1 / 1
1
しおりを挟む
「名もなき令嬢!私は君に恋をしたようだ!何故かは知らないが私の婚約者となることを許そう」
何故だか屋上でひとりぽつんと日向ぼっこをしていたところ現れたのはこの国に住む人ならば誰もが知っているこの国の王子様。非常に優秀で美形であるこの方が通った道に令嬢がいれば、誰もがきゃーきゃーと騒ぐのだ。
そんな人が何かよくわからないことを言っている。右を見る誰もいない。左を見る誰もいない。上を見る誰もいない。下を見る……蟻がいた。
なるほど確かに蟻なら名前を知らなくてもおかしくはない。令嬢ではないだろうけど、何故恋をしたかはわからない恋らしいので、男に恋をしたと認めたくなかったのかもしれない。
こんな告白場面に私が居合わせるわけにはいかないと思い、屋上から去ろうとすれば掴まれる腕。何故。
「輝くばかりの私を無視するとは何事だ!」
「……?人は光りません」
「そういう意味じゃない!」
どういう意味だろうか。人が光ってたら普通に怖い。頭が光る人ならいそうだけれど……はっ!まさか……
「殿下、もうすでに……?お若いのに……」
「おい、どういう意味だ」
「え?私にはわかりませんが、その後頭部辺りがはげられて……?」
「成人もしてない内から禿げてたまるか!」
「だって殿下は輝いてるって……」
「だから……っそうじゃない!」
もしかすると輝くというのは他に意味があるのでしょうか?輝く……光る軍……。ひかる軍、ひかるぐん……ふふ、わかりました!
「ヒカルくんを無視するなと言う意味ですね!ヒカルくんばかりの私を無視するな!そういうことでしたか」
ヒカルくんばかり(考え続けている)私を無視するな!と。つまり、ヒカルくんとやらが殿下の婚約者に選ばれたお方。
でも名もなき令嬢は名前を言えぬお方と。そういったあえて知らぬフリをした隠語なのですね。実はご子息で人間ですらないからと。
ヒカルくん、明らかに男性名に思えますし……。なるほどなるほど。あ、でも相手はお蟻様でした!雄が正しいのかしら?
「ヒカルくんなんぞ知らん!」
「大丈夫です!ご理解いたしました!」
「何を理解した!?」
「殿下は頭がいいですもんね」
「ん?まあ、何もかもが完璧すぎる私だからな。バカなはずがない。そこはよくわかってるじゃないか」
褒めた瞬間急に殿下の態度が偉そうな態度になりました。いや、自信満々と言うべきでしょうか?王子だけあってかなり様になります。
「剣に限らず身体能力もずば抜けていると聞いています」
「そうだろうそうだろう!覚えがいいからな!私は!」
気のせいか鼻が天狗になっている気がしなくもありません。
「顔も殿下ほど綺麗な方はいませんよね」
「よくわかっているじゃないか!このキリッとした目、手入れの怠らない肌に無駄な肉のない輪郭、どれをとってもかっこよく、どの角度で見ようとも美しくある私ほどの美形が世界にいるはずもない」
突然鏡を持って自分を見始めました。どこに鏡を隠し持っていたんでしょう?気がつけば殿下の手に握られていた手鏡。楽しそうにご自分を見られています。
「そこまで完璧なんです。でも人は必ず欠点があるものだとお母様が言ってました」
「まあ、普通ならそうだろう。だが、私は特別だ」
ここまで自信満々な人も中々すごいです。やはり王子さまとなると他と違うんでしょうか?
「私の父なんですが、すごいんです」
「すごい?どうせ大したこともないのだろう」
「生きてます」
「バカにされているのか私は」
「私という子供が生まれています」
「大したことがなさすぎて驚きなんだが」
「父は今95歳でして」
「は?」
「父は優しいですけどそれでも何故32となる今だにモテる母が……と娘の私でも思うわけです。まあ何が言いたいかと言うと、完璧な人ほど恋に関しては人から見ると欠点に思われる人に恋するものよと母が言っていました」
「待て、何か貴様が否定すべき勘違いをしている気がしてならない」
「だから殿下が男性を……いや、蟻という雄に恋してようと私は応援いたします。決して見なかったことにしようと逃げたわけではありません。せっかくの告白現場を邪魔しないよう去ろうと思っただけなのです。ヒカルくん様と末長く……」
「待てと言っただろう!何故蟻!?何故首をあちこち動かしたのか謎だったが何故そういう思考になる!もう私は何に驚けば……!何故私はお前に恋をしたなどと思ったんだ!」
「あ、そろそろ授業のお時間です。失礼いたします!」
「なっおい……!」
こうして初めて殿下と話した昼休みは終わりました。
それ以降関わることはありませんでした……が、何故か学園を卒業して1年後殿下と結婚しているから不思議です。
「お蟻様とはうまくいかなかったんですか?」
「……お前がいる限り私は完璧ではいられないようだ。頼むから蟻から離れてくれ」
まあなんだかんだ仲良くしてます。
おわり
あとがき
ふと思い付いて書いただけのショートすぎるお話。気まぐれ話。
ふざけすぎましたかね?楽しんでいただければ幸いです。
何故だか屋上でひとりぽつんと日向ぼっこをしていたところ現れたのはこの国に住む人ならば誰もが知っているこの国の王子様。非常に優秀で美形であるこの方が通った道に令嬢がいれば、誰もがきゃーきゃーと騒ぐのだ。
そんな人が何かよくわからないことを言っている。右を見る誰もいない。左を見る誰もいない。上を見る誰もいない。下を見る……蟻がいた。
なるほど確かに蟻なら名前を知らなくてもおかしくはない。令嬢ではないだろうけど、何故恋をしたかはわからない恋らしいので、男に恋をしたと認めたくなかったのかもしれない。
こんな告白場面に私が居合わせるわけにはいかないと思い、屋上から去ろうとすれば掴まれる腕。何故。
「輝くばかりの私を無視するとは何事だ!」
「……?人は光りません」
「そういう意味じゃない!」
どういう意味だろうか。人が光ってたら普通に怖い。頭が光る人ならいそうだけれど……はっ!まさか……
「殿下、もうすでに……?お若いのに……」
「おい、どういう意味だ」
「え?私にはわかりませんが、その後頭部辺りがはげられて……?」
「成人もしてない内から禿げてたまるか!」
「だって殿下は輝いてるって……」
「だから……っそうじゃない!」
もしかすると輝くというのは他に意味があるのでしょうか?輝く……光る軍……。ひかる軍、ひかるぐん……ふふ、わかりました!
「ヒカルくんを無視するなと言う意味ですね!ヒカルくんばかりの私を無視するな!そういうことでしたか」
ヒカルくんばかり(考え続けている)私を無視するな!と。つまり、ヒカルくんとやらが殿下の婚約者に選ばれたお方。
でも名もなき令嬢は名前を言えぬお方と。そういったあえて知らぬフリをした隠語なのですね。実はご子息で人間ですらないからと。
ヒカルくん、明らかに男性名に思えますし……。なるほどなるほど。あ、でも相手はお蟻様でした!雄が正しいのかしら?
「ヒカルくんなんぞ知らん!」
「大丈夫です!ご理解いたしました!」
「何を理解した!?」
「殿下は頭がいいですもんね」
「ん?まあ、何もかもが完璧すぎる私だからな。バカなはずがない。そこはよくわかってるじゃないか」
褒めた瞬間急に殿下の態度が偉そうな態度になりました。いや、自信満々と言うべきでしょうか?王子だけあってかなり様になります。
「剣に限らず身体能力もずば抜けていると聞いています」
「そうだろうそうだろう!覚えがいいからな!私は!」
気のせいか鼻が天狗になっている気がしなくもありません。
「顔も殿下ほど綺麗な方はいませんよね」
「よくわかっているじゃないか!このキリッとした目、手入れの怠らない肌に無駄な肉のない輪郭、どれをとってもかっこよく、どの角度で見ようとも美しくある私ほどの美形が世界にいるはずもない」
突然鏡を持って自分を見始めました。どこに鏡を隠し持っていたんでしょう?気がつけば殿下の手に握られていた手鏡。楽しそうにご自分を見られています。
「そこまで完璧なんです。でも人は必ず欠点があるものだとお母様が言ってました」
「まあ、普通ならそうだろう。だが、私は特別だ」
ここまで自信満々な人も中々すごいです。やはり王子さまとなると他と違うんでしょうか?
「私の父なんですが、すごいんです」
「すごい?どうせ大したこともないのだろう」
「生きてます」
「バカにされているのか私は」
「私という子供が生まれています」
「大したことがなさすぎて驚きなんだが」
「父は今95歳でして」
「は?」
「父は優しいですけどそれでも何故32となる今だにモテる母が……と娘の私でも思うわけです。まあ何が言いたいかと言うと、完璧な人ほど恋に関しては人から見ると欠点に思われる人に恋するものよと母が言っていました」
「待て、何か貴様が否定すべき勘違いをしている気がしてならない」
「だから殿下が男性を……いや、蟻という雄に恋してようと私は応援いたします。決して見なかったことにしようと逃げたわけではありません。せっかくの告白現場を邪魔しないよう去ろうと思っただけなのです。ヒカルくん様と末長く……」
「待てと言っただろう!何故蟻!?何故首をあちこち動かしたのか謎だったが何故そういう思考になる!もう私は何に驚けば……!何故私はお前に恋をしたなどと思ったんだ!」
「あ、そろそろ授業のお時間です。失礼いたします!」
「なっおい……!」
こうして初めて殿下と話した昼休みは終わりました。
それ以降関わることはありませんでした……が、何故か学園を卒業して1年後殿下と結婚しているから不思議です。
「お蟻様とはうまくいかなかったんですか?」
「……お前がいる限り私は完璧ではいられないようだ。頼むから蟻から離れてくれ」
まあなんだかんだ仲良くしてます。
おわり
あとがき
ふと思い付いて書いただけのショートすぎるお話。気まぐれ話。
ふざけすぎましたかね?楽しんでいただければ幸いです。
0
お気に入りに追加
52
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
婚約破棄されたので、契約不履行により、秘密を明かします
tartan321
恋愛
婚約はある種の口止めだった。
だが、その婚約が破棄されてしまった以上、効力はない。しかも、婚約者は、悪役令嬢のスーザンだったのだ。
「へへへ、全部話しちゃいますか!!!」
悪役令嬢っぷりを発揮します!!!
悪役令嬢に腐女子が転生した結果
荷居人(にいと)
恋愛
「ここってまさか!愛の華の乙女ゲームの世界!?それで私が悪役令嬢だなんて………神様わかってるぅ!ありがとうございますありがとうございます!」
愛の華はノーマルラブもあるけどBLルートもあるという腐女子にも優しい乙女ゲーム!
とはいえ、それはヒロインが攻略対象と結ばれてから始まる特別ルート。ヒロインに選ばれなかった者たち同士でそのルートが始まるのだ。
悪役令嬢(私)の好きなBLルートは私の婚約者である殿下と殿下の幼馴染みの後に側近になる人物。
よし、ヒロインの邪魔しまくって婚約破棄されようじゃありませんか!
………でその結果。ん?話がどうにも食い違うぞ?
実は4ページで完結の予定でしたが続けることにしたため、完結月未定。短編サクサクストーリー目指してます!気晴らし作品。
悪役令嬢の罰
荷居人(にいと)
恋愛
何がいけなかったのだろうか?
何を間違えたのだろうか?
もはやそんなことすら考えられない私の罪は罰として繰り返される。
もう泣くことも笑うこともできない悪役令嬢だった私の話。
生贄にされた聖女は、精霊王と婚約します
天宮有
恋愛
聖女として活躍していた私アイリスは、国王から精霊の生贄になれと言われてしまう。
国を更に繁栄させるためで、私の姉が新しい聖女となるから国民も賛同しているようだ。
精霊と仲がよかった私は国王の勘違いを正そうとすると、生贄から逃れようとしていると言い出す。
その後、私の扱いを知った精霊達、精霊王のリックは激怒して――国は滅びようとしていた。
陛下、貴方の愛が重すぎます!
荷居人(にいと)
恋愛
幼い頃から婚約を結んで恋愛とか権力のいざこざ色々あったけれど私たちが離れてしまうようなことはなかった。
若き王として結婚してからの夫は民への信頼も熱い。それはいい……それはいいけどね?
「今日も美しいな、リアリー」
「陛下、それはわかりましたからひとりでお仕事くらいするようにしてください」
「り、リアリー?何故そんなに冷たいんだい?私のことはシアと呼ぶように言っているだろう?ああ、もしかして私に不満が?リアリーに不満を抱えさせるなんて私はなんと愚かな夫だ……。気にくわない部分があれば直すから許しておくれ……っ」
「はぁ……はいはい、顔が気に入りません。どうしようもないでしょうから……」
「そうか、顔か。ならば焼いてくるからしばらく待って……」
「いやいやいや、冗談だからっ!」
さすがに王妃の顔も保てそうにないほど夫の愛が重すぎるのだけが、唯一の……欠点と言うべきか。おかげでどれだけ彼が私以外のご令嬢に狙われても気にならなかったけど、さすがにどうにかしたいわけで………でもこれ、私のせいでもあるんです。聞いてもらえます?
ざらめ様またまたネタ提供ありがとうございます!
【短編】転生悪役令嬢は、負けヒーローを勝たせたい!
夕立悠理
恋愛
シアノ・メルシャン公爵令嬢には、前世の記憶がある。前世の記憶によると、この世界はロマンス小説の世界で、シアノは悪役令嬢だった。
そんなシアノは、婚約者兼、最推しの負けヒーローであるイグニス殿下を勝ちヒーローにするべく、奮闘するが……。
※心の声がうるさい転生悪役令嬢×彼女に恋した王子様
※小説家になろう様にも掲載しています
宮廷外交官の天才令嬢、王子に愛想をつかれて婚約破棄されたあげく、実家まで追放されてケダモノ男爵に読み書きを教えることになりました
悠木真帆
恋愛
子爵令嬢のシャルティナ・ルーリックは宮廷外交官として日々忙しくはたらく毎日。
クールな見た目と頭の回転の速さからついたあだ名は氷の令嬢。
婚約者である王子カイル・ドルトラードを長らくほったらかしてしまうほど仕事に没頭していた。
そんなある日の夜会でシャルティナは王子から婚約破棄を宣言されてしまう。
そしてそのとなりには見知らぬ令嬢が⋯⋯
王子の婚約者ではなくなった途端、シャルティナは宮廷外交官の立場まで失い、見かねた父の強引な勧めで冒険者あがりの男爵のところへ行くことになる。
シャルティナは宮廷外交官の実績を活かして辣腕を振るおうと張り切るが、男爵から命じられた任務は男爵に文字の読み書きを教えることだった⋯⋯
「僕のこと好きだよね?」と言う自意識過剰ナルシスト男から助けてくれた人と結婚します。
ほったげな
恋愛
パーティーで知り合った侯爵のアドリアンと食事行ったら、いきなり「君、僕のこと好きだよね?」なんて言い出した。否定してもしつこく言ってくる。それを見て声をかけて助けてくれたのが幼馴染のセレスタン。これがきっかけでセレスタンと交際し、婚約しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる