悪役令嬢に転生したみたいですが、すでに婚約者は攻略されているみたいなので死んでみることにしてみました

荷居人(にいと)

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「とりあえず中に入りませんか?」

「はい、そうですね。いきましょうか、クララ」

「は、い……」

とりあえずオネエ様を今は助けないと、混乱したまま話が進まなさそうなので中に入るよう誘導すれば、メラニー様はオネエ様を自然とエスコート。

もしかして学園で姿を現さなかったのは、より令息らしく男性の作法を学ぶためだったのだろうか?慣れているとまでは言わないが、エスコート自体はちゃんとできているように思う。

オネエ様は別の緊張かカチコチだけど、令嬢としての作法の練習の成果は出ているようでエスコートされる側としての行動はちゃんとできている。

思ったより大丈夫そうだと案内した先は食事の場。ちょうど昼前のため、最初に食事で会話をしやすいようにと用意したものだ。

当主のオネエ様が一番奥のひとり席に座り、メラニー様と私は両側で互いに向き合う形に座る。とはいえ、私は車椅子なので、椅子がどけられている場所に車椅子を入れるような感じだが。

「メラニー……改めて今日はよく来てくれたわね」

なんとかメラニー様から離れたことで、オネエ様は気を取り直したようである。

「いえ、突然の訪問の知らせにも関わらず、許可をいただけたこと嬉しく思います」

気にするなとばかりのメラニー様の微笑みに、ぐっとオネエ様が胸を抑えた。メラニー様の人のよさ故の罪悪感か、イケメンすぎるが故のときめきか、理由はわからないけどオネエ様にダメージがいったのは確か。

「き、気にしなくていいわ……。アタクシも一度謝罪をすべきだと思っていたから。寧ろこちらから赴くべきだったわ、ごめんなさい」

「何を申しますか。私がレディにご足労をおかけすると?寧ろそちらの方が気を遣ってしまいます。想い人のために、自ら出向くのは当然のことでしょう」

なんでこんなイケメン語がすらすら出るのか。しかも、見た目と言動がマッチしすぎてオネエ様の赤面が私にも移ってしまいそう。

「そそそそうですか!あ、アタクシのために……あああありがとうございますっ!」

オネエ様……!気持ちはわかるけどがんばって!

「ふふ……食事が運ばれてきましたね。どれも美味しそうだ」

これではどちらが公爵家の主かわかったものではない。メラニー様の言葉で私たちは食事を始める。余裕綽々なメラニー様と顔を赤くしてぎこちないオネエ様。まあ、オネエ様に関してはメラニー様に顔向けできないと考えていたからこうなることは想像できなくもなかったけど、こう……赤面する感じを想像してたわけじゃない。

それもこれも想定外の事態があったからこそ。メラニー様のオネエ様を想う気持ちがどれだけ深いか、私たちはわかっていなかった。

「あの……メラニー様、質問をしても?」

だからこそ気になる。

「もちろん。将来私の妹の質問を無碍にはしませんよ」

何故そこまでオネエ様を想っているのか。

「メラニー様は何故そこまでオネエ様を想っているのですか?」

少し不安になったのだ。ラノベでのクラートの話でも、メラニーはクラートに一途ではあった。ヒロインを嫌うアラビアンに乗せられてヒロインのいじめに加担し、ある日それをクラートに目撃されてしまう。

もちろんヒロインを想うクラートは激怒。それをきっかけに自分の醜い様を見られたメラニーは、失意のうちに自殺。

一途な気持ちは素敵だけど、命すら投げ出せるほどに深く根付いた想いは、何がきっかけでメラニー様を死に追い詰めるかわからない。広い心をお持ちだなと端から見れば思うけれど、想い人が他の女に現を抜かしている間、傷ついてないなんて……そんなわけがないのだ。

このままメラニー様がいくらイケメンでも甘えるのがいいとは思えない。だからこそ、私はメラニー様をオネエ様と一緒に知るべきだと思った。
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