弟が兄離れしようとしないのですがどうすればいいですか?~本編~

荷居人(にいと)

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すぐにすぐにとするのもよくないと今日だけという我が儘は聞いてあげることにした俺。今日だけになるならお風呂で洗い合おうと目をきらきらさせた龍に言われたが、龍の想いを知った今それがよくないのはさすがにわかるのでいつも通りと言った龍の言葉を盾にとりただ一緒に入るだけとなった。

食事は食べさせてほしいと言われたのでそれくらいならと引き受けはしたが……これに抵抗がないのはよくないだろうか?と思わなくもない。まあ危険は感じないし、小鳥に餌をあげる気分だし母さんも仲良しね~と気にした様子はなかったのでいいのだろう。

寝る時にはかなり抱き締められた。これは普段と反対だ。俺が抜け出さないようにらしいが、今日ばかりはそういうつもりはないだけに我が儘な子供を見るようで可愛らしい。

頭撫でてやれないぞと言えば力を抜く辺り身長ばかり伸びて心は子供のままだなと愛おしく感じる。いつかは兄うぜぇとグレられるかと考えていた日もあったが……そんなカケラすら見られないので喜ぶべきか困る。

いや、そういう気持ちを持たれていたのだから素直に喜ぶべきではないのだろう。龍の将来を思う俺にとっては。

「兄さん、大好きだよ」

「うん、俺も………弟としてな」

「それでもいいのに」

「それは今だけかもだろ」

「そんなことないっ」

「未来はわかんねぇよ。俺もお前もな」

寝る前になって駄々をこねるような龍はそれだけ俺と一緒にいたいということで返事こそしたが、兄離れに納得いっていないのがよくわかる。

「………っ兄さんのバカ」

「まあ、お前の方が頭いいしなぁ」

「そうじゃ………っもういい!」

あまりにわざとらしかったからか拗ねてしまった龍に申し訳なく思いながらも離れようとはしない様子に嬉しく思えてしまうのだから俺も龍のことを言えないななんて心の中で思う。

その日はそんな会話で夜を終え、朝になれば俺は先に起きて支度をする。常に完璧なようでいて朝に弱い龍だから登校をずらすのは実に簡単だ。

とはいえ、初日から遅刻をさせるわけにはいかないと起こすだけならなんて甘いことを考えながら龍の頬をぺちぺちと叩いてやる。

「ん……にぃ、さ……?兄さんっ!」

「ん、起きたな。まだ今から支度すれば間に合うから学校行く用意ちゃんとしろよ」

「に、兄さん、先に行くの……?」

「まあ、もう準備終わったし?言っただろ?兄離れしろって……じゃ、いってきます」

「そんな……」

朝から顔を真っ青にしてショックを受ける龍に心が揺らぎそうになるが、これも龍の将来のためと心を鬼にして当初の予定通り俺は学校へ向かったのだった。
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