世界一を誇ってもいいと心のメモリアルには残したままだ。
「………そうだな」
とりあえずその時なんとか返事を返した私は自分自身を褒めたい。それくらいに弘人の初笑顔の可愛さは衝撃的だったのだから。
「あの、あのね、いっしょに……あそんでくれる?」
そしてもじもじとしながらいい?いい?といじらしく尋ねてくる弘人は幼い私を横から殴り付けるかのような衝撃をもたらした。私は勉強をサボって逃げてきたことも忘れ、弘人の遊びに付き合ったのは言うまでもない。
この時からだろう。弘人の願いは全て叶えたいと思い始めたのは。
そして不覚にも探しに来たボディーガードや祖母にその日は見つかり、泣く泣く弘人と離れることになった。
離れる時に
「ひく……っまた、あえりゅ?」
泣きながら聞かれては時間を作らずにはいられない。
「ぜったいあう」
そう約束した矢先それを見ていた祖母に帰宅後、言われた言葉がある。
「弘人くんって子が大事なら伊集院家のトップに立ちな!そしたらあの子のお願いは全部叶えられるし、あんたの側に一生置けるよ!」
自身にも他人にも厳しい祖母からの言葉は自分の理想ともいえ、それからは習い事をサボるようなことはせず、知識をつけるごとに弘人の個人情報を調べつくした。
それからは学校も飛び級で一度卒業してから弘人と同じ学校に再度転校という形で伊集院家から公立に通うことの許可をもらい、家を特定してからは合鍵を作るなど徹底し、今では朝起こすのは私の役目。着替えも本来なら手伝いたいが、なんだかいけないことをしている気分になり断念。
何故そんな気持ちになるのか?なんらかの病気を疑ったが、正常だった。それはそれとして今弘人といられるのは努力した日々があるからこそ。
全ては弘人を誰にも奪わせず、幸せにするために。
「ストーカーにさせる気はなかったんだけどねぇ」
「ストーカー?おば様違いますよ。これは大事な人を守るために当たり前のことです。まだまだ私が未熟なため完璧とはいいがたいですが……」
「束縛もほどほどにね」
「?」
たまに祖母が何のことを言っているのかわからないが、今の目標は打倒葉月だとかいう害虫駆除。弘人にうまく寄生しているせいで中々下手に引き剥がせず苦労している。
あれさえいなければ私と弘人だけの世界となるのに。
そんな二人の世界を夢見て今日も私は仕事の合間に弘人を監視する。全ては弘人の安全のために。
おわり
あとがき
………弘也視点にしたら余計に危ないやつでした。まあ、こうなったのは一目惚れで初恋を自覚できないままに勝手に拗らせたと言いますか……。
もはや逃がす気ゼロですよね。嫁とか作ってもいいみたいな感じでありながら実際は許す気なしみたいな。
弘人逃げてー!
登場人物追加説明
伊集院祖母
弘也のおばあちゃん。自分にも他人にも厳しい人。最近は弘也の弘人に対する執着具合に育て方を間違えただろうかとお悩み中。そのため弘人に申し訳なさから弘人には優しかったりする。
伊集院ボディーガード
伊集院家のボディーガード。仕事をしながらも時間あれば男を監視する弘也は同姓愛者なのかと疑いながらも口には出さない。人として監視はやめるよう止めるべきか迷っている。
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とても面白かったです。ニヤニヤ(ФωФ)しながら、読みました。
是非、弘也が恋を自覚したときや、その後のお話なんかも読みたいです。
(この作品も他の作品も更新楽しみにしています。)
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