悪役令嬢に転生したみたいですが、すでに婚約者は攻略されているみたいなので死んでみることにしてみました

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失敗した。目が覚めた時、全身の痛みと共に自分で死ぬことも許されないのだとそう感じて、絶望は深まるだけだった。

しかし、前世を思い出してから目を覚ました一度目とは違い、お嬢様！と泣きながらあの時のように両親を呼びに行ったウランに応じて、次は医者と共に両親と兄………つまり家族もやってきた。

「ああっよかった………目を覚ましたのか」

酷く安堵したとばかりのアラビアンの父親。アラビアン自身の気持ちが驚いているのだろうか？どくどくと動揺が身体中に響いているかのようだ。

「ごめんなさい、ごめんなさい！貴女がこんなにも追い詰められていたなんて………っ！」

アラビアンは両親に愛されていた。それは断罪後にアラビアンの両親視点で本に書かれていたことだから、私が知っていることはアラビアン自身も知ったことのはず。だけど、前世の記憶と言っても本。断罪は信じられても、実は両親に愛されていたなんて信じられなかったことだろう。

だってアラビアンはいつしか、家族に嫌われているとばかり思っていたから。小さい頃は確かに愛されていた記憶がありながら。それ故に兄と仲が悪くなったことも理解していただけに。

「おと、さま………おか、さま………」

「………はっ！死ぬふりをして、迷惑をかけてまで構ってほしかったのか？」

しかし、兄は変わらずアラビアンが嫌いなままの兄。逆に少しほっとする自分がいる。兄までもがアラビアンを心配し出せば、アラビアンは逆に混乱したことだろう。とはいえ、死ぬふりとは随分な言い様だとは思うけれど。

「クラート！何を！」

「何故妹にそんなことが言えるの！」

「父上、母上はアラビアンの性格の悪さを知らないから、そうアラビアンにとって都合のいいように思えるんです！甘やかさないと決めたなら、今まで通りいたらいいじゃないですか！」

「「クラート！！」」

「う……っ」

何故ここまで酷いことを言えるのか。これはアラビアンが生まれたことによって、兄であるクラートが独占していた両親の愛がアラビアンに向かったせいだ。所謂幼い間だとよくある、親をとられたという嫉妬。それを引きずってる内に、その心を歪ませてヒロインと出会うことで、アラビアンを悪と決めつけていくようになるのだから正直あほらしい。心が狭すぎだと思う。両親はクラートも愛してきたというのに。誤解しか生まない教育の仕方が間違っている親も親だけど。

「もう、いい」

「アラビアン……？」

「つかれ、た……ころ……して………」

だけど、今更そんなことはどうでもいい。自分で死ぬことに失敗したなら、人に殺してもらえれば楽に死ねるかもしれない。もうとにかくこの世界に振り回されそうなのが嫌だった。

死ぬのに失敗したせいで話すのも辛く、身体も痛くて仕方ないのだから。

「なんで………そんな………せっかく生きれたのに……」

ああ、なんでアラビアンの母が泣くのか。泣きたいのはアラビアンだろうに。今の言葉だって不思議と出た言葉。きっとアラビアンは本当に疲れてしまっている。それなのに、私の前世の記憶で絶望しかなくて……絶望だけ与えて救ってあげられないことが酷く申し訳ない気持ちになった。もう自殺に拘らないから殺してくれてもいい……なんて思うくらいには。

「お言葉ですが！」

そんな中、そんな雰囲気をぶち壊すように叫んだのはウランだった。