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「まあ、落ち着け、キザよ」

「父上!」

顔を真っ赤にして言う王子様を諌めたのはこの国の国王、ドウラ・エモーン。前世乙女ゲームをしていたときから思っていたけど、名前的によく法に触れなかったなと思ったり……。まあ、陛下はゲームじゃ登場シーン最後くらいだったからいいんでしょうけど。

王子様はさっき陛下がおっしゃったキザ・エモーンなわけだけど……なるべくしてなった名前だと思ってます。かっこつけ王子ですからね、キザ王子は。

無駄に決め台詞多いんですよ。ゲームならまだしも現実はきついです。色々。

「ゴリラダ嬢、ひ、久しぶりだの」

「ウホッ」

挨拶をするのはいいけれど、相変わらず陛下はゴリラダを見る度に頬がひきつっておられます。義理とはいえ娘になるのだから慣れればいいのにと想うのですが、こればかりは相性もありますからね。

「父上、嘘ですよね!ゴリラと私が婚約なんて!」

「信じられんかもしれんが、本当じゃ」

「な、何故!?明らかに種族違いですよ!?」

「………まあ、なるようになるかなと」

陛下こちらを見ないでくださいまし。全くこれじゃあ私が策略したかのようじゃないですか…………………いや、間違ってはないですけど。

「き、貴様!父上を脅しでもしたか!」

「まあ、陛下を脅すなんて不敬なことはしません!ただ陛下に弟を陛下の養子にと差し上げただけですわ」

「それは人間だろうな?」

「犬ですけど?」

「父上!犬と息子どっちが大事なんですか!」

「いや……それはだなぁ……まあ、死ぬわけではないし、な?」

「この先の結婚人生が死んでますが!?」

「う、うむ……」

あっちに話したり、こっちに話したり王子様も大変ですね。それよりもさっきからヒロインがヤケに大人しいのが気にかかります。と思えば何か考え込んでらっしゃる?こういうときの女性ってろくなこと考えていませんよね。

「殿下、こんな婚約おかしいです!それならなおのこと婚約破棄いたしましょう!」

「そ……そうだな!」

まあ、私からゴリラに変わったことで婚約破棄イベントが変わるとはさすがに思わなかったけど……ヒロイン、あまりに単純思考すぎないかしら?王子様もあっさり納得しちゃって……。

「それは構いませんが、お二人とも……特にそちらのご令嬢、ゴリラダの怒りを受ける覚悟あってのことですよね?」

「ま、まさか殺す気……!?やっぱり貴女悪役令嬢なのね!」

悪役令嬢……ね。もしかしてと可能性は考えていたけどやっぱりヒロインも前世の記憶がありそうですわ。ならなおのこと用心しなくてわね。

「そんな物騒なことゴリラダはできてもしませんよ。ただ、ゴリラの怒りって求愛行動と一緒なのはさっきも言いましたよね?」

「殿下……ゴリラダ様とのご結婚おめでとうございます!」

え………ヒロイン、寝返り早すぎません?
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