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2章次に無駄なプライドをへし折るとしましょう

6~ビビッチ視点~

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男なんて単純で、将来爵位のある人物になるものだろうと関係無い。相手が男である限り私が上目遣いで見つめてやればコロリと落ちて人生イージーモードなんて思えるほどに私は自分に自信があったし、今だ私が牢屋にいる現状に納得がいかない。

何故私がこんな目に?

牢屋に入れるばかりか、タオル一枚の裸同然の姿で放置され、それを気にせずここから出してもらおうと見張りの者を誘惑して利用しようものならまるで私をゴミでも見るように見て気色悪いとしか言わない。

見張りというだけで大したものも持たない平民の男がだ。私が誘惑してやっているというのに生意気にも程がある。

食べるにも手掴みで手はベトベトだし、トイレは見張りのものたちの前でバケツにだなんて………っ屈辱と怒りで頭がおかしくなりそうだ。

だというのに役立たず殿下は何をやっているの!?私がこんな目にあっているというのに!こういうときのためのあれ殿下でしょう!?

「貴方たち今に見てなさい!殿下が貴方のような下衆を許すものですか!」

「あーはいはい」

「そりゃこえぇですなぁ」

どんな目に合おうと今だに来ない殿下に対する苛立ちとプライドで気だけは確かだ。何よりも食事は嫌がらせ染みているが、しっかり食べられるだけにまだ元気でいられる。

私を飢え死にさせる気はないようだ。それでも手掴みだから冷めたものしか食べられないし、手も汚いままで怒りは増すばかり。

見張りはいくら私が睨んでも舐めた態度で、殿下さえ来たらこいつらも処刑であると私の中で決定した。

もちろん誰よりも先に処刑されるのはあの女。城の衛兵に殿下を差し置いて偉そうに命令して………あんなのおかしいに決まってる。

陛下は何故あんな女に権限を?

私はコエデル嬢が誰よりも憎たらしく大嫌いだ。いつも私を見下して、私にデレデレとしていた男の視線を奪ってはご令嬢の憧れの的でもあって、何をしても私をいつでも抜かしていく存在だから。

『君がコエデル嬢を?あははっ冗談を!君では彼女の上に立つのは無理だろう?確かに君は魅力的ではあるけど、格が違うよ』

『貴女コエデル嬢を見習っては?』

『え?婚約者と別れろ?親が決めた婚約だから………うーん、コエデル嬢なら即答なんだけどねぇ』

『所詮あなたじゃ愛人どころか遊び相手ね………。コエデル嬢なら誰だろうと婚約者がいても正妻にしたがるわ。賢い人物ならね』

『君は魅力的だけど、コエデル嬢の前では霞むかな?拗ねないでくれ、君は綺麗なのは確かなんだから』

『貴女はご自分に自信があるようだけど、ご自身の身の丈に合う人物を見定めた方がよくてよ?男も貴女の思うような方ばかりではないのよ?』

『え?君を正妻に?あれ冗談じゃ?コエデル嬢みたいにしっかりしてくださらないと厳しいかな』

イージーモードなはずの人生が全てあの女のせいでうまくいかない!あれだけ愛してると私に囁いた男たちもコエデル嬢が、コエデル嬢みたいにとそればかり!

あの女さえいなければ!殿下とうまくいっていたはずなのに!王妃になって私をバカにしてきた人たちを見返して、誰もが羨む存在に私はなれたはずなのよ!

なのに、なんで今逆の立場に?意味がわからない!わからない!わからない!わからない!

「ごきげんよう?アハーン嬢?」

「きさまあぁぁっ!」

目の前にその怒りの中心が現れ、思わず牢屋の鉄格子を掴んであの女コエデル嬢を睨む。あまりの怒りに自分でも信じられないくらいに低い声が出た。

ずっと憎んだ女をようやく消すことができると思っていたのにそれとは逆に私が陥れられたような立場が何よりも許せない。

何のために殿下の信用を勝ち取り嘘を塗りかためてきたのか。意味をなさず寧ろ恥辱を周囲に見せられ今も続くそれに憎しみを募らせずにいられるものか。

「あらあら怖いわ」

「コエデル嬢様、あまり近寄っては危険です」

「これ以上は………」

私の誘惑には蔑んでいた男たちがコエデル嬢には見惚れて守るべき存在として認識しているのがわかる。もし私でなくここにいるのがコエデル嬢ならばこいつらは誘惑されるまでもなくコエデル嬢に協力したのだろうか。

そう感じてしまうほどに見張りたちがコエデル嬢に惹き付けられているのが私にはわかる。

これだから嫌なのだ。何故こうも誰も彼もがこの女に目を惹かれるのか。私とコエデル嬢の違いは?

私には胸もあってスタイルだって悪くない。くびれもあって容姿もいいとわかっているからこそそれを最大限に利用してきた。

父にだって爵位ある貴族のご子息にあらゆる手を使って親しむ度に褒められた。それくらいに利用に適した容姿と体。コエデル嬢以上に魅力的であるはずだ、私は。

今もそれは変わらない。体さえ綺麗に清められればだけれど。こんな美しい私を汚した罪が許せない。手も拭けなければお尻も拭けず、ここはトイレ用バケツがある限り嫌な臭いが消えることはない。

ひそかにコエデル嬢からよい香りがしただけに今コエデル嬢が近づいたならば私はすぐにでも目の前の女を殺しただろう。

笑みを扇子で隠す女に私の目にはより怒りが籠った。
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