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「名もなき令嬢!私は君に恋をしたようだ!何故かは知らないが私の婚約者となることを許そう」

何故だか屋上でひとりぽつんと日向ぼっこをしていたところ現れたのはこの国に住む人ならば誰もが知っているこの国の王子様。非常に優秀で美形であるこの方が通った道に令嬢がいれば、誰もがきゃーきゃーと騒ぐのだ。

そんな人が何かよくわからないことを言っている。右を見る誰もいない。左を見る誰もいない。上を見る誰もいない。下を見る……蟻がいた。

なるほど確かに蟻なら名前を知らなくてもおかしくはない。令嬢ではないだろうけど、何故恋をしたかはわからない恋らしいので、に恋をしたと認めたくなかったのかもしれない。

こんな告白場面に私が居合わせるわけにはいかないと思い、屋上から去ろうとすれば掴まれる腕。何故。

「輝くばかりの私を無視するとは何事だ!」

「……?人は光りません」

「そういう意味じゃない!」

どういう意味だろうか。人が光ってたら普通に怖い。頭が光る人ならいそうだけれど……はっ!まさか……

「殿下、もうすでに……?お若いのに……」

「おい、どういう意味だ」

「え?私にはわかりませんが、その後頭部辺りがはげられて……?」

「成人もしてない内から禿げてたまるか!」

「だって殿下は輝いてるって……」

「だから……っそうじゃない!」

もしかすると輝くというのは他に意味があるのでしょうか?輝く……光る軍……。ひかる軍、ひかるぐん……ふふ、わかりました!

「ヒカルくんを無視するなと言う意味ですね!ヒカルくんばかりの私を無視するな!そういうことでしたか」

ヒカルくんばかり(考え続けている)私を無視するな!と。つまり、ヒカルくんとやらが殿下の婚約者に選ばれたお方。

でも名もなき令嬢は名前を言えぬお方と。そういったあえて知らぬフリをした隠語なのですね。実はご子息で人間ですらないからと。

ヒカルくん、明らかに男性名に思えますし……。なるほどなるほど。あ、でも相手はお蟻様でした!雄が正しいのかしら?

「ヒカルくんなんぞ知らん!」

「大丈夫です!ご理解いたしました!」

「何を理解した!?」

「殿下は頭がいいですもんね」

「ん?まあ、何もかもが完璧すぎる私だからな。バカなはずがない。そこはよくわかってるじゃないか」

褒めた瞬間急に殿下の態度が偉そうな態度になりました。いや、自信満々と言うべきでしょうか?王子だけあってかなり様になります。

「剣に限らず身体能力もずば抜けていると聞いています」

「そうだろうそうだろう!覚えがいいからな!私は!」

気のせいか鼻が天狗になっている気がしなくもありません。

「顔も殿下ほど綺麗な方はいませんよね」

「よくわかっているじゃないか!このキリッとした目、手入れの怠らない肌に無駄な肉のない輪郭、どれをとってもかっこよく、どの角度で見ようとも美しくある私ほどの美形が世界にいるはずもない」

突然鏡を持って自分を見始めました。どこに鏡を隠し持っていたんでしょう?気がつけば殿下の手に握られていた手鏡。楽しそうにご自分を見られています。

「そこまで完璧なんです。でも人は必ず欠点があるものだとお母様が言ってました」

「まあ、普通ならそうだろう。だが、私は特別だ」

ここまで自信満々な人も中々すごいです。やはり王子さまとなると他と違うんでしょうか?

「私の父なんですが、すごいんです」

「すごい?どうせ大したこともないのだろう」

「生きてます」

「バカにされているのか私は」

「私という子供が生まれています」

「大したことがなさすぎて驚きなんだが」

「父は今95歳でして」

「は?」

「父は優しいですけどそれでも何故32となる今だにモテる母が……と娘の私でも思うわけです。まあ何が言いたいかと言うと、完璧な人ほど恋に関しては人から見ると欠点に思われる人に恋するものよと母が言っていました」

「待て、何か貴様が否定すべき勘違いをしている気がしてならない」

「だから殿下が男性を……いや、蟻という雄に恋してようと私は応援いたします。決して見なかったことにしようと逃げたわけではありません。せっかくの告白現場を邪魔しないよう去ろうと思っただけなのです。ヒカルくん様と末長く……」

「待てと言っただろう!何故蟻!?何故首をあちこち動かしたのか謎だったが何故そういう思考になる!もう私は何に驚けば……!何故私はお前に恋をしたなどと思ったんだ!」

「あ、そろそろ授業のお時間です。失礼いたします!」

「なっおい……!」

こうして初めて殿下と話した昼休みは終わりました。

それ以降関わることはありませんでした……が、何故か学園を卒業して1年後殿下と結婚しているから不思議です。

「お蟻様とはうまくいかなかったんですか?」

「……お前がいる限り私は完璧ではいられないようだ。頼むから蟻から離れてくれ」

まあなんだかんだ仲良くしてます。

おわり









あとがき
ふと思い付いて書いただけのショートすぎるお話。気まぐれ話。

ふざけすぎましたかね?楽しんでいただければ幸いです。
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