7 / 28
7
しおりを挟む
すぐにすぐにとするのもよくないと今日だけという我が儘は聞いてあげることにした俺。今日だけになるならお風呂で洗い合おうと目をきらきらさせた龍に言われたが、龍の想いを知った今それがよくないのはさすがにわかるのでいつも通りと言った龍の言葉を盾にとりただ一緒に入るだけとなった。
食事は食べさせてほしいと言われたのでそれくらいならと引き受けはしたが……これに抵抗がないのはよくないだろうか?と思わなくもない。まあ危険は感じないし、小鳥に餌をあげる気分だし母さんも仲良しね~と気にした様子はなかったのでいいのだろう。
寝る時にはかなり抱き締められた。これは普段と反対だ。俺が抜け出さないようにらしいが、今日ばかりはそういうつもりはないだけに我が儘な子供を見るようで可愛らしい。
頭撫でてやれないぞと言えば力を抜く辺り身長ばかり伸びて心は子供のままだなと愛おしく感じる。いつかは兄うぜぇとグレられるかと考えていた日もあったが……そんなカケラすら見られないので喜ぶべきか困る。
いや、そういう気持ちを持たれていたのだから素直に喜ぶべきではないのだろう。龍の将来を思う俺にとっては。
「兄さん、大好きだよ」
「うん、俺も………弟としてな」
「それでもいいのに」
「それは今だけかもだろ」
「そんなことないっ」
「未来はわかんねぇよ。俺もお前もな」
寝る前になって駄々をこねるような龍はそれだけ俺と一緒にいたいということで返事こそしたが、兄離れに納得いっていないのがよくわかる。
「………っ兄さんのバカ」
「まあ、お前の方が頭いいしなぁ」
「そうじゃ………っもういい!」
あまりにわざとらしかったからか拗ねてしまった龍に申し訳なく思いながらも離れようとはしない様子に嬉しく思えてしまうのだから俺も龍のことを言えないななんて心の中で思う。
その日はそんな会話で夜を終え、朝になれば俺は先に起きて支度をする。常に完璧なようでいて朝に弱い龍だから登校をずらすのは実に簡単だ。
とはいえ、初日から遅刻をさせるわけにはいかないと起こすだけならなんて甘いことを考えながら龍の頬をぺちぺちと叩いてやる。
「ん……にぃ、さ……?兄さんっ!」
「ん、起きたな。まだ今から支度すれば間に合うから学校行く用意ちゃんとしろよ」
「に、兄さん、先に行くの……?」
「まあ、もう準備終わったし?言っただろ?兄離れしろって……じゃ、いってきます」
「そんな……」
朝から顔を真っ青にしてショックを受ける龍に心が揺らぎそうになるが、これも龍の将来のためと心を鬼にして当初の予定通り俺は学校へ向かったのだった。
食事は食べさせてほしいと言われたのでそれくらいならと引き受けはしたが……これに抵抗がないのはよくないだろうか?と思わなくもない。まあ危険は感じないし、小鳥に餌をあげる気分だし母さんも仲良しね~と気にした様子はなかったのでいいのだろう。
寝る時にはかなり抱き締められた。これは普段と反対だ。俺が抜け出さないようにらしいが、今日ばかりはそういうつもりはないだけに我が儘な子供を見るようで可愛らしい。
頭撫でてやれないぞと言えば力を抜く辺り身長ばかり伸びて心は子供のままだなと愛おしく感じる。いつかは兄うぜぇとグレられるかと考えていた日もあったが……そんなカケラすら見られないので喜ぶべきか困る。
いや、そういう気持ちを持たれていたのだから素直に喜ぶべきではないのだろう。龍の将来を思う俺にとっては。
「兄さん、大好きだよ」
「うん、俺も………弟としてな」
「それでもいいのに」
「それは今だけかもだろ」
「そんなことないっ」
「未来はわかんねぇよ。俺もお前もな」
寝る前になって駄々をこねるような龍はそれだけ俺と一緒にいたいということで返事こそしたが、兄離れに納得いっていないのがよくわかる。
「………っ兄さんのバカ」
「まあ、お前の方が頭いいしなぁ」
「そうじゃ………っもういい!」
あまりにわざとらしかったからか拗ねてしまった龍に申し訳なく思いながらも離れようとはしない様子に嬉しく思えてしまうのだから俺も龍のことを言えないななんて心の中で思う。
その日はそんな会話で夜を終え、朝になれば俺は先に起きて支度をする。常に完璧なようでいて朝に弱い龍だから登校をずらすのは実に簡単だ。
とはいえ、初日から遅刻をさせるわけにはいかないと起こすだけならなんて甘いことを考えながら龍の頬をぺちぺちと叩いてやる。
「ん……にぃ、さ……?兄さんっ!」
「ん、起きたな。まだ今から支度すれば間に合うから学校行く用意ちゃんとしろよ」
「に、兄さん、先に行くの……?」
「まあ、もう準備終わったし?言っただろ?兄離れしろって……じゃ、いってきます」
「そんな……」
朝から顔を真っ青にしてショックを受ける龍に心が揺らぎそうになるが、これも龍の将来のためと心を鬼にして当初の予定通り俺は学校へ向かったのだった。
51
お気に入りに追加
1,738
あなたにおすすめの小説

俺の指をちゅぱちゅぱする癖が治っていない幼馴染
海野
BL
唯(ゆい)には幼いころから治らない癖がある。それは寝ている間無意識に幼馴染である相馬の指をくわえるというものだ。相馬(そうま)はいつしかそんな唯に自分から指を差し出し、興奮するようになってしまうようになり、起きる直前に慌ててトイレに向かい欲を吐き出していた。
ある日、いつもの様に指を唯の唇に当てると、彼は何故か狸寝入りをしていて…?

なんでも諦めてきた俺だけどヤンデレな彼が貴族の男娼になるなんて黙っていられない
迷路を跳ぶ狐
BL
自己中な無表情と言われて、恋人と別れたクレッジは冒険者としてぼんやりした毎日を送っていた。
恋愛なんて辛いこと、もうしたくなかった。大体のことはなんでも諦めてのんびりした毎日を送っていたのに、また好きな人ができてしまう。
しかし、告白しようと思っていた大事な日に、知り合いの貴族から、その人が男娼になることを聞いたクレッジは、そんなの黙って見ていられないと止めに急ぐが、好きな人はなんだか様子がおかしくて……。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

ある日、人気俳優の弟になりました。
雪 いつき
BL
母の再婚を期に、立花優斗は人気若手俳優、橘直柾の弟になった。顔良し性格良し真面目で穏やかで王子様のような人。そんな評判だったはずが……。
「俺の命は、君のものだよ」
初顔合わせの日、兄になる人はそう言って綺麗に笑った。とんでもない人が兄になってしまった……と思ったら、何故か大学の先輩も優斗を可愛いと言い出して……?
平凡に生きたい19歳大学生と、24歳人気若手俳優、21歳文武両道大学生の三角関係のお話。

隠れヤンデレは自制しながら、鈍感幼なじみを溺愛する
知世
BL
大輝は悩んでいた。
完璧な幼なじみ―聖にとって、自分の存在は負担なんじゃないか。
自分に優しい…むしろ甘い聖は、俺のせいで、色んなことを我慢しているのでは?
自分は聖の邪魔なのでは?
ネガティブな思考に陥った大輝は、ある日、決断する。
幼なじみ離れをしよう、と。
一方で、聖もまた、悩んでいた。
彼は狂おしいまでの愛情を抑え込み、大輝の隣にいる。
自制しがたい恋情を、暴走してしまいそうな心身を、理性でひたすら耐えていた。
心から愛する人を、大切にしたい、慈しみたい、その一心で。
大輝が望むなら、ずっと親友でいるよ。頼りになって、甘えられる、そんな幼なじみのままでいい。
だから、せめて、隣にいたい。一生。死ぬまで共にいよう、大輝。
それが叶わないなら、俺は…。俺は、大輝の望む、幼なじみで親友の聖、ではいられなくなるかもしれない。
小説未満、小ネタ以上、な短編です(スランプの時、思い付いたので書きました)
受けと攻め、交互に視点が変わります。
受けは現在、攻めは過去から現在の話です。
拙い文章ですが、少しでも楽しんで頂けたら幸いです。
宜しくお願い致します。


家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!
灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。
何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。
仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。
思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。
みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。
※完結しました!ありがとうございました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる