悪役令嬢の罰

荷居人(にいと)

文字の大きさ
上 下
1 / 1

悪役令嬢として死んだ日から【悪役】から逃げられない

しおりを挟む
「お前とは婚約破棄だ!」

「………」

何度この場面を見てきただろう。

「私はこのマリーナ嬢と婚約する!未来の王妃をいじめたから何だとは言わんが、民をいじめるような醜い心の持ち主が王妃などふさわしくはない!」

同じ言葉で私を貶めようとする殿下を。

「殿下……」

私の婚約者殿下に腕を組みながら潤んだ目で殿下を見る令嬢を。

「「寧ろそんなやつは国にいらん!貴様など処刑だ」」

「な……っ」

タイミングを見計らって同じ言葉を言ってやれば驚いた顔をする殿下。これも何度か見てきた。どうせ私が悪さをしようがしまいが、私は何かしら理由をつけられて処刑される人生なのだ。

終わらない、繰り返される人生。

これは私が本当の悪役として反省もせず最後まで足掻こうとした罰なのだと今では理解せざる終えない。理解してもこの結果に変わりはないのだけれど。

この繰り返す人生の意味を理解しても、私は今回は何もしてないと否定しようともどうせだめなのはわかっている。人生を繰り返してはいても違う結果にはやり直せないのだ、これは。どうせ何をしてもしなくても死ぬのだからさっさと殺してくれればいいと思う。

「言いたいことなどわかりきっています。早く殺してください」

「何を………っ」

「処刑するんでしょう?早く、今すぐしてください。大丈夫、抵抗はしませんから殿下のその飾りの剣でちゃんと死にますから」

笑うことなどもう忘れた。絶望しかない人生の繰り返しに泣くことも恐怖すらもない。心が壊れていく度、殿下が離れる日が日に日に早くなっているのも気づいている。

でももはや私は何故殿下に恋したのかすら今じゃ忘れてしまっていた。どうせろくな理由じゃないのだろう。

「それとも悪役らしく貴殿方二人を殺して差し上げましょうか?」

「ひぃ……っ」

「い、いや……っ」

慣れた手つきで隠し持っていたナイフを取り出す。どう隠せば持ち込めるかなんて同じことを繰り返せば嫌でもわかるようになる。そんな私を見て恐怖に歪む男女の姿をもう何度見たかなど忘れた。最初こそいい気味だとは思ったが、今じゃさっさと殺してくれないかしらなんて思える自分が居る。

「ぐ………ふ……っ」

「よ、よくやった!」

「はっ」

ようやく背中から突き刺された剣。ナイフひとつしか持たない私に怯える殿下もどうかと思うけど、たかが令嬢相手に背後から刺す騎士のまあ情けないこと。殿下を守るためなら卑怯な手もという考えならばそれはそれで忠誠に尽くした結果でしょうけど。

ああ、何度死に慣れても痛いものは痛い。だけどこの時だけは何故か解放感がある。死ぬときだけがよく眠れるのを知ってしまったから。

そして次また目覚める時は決まって一人で歩き回れるようになる頃。

「またねむれないひびがはじまるのね」

犯した罪が許される日が来るのかわからないままに私はまた同じ時を歩んでいく。繰り返されずにいるのは壊れていく私の心だけ。

END




あとがき
インフルエンザのせいでしょうか。なんか病んだお話に………。気が向けばハッピーエンド版も書きたい。
しおりを挟む
感想 2

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(2件)

ひつじ
2020.01.01 ひつじ

この悪役令嬢が気の毒…です
なのでこの令嬢を幸せになれるよう続きをお願いします❗

荷居人(にいと)
2020.01.01 荷居人(にいと)

インフル治り次第考えてみます(笑)今は頭が働かずバットなものしか書けない~!( ;∀;)

解除
とっと
2020.01.01 とっと

オウ(´□`;)!!

悪役令嬢ポジな主人公は何のために繰り返しているのか…この後、王子とヒロインと騎士はなんの咎めもなく其なりの人生を過ごしているのか…悪役令嬢が死後間もなく同じように繰り返しているのか…( ・∇・)妄想掻き立てられますネ。

正月そうそうダイエッターな私の空腹感は満足
(^人^)ゴ馳走デシタ

荷居人(にいと)
2020.01.01 荷居人(にいと)

長編で書くつもりが力尽きまして……特に理由とか考え付かなくて想像にお任せします状態です(笑)インフル治ったら頭働くかなー?

妄想材料食べまくってください(笑)

解除

あなたにおすすめの小説

婚約破棄された悪役令嬢は王子様に溺愛される

白雪みなと
恋愛
「彼女ができたから婚約破棄させてくれ」正式な結婚まであと二年というある日、婚約破棄から告げられたのは婚約破棄だった。だけど、なぜか数時間後に王子から溺愛されて!?

婚約破棄された悪役令嬢は聖女の力を解放して自由に生きます!

白雪みなと
恋愛
王子に婚約破棄され、没落してしまった元公爵令嬢のリタ・ホーリィ。 その瞬間、自分が乙女ゲームの世界にいて、なおかつ悪役令嬢であることを思い出すリタ。 でも、リタにはゲームにはないはずの聖女の能力を宿しており――?

ナルシスト王子は天然?地味令嬢に告白しましたが

荷居人(にいと)
恋愛
告白というには何とも偉そうな告白をするナルシスト王子が天然と片付けていいかわからないおバカとも言える令嬢に振り回される話。

婚約破棄されたので王子様を憎むけど息子が可愛すぎて何がいけない?

tartan321
恋愛
「君との婚約を破棄する!!!!」 「ええ、どうぞ。そのかわり、私の大切な子供は引き取りますので……」 子供を溺愛する母親令嬢の物語です。明日に完結します。

婚約破棄されなかった者たち

ましゅぺちーの
恋愛
とある学園にて、高位貴族の令息五人を虜にした一人の男爵令嬢がいた。 令息たちは全員が男爵令嬢に本気だったが、結局彼女が選んだのはその中で最も地位の高い第一王子だった。 第一王子は許嫁であった公爵令嬢との婚約を破棄し、男爵令嬢と結婚。 公爵令嬢は嫌がらせの罪を追及され修道院送りとなった。 一方、選ばれなかった四人は当然それぞれの婚約者と結婚することとなった。 その中の一人、侯爵令嬢のシェリルは早々に夫であるアーノルドから「愛することは無い」と宣言されてしまい……。 ヒロインがハッピーエンドを迎えたその後の話。

婚約破棄に処刑ですって?よろしい!ならばその程度では済まない悪役ぶりを見せてあげましょう!

荷居人(にいと)
恋愛
「気に入らないものに対して身分を盾に数々の嫌がらせ行為………我慢ならん!貴様との婚約は破棄とする!それだけでなく、私の未来の妻、つまりは未来の王妃を傷つけた罪は重い。身分剥奪どころか貴様など処刑だ!」 どれもこれも知らぬ存ぜぬばかりのことでこのバカ王子は確たる証拠もなく私に婚約破棄、意味のわからない罪状で処刑と人の多く集まる場で叫んだ。 私と二人で話す場であればまだ許したものを………。見え透いた下心丸出しビッチ令嬢に良いように操られるバカな夢見る王子には教育が必要なようです。 「婚約破棄の前にまずは私の罪状をもう一度お聞かせ願えますか?」 私を悪役扱いするならば望み通りあえて悪役となって差し上げましょう。その程度で処刑?バカが聞いて呆れるというもの。 処刑になる気もしませんが、万が一の可能性が少し、ほんの少しもないとは言えません。もしそうなった時何もせず言われたままで終わるなんてそれこそ屈辱。 ならばいっそ、処刑されても当たり前ねと思えるくらいの悪役を見せてあげようではありませんか。 そして証明しましょう。私ならそんな貴方たちの考えたバレるような悪役など演じないとね。 恋を諦めて政略結婚のために我慢してきた鬱憤も今この場で晴らしましょう。私だって嫌々なのに大概にしてくださいませね?お・う・じ・さ・ま・?

悪役令嬢と呼ばれた彼女の本音は、婚約者だけが知っている

当麻月菜
恋愛
『昔のことは許してあげる。だから、どうぞ気軽に参加してね』 そんなことが書かれたお茶会の招待状を受け取ってしまった男爵令嬢のルシータのテンションは地の底に落ちていた。 実はルシータは、不本意ながら学園生活中に悪役令嬢というレッテルを貼られてしまい、卒業後も社交界に馴染むことができず、引きこもりの生活を送っている。 ちなみに率先してルシータを悪役令嬢呼ばわりしていたのは、招待状の送り主───アスティリアだったりもする。 もちろん不参加一択と心に決めるルシータだったけれど、婚約者のレオナードは今回に限ってやたらと参加を強く勧めてきて……。 ※他のサイトにも重複投稿しています。でも、こちらが先行投稿です。 ※たくさんのコメントありがとうございます!でも返信が遅くなって申し訳ありません(><)全て目を通しております。ゆっくり返信していきますので、気長に待ってもらえたら嬉しかったりします。

悪役令嬢は婚約破棄を告げられる前に美味しい料理を平らげる

monaca
恋愛
「あ、これ、悪役で乙女ゲーに転生してる」 どうせ婚約破棄されるなら、この空腹を満たしたい!

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。