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1章(真面目版)悪役令嬢の秘密

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余命残り3ヶ月。学園卒業までに残り1ヶ月。

もう私は支えなくては歩けないまでに至った。だけどまだ杖なしに立つだけならできる。まだ大丈夫まだ大丈夫と貴重な週2回ある学園休みに屋敷の自室でベットに入りながら、自分に暗示をしていたところで珍しく父が訪ねてきた。

「レヴェリー、随分顔色が悪いな………。それに、痩せたか」

「死にかけですから」

今まで来なかった家族のひとり、父が訪ねてきた時点で簡単に察することができる。侯爵令嬢のあるまじき学園での行為がついにバレたのだと。

顔色が悪いのは当たり前だとばかりに笑いすらせず返せば父が気のせいか悲しそうに眉を下げた気がした。

「レヴェリー、学園で嫌なことでもあったか?」

「え?」

自分より低い身分の者をいじめた件について問い詰められるかと思っていただけに私を案じるその言葉に私は驚きを隠せなかった。

「その………レヴェリーがティア・パレン子爵令嬢をいじめていると噂がね。それが本当だとしてもそれはきっと私たちがレヴェリーと向き合わなかったせいだと思っている。今更かもしれない。だが、私たちはレヴェリーの味方となりたい」

「は………ははっ」

「レヴェリー?」

本当に今更過ぎてしばらく笑っていなかった私に笑いが込み上げる。決して幸せの笑顔にはほど遠い笑いが。

「私に会いたくない、私は生きてさえいればいい、侯爵にふさわしくあれ、婚約者に気に入られろと言ってきたお父様がどういう心変わりですか?」

身内に対してこんな反抗的になったのは初めてだ。死に際だからこそ私は今まで溜め込んできたものを出せているのかもしれない。

だけど決して涙だけは見せるものかと笑う口をぎゅっと閉じて父を睨む。やはり父が悲しげに眉を下げているように見えて仕方ない。これは幻覚、もしくは演技だろう。

心変わりが本当だとしても死にかけた今を見て今更同情でもしたのかもしれない。だけど、幼い頃から培ってきた心の傷を修復するにはもう時間なんてものはない。

何よりも今更修復なんてする気はないのだ。それは大事なものを増やしてしまうだけだから。結局心の傷を増やしてしまいかねない。

「違う、違うんだ。レヴェリー」

「聞きたくありません。もう十分望み通りに私は動いてきたつもりです。だから貴方たちに復讐してやろうと思います」

「レヴェリー………?」

「いじめているのは本当のことです。全てはロイエ様から婚約破棄されるためです。残念ですね。きっと今の私ではロイエ様も結婚はしたくないでしょう。婚約破棄………いえ、互いに了承の上ならば解消ですね。それも時間の問題。残念ですね、公爵家に縁を作れなくて」

途中血だまりが喉にあがりそうになったのを抑えてすらすらと言葉を並べ立てる。弱味など見せてたまるかと睨む目を緩めることなく。

「なん、だと………お前はロイエ・ナダム公爵子息が好きだったのでは?」

父の言葉にどきりとする。まさか私の気持ちがバレていたなんて知らなかったから。この人の前で私が表情を崩すようなことをしてこなかっただけに。

だけど、動揺を見せるわけにはいかない。

「何のことでしょう?大嫌いですわ、政略結婚で決められた婚約者なんて」

嘘まみれたその言葉に胸が痛んだのは無視して私は父に冷たい目を向けるのだった。
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