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2章次に無駄なプライドをへし折るとしましょう

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「あれにそんなにお金をかける必要性を感じませんが………」

ビッチのサイズの着られるものがなく用意するためにさっきまで指示を出していた私に対して不服そうにしているのは昔から私に仕えてくれている侍女アーサ・シン。彼女は特殊な貴族の生まれで侯爵家の娘。

シン侯爵家は秘匿された領地を受け持ち、そこに無断で入った者はシン侯爵家のものが直々に抹殺するという殺しを学ぶイカれた貴族として有名なの。

実際は別にイカれているわけではなく、その秘匿された領地を守るべく初代王から許された特別な貴族なだけ。その領地に関しては相手が誰であろうと殺してもいいという権限を持っている。

その秘密は代々王となったものとシン侯爵家の関係者とシン侯爵家が認めた人物、またそこに住む住人たちに告げられ、いくら王になろうとそのシン侯爵家に与えられた権限をなくすことはできず、使命を奪うことも許されない。この国の王でさえ好き勝手できぬ領地。初代王が亡くなった今でも初代王の決めたことには誰にも逆らえない。

だからこそ王ですらシン侯爵家で許可権限を得ている人物から許可をもらい同行してもらえなければ、シン侯爵家のものは容赦なく死を与えるがそれを罪にされることはない。

その王すら殺す権限もあるほどに守られる秘密があるからこそシン侯爵家の身内は国の騎士や影よりも精鋭なのだろう。とはいえ、特化部分はそれぞれ違うらしくアーサは暗殺者として特化しており、密偵としても使える逸材。

集団をまとめての指揮をしながらの戦闘を得意とするものもいれば、薬物を利用した戦闘を得意としていたりする。

他にも力が全てとばかりに我流でありながら大軍をものともせずなぎ倒す化け物並みの戦闘員もいたり、力はなくとも罠や遠距離を得意とした人物その弓矢の命中率は100%というものもいた。

だけど後者の人としてありえない天才型は何かしら頭が弱かったり、社会性がなかったりと欠点があった。それによりシン侯爵家はイカれていると思われていたりもする。

不思議と必ず天才型がひとりは生まれるせいか、シン侯爵家は神に選ばれし存在と崇める人たちも中にはいるので、アーサのことを知る人物は面倒ではあったりするのよね。

アーサは実際天才型であるから余計に。手放す気はないけれど、欠点をあげるならば忠誠を誓う人以外に容赦がないところかしら?

暗殺者にしても密偵にしても信用できるだけにいいとは思える。けどアーサは主人の敵であり、危険だと判断すればアーサは私が止めたとしても自分の家族すら殺せる人。私のためなら自分の命すら簡単に捨てられるところが危うい。

何故そう言えるかといえば、シン侯爵家では天才型と判断された子には記録が残る。その中でも暗殺者と騎士に適した天才型は忠誠心が重く、主人と決めたものを第一とする傾向にある。それでも騎士は主人に忠実で命令を無視できない傾向にあるため止められるが、暗殺者は主人が生きることを第一とするため基本は命令を聞くものの生かすことが主人にとって危険と判断すれば迷わず許可すらとらず殺してしまうほどに主人の命を優先する。

その代わり騎士の場合主人の命令により主人が命を落とした場合、そのショックで生き狂いシン家侯爵で始末せねばいけないほどに危険と言われている。逆に暗殺者は主人を殺した者に対して復讐をした後自害するだけにその後の危険性はない。

どちらにしろ騎士型、暗殺型は鍛えた後早急に主人を見つけ出して仕えさせるのがシン侯爵家の決まり。見つけぬまま成人を越えると腑抜けになるか、行き場のない忠誠心に暴れる危険性があるからだ。

それと一緒に探すことで仕える主人を見極める必要があるのだとか。何せ忠誠心故にシン家の秘密を主人にバレることは覚悟の上でも他周囲にまでバレるわけにはいかないからだ。

そういうわけでアーサの主人として見初められ、シン家に認められたのが私。暗殺者の天才型とわかっていただけに誰かしら仕えることが決まっていたからか侯爵令嬢でありながら侍女としての仕事も完璧にできていた。

護身用の術なんかも学べるしアーサは頼もしい子なの。………と話が長くなったわね。

「大丈夫。これ私のお金じゃないもの。男爵家への請求になるわ。例え帰ってもあれじゃあ可愛がられないと思うけど万が一に備えて先に借金を膨らませて少しでもあれを手助けできないようにしておきたいのよ」

「殺せばお早いですが」

「私を侮辱されたならいつものことよ?それに、殺したらそれまでじゃない」

「………ならば精神的に殺すのは許されますか」

「そんなに殺したいの?」

「ココローノ様をあの女呼わばりするような身の程知らずでしたから。豚の分際で」

私に忠誠を誓う暗殺者アーサはかなりご立腹らしい。精神的に追い詰める気は満々だけれど、アーサが加わったらどこまで酷くなるのかしら?

全くこの世界では最強だろう暗殺者を怒らせるだなんて彼女は本当恐いもの知らずね。

「アーサがしなくても勝手に自滅すると思うわ。うーん………でも、万が一を考えてあれに協力するような変わり者がいれば脅迫、必要なら始末してくれる?」

「仰せのままに」

まあさすがにあれに協力したがる人はいないと思うけれど………。

「あ、そうだわ。バイカはお会いしたいかしら?あのビッチに」

「い、いい」

「遠慮しなくてもよろしいのに」

実は先程から四つん這いで床に伏せていた奴隷バカに問えば青ざめた様子で首を横に振る。まさか殺されると思っているのかしら?

これに関してはどちらでもいい。ある意味あれを愛せたならこれも相当なものだと感心してしまうことでしょう。

まあ今の時点で会いたいと強く出ない辺り所詮そんなものよね。そう経ってないけれど婚約破棄と息巻いていたときの殿下バカが懐かしいわ。
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