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8~鎹視点~

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年下の……しかもまだ学生の子に背筋が凍るような経験はなかった。死神様とやらを人と同等に見るなと言う瞳は鋭く冷たいもの。まだ怒っているだけならよかっただろう。

しかし、実際はそれが当たり前だろうとばかりに上から押さえつけられるような威圧に、恐怖で逃げたくなった。

色んな殺人犯を相手にし、時に命のやり取りさえした経験のある俺がだ。なんなんだこいつは、なんなんだ死神様とやらは。事件の本来の真相に近づいている気がしているのに踏み込んではいけないと思う自分が信じられない。

だからこそこいつは放置してはいけないと俺は頭の中で警告音を鳴らしている。相手は刃物ひとつ持っていないというのに。

だが、警戒したとたん、死神様とやらは人間に捕まえられないと言ってから急にどこか遠くを見るように言葉を発しなくなった。まるで俺は見えていないとばかりに。

「おい……どうした」

「………」

声を震わせてなるものかと自分を落ち着かせ、なんとか声を出し問いかけるもまるで時が止まったように動かない。ふざけているのか?とは何故か思わなかった。

あまりに反応がないため、触れようとした瞬間。

「!」

少年に触れる前に指に痛みが走る。まるで何かが邪魔でもするように。痛みの走った指を見ればまるで紙で切ってしまったような小さな切り傷。そこからうっすらと血が出る。

あまりにも不可解な現象。まるで空気に切られたような……見えない何かに切られたような。オカルトを信じるタチじゃないが、今なら信じてしまいそうなほどに小さな傷は何にも触れてないというのにできた不思議な傷だ。

死神様……それがつけたとでも言うのか?見えない何かが人を殺すというならもはやどうしようもない。ただ俺は指を加えて見ていることしかできないってのか。

非現実的な考えだというのに、何故か疑う気持ちになれないのが余計に苛立ちを感じさせる。

「……のは……」

「?」

そんな苛立ちを抑え込んでいれば聞こえる声。それは目の前の少年以外いるはずもなく、何やらぶつぶつと言い始めた。

「なんで……気づかなかったんだろう……僕は、どうすれば……どうすれば……」

「お、おい、気をしっかり……」

様子がおかしかったため、今一度肩に手を置いてみれば次は普通に触れることができた。

「……っ!な、なに」

とたんはっとしたように手を払われる。正気に戻ったかと安心する以上にひやりとしすぎた冷たい手の感触に俺は驚きを隠せない。

その冷たさはまるで死人の………。
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