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2章生活環境を変えてあげましょう

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眠ったミーアに魔王がしたことは・・・

ぬいぐるみに埋もれたミーアを横にし、毛布をかける。これまた触り心地は抜群の魔王指パッチンにより生まれた産物である。

そしてミーアの周りに魔法でぬいぐるみを浮かせ、ぬいぐるみで再度囲む。魔王はこれまたやりきったとばかりの笑みを浮かべるが、本人は気づいていない。ただ、気分だけがいいなと感じている。

「(他に幼い子供に必要なのはなんだ?)」

そう思う魔王は既に願いを叶えるという本来の目的を忘れていることに気づいていない。ただミーアの過ごしやすい環境を考えている。

そして魔王がしたことといえば・・・

「な、なにこれ・・・」

しばらくして起きたミーアもびっくりまさかの部屋が広くなり、滑り台、ブランコ、シーソーと遊具があるという状況。もはやミーアの元の部屋だった部分は見当たらない。壁の色さえ青くなっている。

「お前はまだ子供だ。なら、遊び道具も必要だろう。砂場はさすがにやめといたが」

「へや、ひろくなってる」

「少し異次元空間を使って広くした。この家が大きくなったわけじゃない」

「あそんでいいの?」

「ああ、シーソーは・・・俺も付き合おう。他にほしい遊具があれば言え。また空間も広くする」

何度も繰り返すが記憶だけで精神的には子供のミーアが喜ばないはずもない。ベットから出ては滑り台を滑り、ブランコに座れば、魔王が押してくれる。シーソーには魔王が付き合ってくれ、ぐるぐると回る遊具も用意された。それはもちろん魔王が魔法で回してくれる。

「すごいすごーい!」

家の中で遊具を使って遊ぶなんてことは前世でもしなかっただけに、余計に興奮したミーア。魔王は言わずともわかるだろうが、これくらいたやすいと、ミーアの喜ぶ姿にどや顔である。

ちなみにゲームでミーアと魔王の幼い頃の話はなかったため、ミーアからすればこんな楽しい毎日を過ごしてきたのかと裏話を知った気分でもあった。だが、決して本来のゲーム設定ではここまで明るいものではない。

ましてやミーアの部屋は遊具だらけ自体設定になかったことを今のミーアは知らない。

食事、運動(遊び)、勉強できる環境・・・と既に十分変わった、変わりすぎた環境。衛生的掃除は魔王のパチンでほこりひとつなくなるので問題はない。

ミーアのほしいものも味がついたものなどでなければ何でも作り出せるのでお金も大して必要ないだろう。

もし、ミーアを想うならば残りの問題は人間関係。後は礼儀作法などだろう。こればかりはさすがの魔王も万能のようで催眠もできて、記憶を植え付けることができても、心まで変えることはできない。礼儀作法も悪魔になければ魔王にだってない。人間の真似事はできてもミーアと魔王は男女と性別の違いがある。

さすがの魔王も令嬢の作法の真似事はしたこともなく、子息ならともかく令嬢の作法など何一つわからない。魔王としてはミーアはこのままでもとは思うが、周囲がミーアをバカにする時期も来るだろう。

魔王はそれを考えただけでその場のものを皆殺ししたくなった。

しかし殺したところでバカにされて傷つくミーアの心は癒せないなんてことは魔王にもわかる。さらに言えば、それは人間関係でも同じこと。

「まおう、まわして~!」

「ああ」

いっそのこと、別空間でも作ってそこで二人で暮らそうかと考える魔王だが、ミーアが出たいと強く願ってしまえば出さなくてはならない。

「まおう、ありがとう」

「俺が勝手にしたことだ」

ミーアの心からのお礼に魔王は顔を背け、素直に受け取りはしないが、その背けた顔の口許には、笑みが浮かべられている。

「まおうは・・・」

「どうした?」

それを見てミーアはもしかしたら死ぬ未来はあっても、魔王がミーアを見捨てる未来はないのではないのかという希望を抱くがまだ二日目。あまりにも高望みだと開いた口を閉じて誤魔化した。

「わたしのなまえしってる?みーあ、5さいです!」

「ミーア・・・そうか、ミーアか」

「まおうのなまえは?」

「俺に名はない。人間とした名前ならルキという名で通っているが」

「るきってなまえがあるのに、なまえがない?」

「これは俺が勝手に考えた名だからな。まあ、ミーアなら名をつけられてもいいかもしれないな」

「?」

「いや・・・気にするな。今はルキと呼べ」

思わず言ってしまったことに手で口を隠す魔王。魔王の言っている意味を理解できずミーアは首を傾げるが、本人がルキと呼べと言うならミーアは従うまでだ。いつまでも魔王と呼ぶわけにはいかないのもある。

どちらにしろ、今更な自己紹介を終えた二人。魔王はつい言ってしまったことに自分が何故あんなことをと複雑に思っていることをミーアは知らない。ミーアはよくわからないものの、誤魔化して知ったとはいえ、魔王以外の名が呼べることに嬉しく思っていた。

それはともかく、こうして生活環境が随分と変わったミーアの生活が幕を開けたのだった。
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