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「今日は新しい教師を紹介する」

新しい教師。こんな微妙な時期に?誰もがざわざわしだし、私はシナリオにはなかったはずの話に、驚きを隠せない。それはユリアも同じようで怪訝な様子だった。

でも次の瞬間。入ってきた教師に私は………

「聖王………」

思わず小さく呟く。

聖王、その聖王こそが隠しキャラ。突然ラノベに現れた七人目。誰もがそんなキャラがさらに出てくるとは想像できず、隠されたヒロインの攻略対象として言われた隠れキャラの聖王。

そしてその聖王こそ、悪役令嬢アラビアンに忠誠を誓っているとされているウランの双子の兄。だからか、聖王はウランに似ているが、確かに男性であると思わせる雰囲気がある。

それに聖王の出る話では聖王の妹ウランにはある秘密があって………

そうだ、その秘密こそこの物語にファンタジー要素に関わるきっかけだった。何故か聖王が出る話だけが、恋愛よりもファンタジー要素が強い話で、ヒロインが聖王と同じ力を持つ聖女として選ばれるのだ。

そして出会った聖王と共に歪になっていく学園の異変を探っていくようになる。その原因は聖王、聖女とは反対の実体を持たない闇の存在にあり、唯一対抗できる存在は聖王と聖女のみ。しかし、その力はあまりにも巨大だった。

このままではいけないと感じたヒロインは、この国を守るためと、聖なる力全てを使うことで国を脅かす闇の存在を退ける。その闇の存在を扱うのがアラビアンであり、闇を払われたことでアラビアンがしてきたすべての悪行が、闇の存在によるものだったと聖王自身が明らかにした。

そしてさらに闇の存在はアラビアンの魂を追い出していたことを同じく公表した。それを察知した聖王により、病死していたウランの身体に来るきたる日までアラビアンの魂を移していたのだと。アラビアンに乗り移った闇の存在をメイドのウランとして監視しながら。

そうして闇の存在を退けたことで、アラビアンは自分の身体に戻ることができた。それが唯一の悪役令嬢の生存ルートの話。

逆に、ヒロインは生命すらも闇を退けるために使い、その命を落とす結末。

これを書いた作者は、なんとなくファンタジーが書きたくなったらこうなったとあとがきには書いてあり、ファンの間で、唯一のヒロイン死亡話と悪役令嬢が生き残った話として一躍話題にあがった。しかもヒロインは、聖王の攻略を全くできずに終わったのだから、恋愛要素どこいった?と疑問の声。後々また聖王を攻略できる話も出るのではないかと噂はあったが、ついぞ出ることはなかった。

まあそれを思い出したのはいい。しかし、思い出したとして私は多分闇の存在に憑かれてはいない。私自身転生をしたと思い込んで実はとなれば話は別だが。

仮に私が闇の存在ではないとして、昨日までに見たウランは生きているのか、死んでいるのか、そこがよくわからない。

でも、もしかしたらと思うものがある。ユリアが扱っていた力のこと。

黒いもやは闇の存在の説明として出てきたことも今なら思い出せている。そうなるとユリアはシナリオ通りの聖女とは違い、反対の闇の存在を操っていることになる。

もし、ユリアに闇の存在が乗り移っていたとしたら、ウランこそが本物のヒロインの魂を持っているということ……?でもそうなると疑問が。私はユリアを転生者だと思っていた。闇の存在に転生という概念があるのか、その辺りもよくわからない。

しかもそのユリアは、目の前に聖王がいるのに怪訝な顔のまま。もしかして隠しキャラ目当てじゃなかった?それとも………聖王の存在を知らない?益々謎が増えるばかり。

隠しキャラがもし出たら、ユリアがまた何かを仕出かす気がしていたけど、気にしすぎていたのだろうか?転生者というのは私の勘違い?

………どういうこと?

「皆さん、初めまして。テオ・クランです」

そう疑問ばかりが増える中、行われる自己紹介。視線を向けてみれば、にこりと笑う聖王と目があった気がするけど………気のせいよね?
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