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テオと両想いになったところで、使命を放り投げ出すなんてことはできるはずもなかった。私が回収しなければ、闇の存在以上に世界に混沌が生まれるかもしれない。

だから、闇の存在が復活したにも関わらず身体を探そうとしない不穏な動きは神様にも、私たちにも緊張をもたらした。

そしてその緊張感と共に迎えた魂回収の日。回収すべき魂の近くにいる闇の存在を迎え撃つには聖王の力が足りないと思われたけど、闇の存在が何故か聖女に狙いをつけていると、神様から言われて逃げ出した魂が闇の存在に影響しているのではないかと強行するしかなかった。

【アハはハははハハ!やっぱり私がいなくても悪役令嬢は生まれたじゃない!】

「いえ、わたしはあなたをとりこむためにきました。おとなしくてんせいしてください」

【はあ?嫌よ!嫌!なんで私が悪役令嬢なんか!】

闇の存在と一緒にいたせいか少し濁りつつある魂。回収と同時に浄化しなければ、アラビアンに悪い影響があるだろうと悟る。

それは私の魂が無事では済まないかもしれないことを表していた。

「………っく!」

私たちが現れたと同時に、襲ってきた闇の存在を今はテオが足りない力でなんとか抑え込んでくれている。最悪魂回収と同時に闇の存在から隠れてしまえるよう顔を特殊な仮面で隠したテオ。

私が回収さえすればテオはすぐに逃げることができ、また長い年月で必要な力をつけていけることだろう。どちらにしてもこの時は、闇の存在を祓うことなどできないと承知の上。

魂の回収さえできれば、本来流れるはずだった世界の時の流れが正常になる。だから早く回収しなければ、そう思うのにアラビアンの手は震えていて、魂の抵抗を押さえつけられなかった。

【悪役令嬢になんかなるものかあああああ!】

「だめ、私の使命は……」

魂の回収。神様の意思に従うこと。わかっている、わかっているのに頭の中で浮かぶテオとの日々。そして消えたくないなんて我が儘な気持ち。

ぐちゃぐちゃと複雑な気持ちが交差して、回収に集中などできるはずもなかった。

【なんだぁ、大したことナイじゃない】

おかげで向こうが油断してくれている。チャンスだ。今なら抵抗させる前に回収を、回収を………回収を?

「アン!」

「て、お………」

仮面越しでもわかる彼の辛そうな表情。

離れたくない……。消えたくない……。彼に会えなくなるのが怖い………!

その想いが勝ってしまった。願ってはいけない未来を想像してしまった。そんな気持ちで回収などできるはずもなかった。

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