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告白は誘導的に

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始めに言っとくけれど私は決して鈍感ではない。だから久住くんの友人たちが私と久住くんをくっつけたいのはわかるし、久住くんが私を好きなんだなとわかるのも時間なんてかからなかった。

好きになった時からいつ告白されるんだろう?と思っていたこともあったがふと気づいたのだ。私に電話すらできない久住くんが告白なんてできるのだろうかと。

久住くんのご友人から今だ私が書いた家の電話番号の紙を財布に入れていることは聞いている。財布サイズの恋愛成就のおまもりを買って輪ゴムでくくりつけているらしい。

クズ男と有名な人がおまじないでもしているのかとツッコミたくなるがご友人いわく最初私とぶつかって関わりを持つのにもすごく時間がかかったとか。

あれぶつかったのわざとかと知ったのはその時だった。連絡先くらい普通に聞けばいいのに。いや、知らない仲だからあんな強引に?

まあどちらでもいいのだけど。とにかく告白をするにはこちらからの誘導が必要だと思ったわけである。

それに利用したのはぶつかった日にいたあのご友人Aくん。今だに名前は知らない。

「ねぇ」

「お、なんだ?久住のことか?」

にこにこと笑う友人Aは私に久住くんアピールを誰よりもする人物。恐らく私と久住くんが付き合うことを誰よりも望んでいることだろう。

「ラブレターいただきまして」

「えっ」

「場合によっては付き合おうかと」

「えっえっ」

「久住くんを待つのも疲れましたし」

「えぇぇっ!くーずーみぃいぃぃ!」

正直久住くんの友人たちばかりと関わりを持って本人とは全然関わらない毎日のあまりの進展のなさに悩み疲れたのはある。

自分からの告白は考えもしたけど………ぶつかったあの日から目すら合わせられない久住くんに時間をとることがまず難しかった。

それもならば誘導告白させるぞという理由のひとつ。

ちなみにラブレターは私の友人野中茜のなかあかねが書いたものだ。茜は字が下手だから男っぽさが出るかなと思い頼んだ。ちなみに書いたのは封筒の名前だけ。中身は便箋こそあるが真っ白だ。

正直見られるとは思っていない。

さて、どうなるかと学校終わりの放課後、とりあえずうろうろしてみたらいつしかのときのように誰かにぶつかった。

「い、いいいてぇな!」

目的の人物久住くんである。久住くんは私にぶつからないとだめな何かがあるのだろうかと思うもののそれ以上に吃りようの方が気になって内心で笑う。

私の表情だけはどうにも動かないが。

「すみません、少し急いでいたもので」

うろうろしていただけだけど。来た理由はわかりきっていたのでそう言ってみた。

「し、知るか!それよりも…………それよりもだな………」

やっぱりと嘘のラブレターを信じて行かせないようとしてるのを確信する。だけどなんと情けないことだろう、何も考えていなかったのか、考えていたけど私を見て忘れてしまったのか、噂のクズ男はまるでピュアな男。どちらが乙女かわかったものではない。

こんなんだから周りに好かれるのだろうなとは思うけれど。

「何もないなら行ってもいいですか?ぶつかったことは謝りますから」

「う………だめだ」

「何故ですか?」

「いや、あの」

これがあの噂のクズ男とは思えないぐらいの吃り加減。なんだか可愛らしいなぁと思うのは惚れた欲目だろうか。

「私結構久住くん好きなんですけど付き合います?」

「え、はっお、おお………?」

こりゃだめだとばかりにこちらから。ラブレターと聞いてすぐ来ただけよしとしよう。本人は何を言われたか理解できているかはわからないが、怪しい返事はもらえたわけだ。

「よろしくお願いします。純くん」

「え、ああ………?はぁっ!?」

あ、理解できたようだ。

「今日は照れ臭いので明日から一緒に帰りましょうね?では」

「待て!いや、待つな!いや、え、ぐあぁぁっ!」

顔にこそでなくても照れ臭いのは本当で逃げるように去るも久住くん………純くんはどうしていいのか理解した今も混乱しているのだろう。

告白は誘導的にできるものではなかったし、結局自分からしたようなものだけれど、とりあえず一歩私たちの恋は進展したのだった。
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