3 / 14
2
しおりを挟む
まず冒険者になるためにはギルドへ行かなくていけない。初めての城の外だからちゃーんと地図も持ってきた。持ってきたけど………。
「おっかちいなぁ……」
不思議と同じ場所をぐるぐるしている。そういえば前世はよく迷子になっていたような……。そんなところまで引き継がなくてもとは思うけど、方向音痴なのはどうしようもない。
なんて思っていれば異様に周りの視線が痛いような……?いくら城の外が初めてでも僕が第二王子なのがバレちゃっただろうか?そう思いもしたけど、よく見ると僕じゃなくて僕の後ろに注目しているようだ。
「え?」
地図に集中していたせいで全然気づかなかったけど、何故か猫がぞろぞろと僕についてきていた。僕が止まったからか座って僕が動くのを待っているようだ。
いや…………なんで?
首を傾げれば猫もどうしたにゃ?とばかりに首を傾げる。これはいくら僕でも、可愛さコンテストがあったとしたら、余裕でこの猫たちには負ける気がした。
何せ、生まれる前から猫が大好きだからね!何故僕についてきていたのかよくわからないけど、僕は知らず知らずにこの猫集団を魅了し、なつかせてしまったのかもしれない。
「……おいで?」
そう都合のいい考えが浮かべば、すぐに思ったのはあのもふもふに触りたいということ。なつかれてるならいくら触っても許されるはずだと期待して。実際その集団のボス猫だろう存在が、僕に近寄ってきた。
「にゃぁ」
だが、手元までは来ず、近くまで来たかと思えばそのまま折り返すように回って、まるでついてこいというばかりにボス猫が鳴く。同時にぞろぞろと動き出す猫。
「えー………?」
一体なんだろう?と思いながらも、魅惑のもふもふパラダイスに釣られて集団猫についていく足が止まらない。そうしてある場所に着くと猫たちが止まった。
「にゃ」
「あ!ギルドだあ!」
まさかの猫はギルド案内人だった。迷っていた僕を猫が見かねてって……………………そんなことある?
「にゃん……」
な、なんだろう?達者でな、みたいな感じでボス猫は他の猫を連れて去っていく。周囲もそんな猫たちに視線を釣られたようだけど、集団なせいか、ボス猫の近寄るなオーラのせいか、近づく人はひとりもいなかった。
そうして猫を見送り、周囲が何か聞きたそうにうずうずしてるのを見て、にこりと笑い、ギルドへ逃げる。正直聞かれてもわからないし。あれだけいて、一匹もモフれなかったのも残念でならない。
さて一難去ってまた一難と言うけど、まさか4歳の幼児相手に、前世ではよくあった異世界ファンタジーのラノベみたいなテンプレを経験するとは思いもしなかった。
「おいおい、ガキが迷子かぁ?」
いかにもな悪人顔で図体のでかいおじさん。それが僕に、わざわざ絡みに来るのだからとりあえずろくでもない人なのは理解した。
いや、見た目で判断は………
「ぼく、ぼうけんしゃとうりょくにきましたっ!」
「お前みたいな?ちびが?冒険者だあ!?しかも、ひとりでぇ?」
時に見た目通りの場合もあるよね!
ここまでクズだと逆に容赦なく色々やっても罪悪感を感じないから僕は嫌いじゃない。
「おじしゃん、おなまえは?」
「はっ!名前はまず自分から名乗るもんでちゅよ~?」
なるほど、とことん僕をバカにする気でいると。しかし、それくらいで涙を見せる気は全くない。涙はここぞというときに出さないと信用は勝ち取れないからね。
「そうなんでしゅね!で、なまえは?」
寧ろここは勝ち気で行く。
「ああ?聞こえなかったのか?てめぇなんかに名乗る名はねーよ!」
そんなこと一言も言ってないのに……もうボケが始まってるのかもしれない。それなら名前を忘れてる可能性もあるのかも?
「なら、ナナシしゃんでしゅね。じぶんのなまえもわからないなら、しょうじきにいわなきゃでしゅよ?」
「なっ」
僕がそう言うと、ギルドの中で僕らを見ていた冒険者たちがくすくすと笑い始めた。名前の件だけではなく、幼児にからかいをスルーされ、あげくにはその幼児に可哀想な目で見られるのはさぞ屈辱的だろう。特にこういうプライドだけはいっちょ前そうなタイプであろうおじさんには。
「では、ナナシしゃん、これかりゃ、よろちくおねがいしましゅ!ぼくはぼうけんしゃのてちゅぢゅきがありましゅので」
そんなおじさんは予想通り見るからに怒りに震えていたが、あえて気づいてないふりをして、僕は冒険者手続きに行こうとする。これでもし冷静になって絡まないならこれぐらいで終わってもよかったんだけど………。
「ガキがぁっ!大人からかってんじゃねぇぞ!」
まあ、そうはならないよね。怒り爆発とばかりに怒鳴り声をあげ、まさかのまさか僕を殴りかかろうとする。転けた振りをして避けてもいいけど、あえて殴らせてあげて父に言いつけ、青ざめる姿を見るのも楽しそうだ。
けど、痛いのはやっぱりいやだなぁと思い、避けることを考えたときだった。
「やめろ」
「てめ……っ!」
僕を殴りかかった拳を受け止め、助けてくれた人物が現れたのは。
「おっかちいなぁ……」
不思議と同じ場所をぐるぐるしている。そういえば前世はよく迷子になっていたような……。そんなところまで引き継がなくてもとは思うけど、方向音痴なのはどうしようもない。
なんて思っていれば異様に周りの視線が痛いような……?いくら城の外が初めてでも僕が第二王子なのがバレちゃっただろうか?そう思いもしたけど、よく見ると僕じゃなくて僕の後ろに注目しているようだ。
「え?」
地図に集中していたせいで全然気づかなかったけど、何故か猫がぞろぞろと僕についてきていた。僕が止まったからか座って僕が動くのを待っているようだ。
いや…………なんで?
首を傾げれば猫もどうしたにゃ?とばかりに首を傾げる。これはいくら僕でも、可愛さコンテストがあったとしたら、余裕でこの猫たちには負ける気がした。
何せ、生まれる前から猫が大好きだからね!何故僕についてきていたのかよくわからないけど、僕は知らず知らずにこの猫集団を魅了し、なつかせてしまったのかもしれない。
「……おいで?」
そう都合のいい考えが浮かべば、すぐに思ったのはあのもふもふに触りたいということ。なつかれてるならいくら触っても許されるはずだと期待して。実際その集団のボス猫だろう存在が、僕に近寄ってきた。
「にゃぁ」
だが、手元までは来ず、近くまで来たかと思えばそのまま折り返すように回って、まるでついてこいというばかりにボス猫が鳴く。同時にぞろぞろと動き出す猫。
「えー………?」
一体なんだろう?と思いながらも、魅惑のもふもふパラダイスに釣られて集団猫についていく足が止まらない。そうしてある場所に着くと猫たちが止まった。
「にゃ」
「あ!ギルドだあ!」
まさかの猫はギルド案内人だった。迷っていた僕を猫が見かねてって……………………そんなことある?
「にゃん……」
な、なんだろう?達者でな、みたいな感じでボス猫は他の猫を連れて去っていく。周囲もそんな猫たちに視線を釣られたようだけど、集団なせいか、ボス猫の近寄るなオーラのせいか、近づく人はひとりもいなかった。
そうして猫を見送り、周囲が何か聞きたそうにうずうずしてるのを見て、にこりと笑い、ギルドへ逃げる。正直聞かれてもわからないし。あれだけいて、一匹もモフれなかったのも残念でならない。
さて一難去ってまた一難と言うけど、まさか4歳の幼児相手に、前世ではよくあった異世界ファンタジーのラノベみたいなテンプレを経験するとは思いもしなかった。
「おいおい、ガキが迷子かぁ?」
いかにもな悪人顔で図体のでかいおじさん。それが僕に、わざわざ絡みに来るのだからとりあえずろくでもない人なのは理解した。
いや、見た目で判断は………
「ぼく、ぼうけんしゃとうりょくにきましたっ!」
「お前みたいな?ちびが?冒険者だあ!?しかも、ひとりでぇ?」
時に見た目通りの場合もあるよね!
ここまでクズだと逆に容赦なく色々やっても罪悪感を感じないから僕は嫌いじゃない。
「おじしゃん、おなまえは?」
「はっ!名前はまず自分から名乗るもんでちゅよ~?」
なるほど、とことん僕をバカにする気でいると。しかし、それくらいで涙を見せる気は全くない。涙はここぞというときに出さないと信用は勝ち取れないからね。
「そうなんでしゅね!で、なまえは?」
寧ろここは勝ち気で行く。
「ああ?聞こえなかったのか?てめぇなんかに名乗る名はねーよ!」
そんなこと一言も言ってないのに……もうボケが始まってるのかもしれない。それなら名前を忘れてる可能性もあるのかも?
「なら、ナナシしゃんでしゅね。じぶんのなまえもわからないなら、しょうじきにいわなきゃでしゅよ?」
「なっ」
僕がそう言うと、ギルドの中で僕らを見ていた冒険者たちがくすくすと笑い始めた。名前の件だけではなく、幼児にからかいをスルーされ、あげくにはその幼児に可哀想な目で見られるのはさぞ屈辱的だろう。特にこういうプライドだけはいっちょ前そうなタイプであろうおじさんには。
「では、ナナシしゃん、これかりゃ、よろちくおねがいしましゅ!ぼくはぼうけんしゃのてちゅぢゅきがありましゅので」
そんなおじさんは予想通り見るからに怒りに震えていたが、あえて気づいてないふりをして、僕は冒険者手続きに行こうとする。これでもし冷静になって絡まないならこれぐらいで終わってもよかったんだけど………。
「ガキがぁっ!大人からかってんじゃねぇぞ!」
まあ、そうはならないよね。怒り爆発とばかりに怒鳴り声をあげ、まさかのまさか僕を殴りかかろうとする。転けた振りをして避けてもいいけど、あえて殴らせてあげて父に言いつけ、青ざめる姿を見るのも楽しそうだ。
けど、痛いのはやっぱりいやだなぁと思い、避けることを考えたときだった。
「やめろ」
「てめ……っ!」
僕を殴りかかった拳を受け止め、助けてくれた人物が現れたのは。
1
お気に入りに追加
591
あなたにおすすめの小説
家の猫がポーションとってきた。
熊ごろう
ファンタジー
テーブルに置かれた小さな瓶、それにソファーでくつろぐ飼い猫のクロ。それらを前にして俺は頭を抱えていた。
ある日どこからかクロが咥えて持ってきた瓶……その正体がポーションだったのだ。
瓶の処理はさておいて、俺は瓶の出所を探るため出掛けたクロの跡を追うが……ついた先は自宅の庭にある納屋だった。 やったね、自宅のお庭にダンジョン出来たよ!? どういうことなの。
始めはクロと一緒にダラダラとダンジョンに潜っていた俺だが、ある事を切っ掛けに本気でダンジョンの攻略を決意することに……。
無限に進化を続けて最強に至る
お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。
※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。
改稿したので、しばらくしたら消します
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
お願いだから俺に構わないで下さい
大味貞世氏
ファンタジー
高校2年の9月。
17歳の誕生日に甲殻類アレルギーショックで死去してしまった燻木智哉。
高校1年から始まったハブりイジメが原因で自室に引き籠もるようになっていた彼は。
本来の明るい楽観的な性格を失い、自棄から自滅願望が芽生え。
折角貰った転生のチャンスを不意に捨て去り、転生ではなく自滅を望んだ。
それは出来ないと天使は言い、人間以外の道を示した。
これは転生後の彼の魂が辿る再生の物語。
有り触れた異世界で迎えた新たな第一歩。その姿は一匹の…
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる