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ぐっすりと

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「へ、陛下!お疲れのところご足労ありがとうございます!」

「ああ、現状を改めて聞きたい」

宰相の部屋の外を調査していただろう騎士が、俺を見てびしっと敬礼をする。

「はっ!では、恐れながら私から改めて………まずは、こちらとこちらに護衛のものが倒れておりまして、気づいたものたちが慌てて部屋の中に入ったものの誰もおらず、調べたところ宰相閣下だけでなく、宰相閣下が手続きをされていた陛下とスモール嬢の婚姻届の書類も一緒に消えていたようです。しばらく宰相閣下を探したのですが見つからず、スモール男爵一家のご帰宅を確認して伝言を伝えた次第です」

「なるほどな……下手に心配はかけたくない。報告の遅れは本来咎めるべきだが、スモール家を気遣ってなら寧ろその対応褒めてやる」

「光栄であります!」

「とりあえず部屋の中を見てみるか」

「はい!かしこまりました!………え!?」

「どうした?………なっ」

扉を開けた騎士が驚いた様子に俺も部屋を覗き込めば目を見開く現状がそこに。中を調べていただろう騎士が三名本気まじ倒れ、行方不明だったはずの宰相もまた倒れているではないか。

「一体何が………!無事か……!?」

慌てた騎士が宰相と騎士たちに近寄り、状態を確認する。しばらくするとほっとした様子なので命に別状はなさそうだった。

「どうなっている?」

「眠っているだけのようです」

「眠っている………?」

確か最初に倒れていた騎士も眠っていたと聞く。一体どうやって眠らせたのか、そして何故宰相を再びわざわざここに戻したのか。謎ばかりが残る。しかも物音ひとつさせずに一体どうやって………。

パッと見大きな手がかりもなさそうでかなり手際のいいのがわかった。その犯人も依頼か何かで動いているならその依頼人についても調べる必要もある。この騒動が何かの陽動なら他へ警戒する必要もあるだろう。やるべきことは山積みだ。

全く、コルトリアの婚姻を邪魔した理由がくだらないものならすぐ処刑案件だ。しかも婚姻届の書類だけがなくなったことからして明らかにその手続きの邪魔が本来の目的ならそれを行おうとする度同じことが起こる可能性もあり得る。ならばより一層早く犯人を捕まえなければ。

可能性は低いが宰相がその犯人の顔を見ていれば一番いいんだが、ここまで手際よくする犯人がそんな致命的なミスをするようには思えない。

とりあえずは宰相が見つかった今、目覚めるまでの間音も立てず眠った原因から探るべきか。

「先程眠っていた騎士とこいつらを使って何が原因で眠ったのかを大至急調べさせろ。宰相は目を覚まし次第………いや、目を覚まさせるか」

「え?」

何故待つ必要がある?無理にでも起こせばいい。暴君の皇帝らしくな。そう思い至って宰相にビンタをぶちかましてみた。

「………?」

「起きませんね………」

頬が多少腫れたにも関わらずぐっすり眠っている宰相。これは思ったより強力な薬でも使われているかもしれない。宰相は床に落とし、他の騎士には加減なく叩いてみたがやはり起きない。

これではいつ目覚めるかすらもわからないではないか。

やはり眠っている原因を探るしかないのかと俺は改めて騎士に指示したのだった。
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