婚約破棄先手切らせていただきます!

荷居人(にいと)

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私はこの瞬間を待っていた。

「お前とはこん……」

「私貴方とは婚約破棄させていただきます!」

決まったとばかりに今の私は高揚感に溢れている。何故なら私の婚約者より先に婚約破棄を言い渡し、その理由もすべて揃えてあるから。

既に婚約者がこの卒業パーティーで私をエスコートせず隣の女をエスコートしている時点でそろそろだとは思っていた。

せめてこんな人前でなければもう少しこの男と女にとってはマシな結果を与えられたでしょうに。私の予想通り動いた婚約者は本当に愚かなこと。周囲がこちらに視線を向けるのを感じて私はにんまりと笑う。

「何を……」

「まずは理由ですが、婚約者がいるにも関わらず不貞を働く人ほど信用できないという点」

「不貞など……!」

「不貞などしていないと?既に普段から二人仲良くいちゃつく場面の目撃者多数と夜の街にてお二人の目撃情報があります。こちらが資料です。それと宿に二人で一部屋をとっていたのも確認済みです。偽名すら使わないとは……ばかなんですか?」

「な……っきさ……っ」

「さらには私が彼女をいじめたと触れ回っているらしかったので常に私はひとりにならないよう行動していました。仮にも婚約者に汚名を着せようなんて人と結婚なんてしたくありませんわ。なので婚約破棄させていただきます」

「な……っな……っ」

「喜んでくださいませ?貴方が見下していた女に婚約破棄される第一人者となるのですから!おーっほっほっほっ」

一言だって言い訳を言わせてあげないとばかりに考えていた言葉、証拠をあげ最後には高笑い。

まるで悪役にでもなった気分だが、実際の悪は明らかに目の前の男。その証拠に周囲の視線が冷めた目で男を見ている。隣の女は私の怒濤の攻撃に呆然としている様子だ。毎度毎度この女は私の婚約者をとってやったとばかりに私を見下しているのがわかっていたから少しばかりすっきりした。

そうまだ、少しばかりだ。

「あー笑うのも辛いものですわ。それとアバズレ・デスケド嬢でしたかしら?」

「っ!わ、私はアアバズレイ・デースケードです!わざとですねっ!ひどいですわ!みなさん、こんな人の言い分なんて信じてはいけません!」

やっぱり反撃に来たとにやりと悪どく笑って見せればびくりとびくつくアバズレ。貴女がそうくることは最初からお見通しなの。

「別に私は信じてくださらなくても結構ですけど……アバズレ嬢なのは間違いではありませんわ……。まずは皆様、最近できた写真というものはご存じでしょう?」

写真、その言葉に周囲がざわつく。それは最近できた絵とは違い、まるでその世界の一部を抜き取ったかのように写し出す鏡のようなものを作り出す物と言われて今話題なのだから。

実はというと婚約者とその相手に腹立つあまり絶対ぎゃふんと言わせてやると私が作り出した代物だ。それについては隠しているから誰も知らないだろうけど。まあこの件に関してはこの場では関係ないので置いておく。
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