28 / 49
23
しおりを挟む
「今日は新しい教師を紹介する」
新しい教師。こんな微妙な時期に?誰もがざわざわしだし、私はシナリオにはなかったはずの話に、驚きを隠せない。それはユリアも同じようで怪訝な様子だった。
でも次の瞬間。入ってきた教師に私は………全てを思い出した。
「聖王………」
思わず小さく呟く。
聖王、その聖王こそが隠しキャラ。突然ラノベに現れた七人目。誰もがそんなキャラがさらに出てくるとは想像できず、隠されたヒロインの攻略対象として言われた隠れキャラの聖王。
そしてその聖王こそ、悪役令嬢アラビアンに忠誠を誓っているとされているウランの双子の兄。だからか、聖王はウランに似ているが、確かに男性であると思わせる雰囲気がある。
それに聖王の出る話では聖王の妹ウランにはある秘密があって………
そうだ、その秘密こそこの物語にファンタジー要素に関わるきっかけだった。何故か聖王が出る話だけが、恋愛よりもファンタジー要素が強い話で、ヒロインが聖王と同じ力を持つ聖女として選ばれるのだ。
そして出会った聖王と共に歪になっていく学園の異変を探っていくようになる。その原因は聖王、聖女とは反対の実体を持たない闇の存在にあり、唯一対抗できる存在は聖王と聖女のみ。しかし、その力はあまりにも巨大だった。
このままではいけないと感じたヒロインは、この国を守るためと、聖なる力全てを使うことで国を脅かす闇の存在を退ける。その闇の存在を扱うのがアラビアンであり、闇を払われたことでアラビアンがしてきたすべての悪行が、闇の存在によるものだったと聖王自身が明らかにした。
そしてさらに闇の存在はアラビアンの魂を追い出していたことを同じく公表した。それを察知した聖王により、病死していたウランの身体に来る日までアラビアンの魂を移していたのだと。アラビアンに乗り移った闇の存在をメイドのウランとして監視しながら。
そうして闇の存在を退けたことで、アラビアンは自分の身体に戻ることができた。それが唯一の悪役令嬢の生存ルートの話。
逆に、ヒロインは生命すらも闇を退けるために使い、その命を落とす結末。
これを書いた作者は、なんとなくファンタジーが書きたくなったらこうなったとあとがきには書いてあり、ファンの間で、唯一のヒロイン死亡話と悪役令嬢が生き残った話として一躍話題にあがった。しかもヒロインは、聖王の攻略を全くできずに終わったのだから、恋愛要素どこいった?と疑問の声。後々また聖王を攻略できる話も出るのではないかと噂はあったが、ついぞ出ることはなかった。
まあそれを思い出したのはいい。しかし、思い出したとして私は多分闇の存在に憑かれてはいない。私自身転生をしたと思い込んで実はとなれば話は別だが。
仮に私が闇の存在ではないとして、昨日までに見たウランは生きているのか、死んでいるのか、そこがよくわからない。
でも、もしかしたらと思うものがある。ユリアが扱っていた力のこと。
黒いもやは闇の存在の説明として出てきたことも今なら思い出せている。そうなるとユリアはシナリオ通りの聖女とは違い、反対の闇の存在を操っていることになる。
もし、ユリアに闇の存在が乗り移っていたとしたら、ウランこそが本物のヒロインの魂を持っているということ……?でもそうなると疑問が。私はユリアを転生者だと思っていた。闇の存在に転生という概念があるのか、その辺りもよくわからない。
しかもそのユリアは、目の前に聖王がいるのに怪訝な顔のまま。もしかして隠しキャラ目当てじゃなかった?それとも………聖王の存在を知らない?益々謎が増えるばかり。
隠しキャラがもし出たら、ユリアがまた何かを仕出かす気がしていたけど、気にしすぎていたのだろうか?転生者というのは私の勘違い?
………どういうこと?
「皆さん、初めまして。テオ・クランです」
そう疑問ばかりが増える中、行われる自己紹介。視線を向けてみれば、にこりと笑う聖王と目があった気がするけど………気のせいよね?
新しい教師。こんな微妙な時期に?誰もがざわざわしだし、私はシナリオにはなかったはずの話に、驚きを隠せない。それはユリアも同じようで怪訝な様子だった。
でも次の瞬間。入ってきた教師に私は………全てを思い出した。
「聖王………」
思わず小さく呟く。
聖王、その聖王こそが隠しキャラ。突然ラノベに現れた七人目。誰もがそんなキャラがさらに出てくるとは想像できず、隠されたヒロインの攻略対象として言われた隠れキャラの聖王。
そしてその聖王こそ、悪役令嬢アラビアンに忠誠を誓っているとされているウランの双子の兄。だからか、聖王はウランに似ているが、確かに男性であると思わせる雰囲気がある。
それに聖王の出る話では聖王の妹ウランにはある秘密があって………
そうだ、その秘密こそこの物語にファンタジー要素に関わるきっかけだった。何故か聖王が出る話だけが、恋愛よりもファンタジー要素が強い話で、ヒロインが聖王と同じ力を持つ聖女として選ばれるのだ。
そして出会った聖王と共に歪になっていく学園の異変を探っていくようになる。その原因は聖王、聖女とは反対の実体を持たない闇の存在にあり、唯一対抗できる存在は聖王と聖女のみ。しかし、その力はあまりにも巨大だった。
このままではいけないと感じたヒロインは、この国を守るためと、聖なる力全てを使うことで国を脅かす闇の存在を退ける。その闇の存在を扱うのがアラビアンであり、闇を払われたことでアラビアンがしてきたすべての悪行が、闇の存在によるものだったと聖王自身が明らかにした。
そしてさらに闇の存在はアラビアンの魂を追い出していたことを同じく公表した。それを察知した聖王により、病死していたウランの身体に来る日までアラビアンの魂を移していたのだと。アラビアンに乗り移った闇の存在をメイドのウランとして監視しながら。
そうして闇の存在を退けたことで、アラビアンは自分の身体に戻ることができた。それが唯一の悪役令嬢の生存ルートの話。
逆に、ヒロインは生命すらも闇を退けるために使い、その命を落とす結末。
これを書いた作者は、なんとなくファンタジーが書きたくなったらこうなったとあとがきには書いてあり、ファンの間で、唯一のヒロイン死亡話と悪役令嬢が生き残った話として一躍話題にあがった。しかもヒロインは、聖王の攻略を全くできずに終わったのだから、恋愛要素どこいった?と疑問の声。後々また聖王を攻略できる話も出るのではないかと噂はあったが、ついぞ出ることはなかった。
まあそれを思い出したのはいい。しかし、思い出したとして私は多分闇の存在に憑かれてはいない。私自身転生をしたと思い込んで実はとなれば話は別だが。
仮に私が闇の存在ではないとして、昨日までに見たウランは生きているのか、死んでいるのか、そこがよくわからない。
でも、もしかしたらと思うものがある。ユリアが扱っていた力のこと。
黒いもやは闇の存在の説明として出てきたことも今なら思い出せている。そうなるとユリアはシナリオ通りの聖女とは違い、反対の闇の存在を操っていることになる。
もし、ユリアに闇の存在が乗り移っていたとしたら、ウランこそが本物のヒロインの魂を持っているということ……?でもそうなると疑問が。私はユリアを転生者だと思っていた。闇の存在に転生という概念があるのか、その辺りもよくわからない。
しかもそのユリアは、目の前に聖王がいるのに怪訝な顔のまま。もしかして隠しキャラ目当てじゃなかった?それとも………聖王の存在を知らない?益々謎が増えるばかり。
隠しキャラがもし出たら、ユリアがまた何かを仕出かす気がしていたけど、気にしすぎていたのだろうか?転生者というのは私の勘違い?
………どういうこと?
「皆さん、初めまして。テオ・クランです」
そう疑問ばかりが増える中、行われる自己紹介。視線を向けてみれば、にこりと笑う聖王と目があった気がするけど………気のせいよね?
1
お気に入りに追加
6,581
あなたにおすすめの小説
婚約破棄先手切らせていただきます!
荷居人(にいと)
恋愛
「お前とはこん………」
「私貴方とは婚約破棄させていただきます!」
女が男の都合で一方的に婚約破棄される時代は終わりです!
自惚れも大概になさい!
荷居人による婚約破棄シリーズ第五弾。
楽しんでいただければと思います!
第四弾までは(番外編除く)すでに完結済み。
【完結】都合のいい女ではありませんので
風見ゆうみ
恋愛
アルミラ・レイドック侯爵令嬢には伯爵家の次男のオズック・エルモードという婚約者がいた。
わたしと彼は、現在、遠距離恋愛中だった。
サプライズでオズック様に会いに出かけたわたしは彼がわたしの親友と寄り添っているところを見てしまう。
「アルミラはオレにとっては都合のいい女でしかない」
レイドック侯爵家にはわたししか子供がいない。
オズック様は侯爵という爵位が目的で婿養子になり、彼がレイドック侯爵になれば、わたしを捨てるつもりなのだという。
親友と恋人の会話を聞いたわたしは彼らに制裁を加えることにした。
※独特の異世界の世界観であり、設定はゆるゆるで、ご都合主義です。
※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。教えていただけますと有り難いです。
【完結】婚約破棄される前に私は毒を呷って死にます!当然でしょう?私は王太子妃になるはずだったんですから。どの道、只ではすみません。
つくも茄子
恋愛
フリッツ王太子の婚約者が毒を呷った。
彼女は筆頭公爵家のアレクサンドラ・ウジェーヌ・ヘッセン。
なぜ、彼女は毒を自ら飲み干したのか?
それは婚約者のフリッツ王太子からの婚約破棄が原因であった。
恋人の男爵令嬢を正妃にするためにアレクサンドラを罠に嵌めようとしたのだ。
その中の一人は、アレクサンドラの実弟もいた。
更に宰相の息子と近衛騎士団長の嫡男も、王太子と男爵令嬢の味方であった。
婚約者として王家の全てを知るアレクサンドラは、このまま婚約破棄が成立されればどうなるのかを知っていた。そして自分がどういう立場なのかも痛いほど理解していたのだ。
生死の境から生還したアレクサンドラが目を覚ました時には、全てが様変わりしていた。国の将来のため、必要な処置であった。
婚約破棄を宣言した王太子達のその後は、彼らが思い描いていたバラ色の人生ではなかった。
後悔、悲しみ、憎悪、果てしない負の連鎖の果てに、彼らが手にしたものとは。
「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルバ」にも投稿しています。
お姉様の婚約者を好きになってしまいました……どうしたら、彼を奪えますか?
奏音 美都
恋愛
それは、ソフィアお姉様のご婚約を交わす席でのことでした。
「エミリー、こちらが私のご婚約者となるバロン侯爵卿のご令息、オリバー様ですわ」
「よろしく、エミリー」
オリバー様が私に向かって微笑まれました。
美しい金色の巻髪、オリーブのような美しい碧色の瞳、高い鼻に少し散らしたそばかす、大きくて魅力的なお口、人懐っこい笑顔……彼に見つめられた途端に私の世界が一気に彩られ、パーッと花が咲いたように思えました。
「オリバー様、私……オリバー様を好きになってしまいました。私を恋人にしてくださいませ!!」
私、お姉様からご婚約者を奪うために、頑張りますわ!
婚約破棄してくださって結構です
二位関りをん
恋愛
伯爵家の令嬢イヴには同じく伯爵家令息のバトラーという婚約者がいる。しかしバトラーにはユミアという子爵令嬢がいつもべったりくっついており、イヴよりもユミアを優先している。そんなイヴを公爵家次期当主のコーディが優しく包み込む……。
※表紙にはAIピクターズで生成した画像を使用しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる