上 下
55 / 75
本編(完結)

とある教師の話3~サイ視点~

しおりを挟む
サイ・ミーウンの特技は催眠術。とはいえ、よく同人誌とかにありそうな望むままに好きなように好きなだけ動かすような便利さはない。強い嫌悪感や意思の強すぎるものには効きづらいものがあったりする。

ゲームの裏設定ではサイは常に自分と関わった生徒の記憶を封じる形で謎めいた教師キャラでいた。理由?特にない。ミステリアスさが出るかなと思って。

「ミーウン先生、何をお運びすれば?」

そして決行した最初の犠牲者の令嬢は教材を運ぶのを手伝ってほしいと言えばのこのこついてきた。さすが攻略対象だけあって今や私であるサイは中々にモテるためやりやすい。

「その前に私の目を見てくれるかな?」

「目?」

「そう、目。君は今から私の合図があるまで私の目から目が離せない、そうだね?」

「はい……」

この返事がある時点で既に催眠は始まっている。成功する時点でやはりゲームの設定は裏であろうとキャラの能力的なものは失われずにいることがわかった。

「目を離せば私のことも私の言ったことも忘れるから安心しなさい」

「はい……」

「貴女はこれからピンクを纏うのです。ピンクにできるところは全てピンクに、そしてクウリを正気に戻しなさい」

考えたのは新たなるヒロインもどきの量産。本物のヒロインは初等部であるのと、ヒロインを使うことでクウリが惹かれてしまえば本末転倒。あくまでクウリが惚れるのは私でいいのだから。

それでも私が赴くわけにはいかない。私ではさらにゲームの流れから外れる可能性にある。ヒロインもどきを仕掛けることで本来のクウリを取り戻せないかと、ゲームの流れに戻せないかと考えたのだ。

そしてクウリがクウリになった時に改めて私はクウリを手に入れればいい。クウリにかける言葉はわかっているのだから。

なのに、なのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのに!量産にも邪魔が入り、中々クウリに辿り着けない。その邪魔者であるシエルとヒロインの邪魔が入らないよう初等部にも仕掛けていれば、次はまたもやヒロインの姉がまたクウリに近づこうとしていたためそれを阻止するのに手間取り量産するのはすぐにはできなかった。嫌でもピンクを目に入れることで流れをクウリ自身を取り戻すために考えた作戦は思った以上に難しい。元々ヒロインをピンクにしたのは嫌でも目立つヒロインにクウリが気にかけるきっかけを与えるため。

今や私が現実にいる今、ヒロインすら私の恋敵だが。ゲーム内でヒロインは自分ではどうしようもない女という性別でそれを自分として動かせていたからこそ許せていただけ。

別個体になった時点でヒロインに盗られたなら仕方ないとは思わない。だが、どうしてかある日気がついた時にはクウリの目がレウルを離さない。いつから?ピンク量産を決意したヒロインの姉のことがあった日から行動に移したため見逃していた間に一体。

何故レウル?何故私にその目を向けない?いやいや気のせいかもしれないと現実逃避しつつピンクの量産が望めるようになった頃にはクウリは中等部二年となり、また担任になれなかったどころか新人教師にその座を獲られて悔しく思いつつピンクを大量に解放して様子を見ていれば目の前に見えたのはクウリとレウルのキスシーン。

もはや現実逃避はできなかった。レウルのその場所は私でなければいけないのにと。怒りでおかしくなりそうだった。

だから私は強引な方法をとることにした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【本編完結】義弟を愛でていたらみんなの様子がおかしい

ちゃちゃ
BL
幼い頃に馬車の事故で両親が亡くなったレイフォードは父の従兄弟に当たるフィールディング侯爵家に引き取られることになる。 実の子のように愛され育てられたレイフォードに弟(クロード)が出来る。 クロードが産まれたその瞬間からレイフォードは超絶ブラコンへと変貌してしまう。 「クロードは僕が守るからね!」 「うんお兄様、大好き!(はぁ〜今日もオレのお兄様は可愛い)」 ブラコン過ぎて弟の前でだけは様子がおかしくなるレイフォードと、そんなレイフォードを見守るたまに様子のおかしい周りの人たち。 知らぬは主人公のみ。 本編は21話で完結です。 その後の話や番外編を投稿します。

悪役の弟に転生した僕はフラグをへし折る為に頑張ったけど監禁エンドにたどり着いた

霧乃ふー  短編
BL
「シーア兄さまぁ♡だいすきぃ♡ぎゅってして♡♡」 絶賛誘拐され、目隠しされながら無理矢理に誘拐犯にヤられている真っ最中の僕。 僕を唯一家族として扱ってくれる大好きなシーア兄様も助けに来てはくれないらしい。 だから、僕は思ったのだ。 僕を犯している誘拐犯をシーア兄様だと思いこめばいいと。

推しの完璧超人お兄様になっちゃった

紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。 そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。 ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。 そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。

弟のために悪役になる!~ヒロインに会うまで可愛がった結果~

荷居人(にいと)
BL
BL大賞20位。読者様ありがとうございました。 弟が生まれた日、足を滑らせ、階段から落ち、頭を打った俺は、前世の記憶を思い出す。 そして知る。今の自分は乙女ゲーム『王座の証』で平凡な顔、平凡な頭、平凡な運動能力、全てに置いて普通、全てに置いて完璧で優秀な弟はどんなに後に生まれようと次期王の継承権がいく、王にふさわしい赤の瞳と黒髪を持ち、親の愛さえ奪った弟に恨みを覚える悪役の兄であると。 でも今の俺はそんな弟の苦労を知っているし、生まれたばかりの弟は可愛い。 そんな可愛い弟が幸せになるためにはヒロインと結婚して王になることだろう。悪役になれば死ぬ。わかってはいるが、前世の後悔を繰り返さないため、将来処刑されるとわかっていたとしても、弟の幸せを願います! ・・・でもヒロインに会うまでは可愛がってもいいよね? 本編は完結。番外編が本編越えたのでタイトルも変えた。ある意味間違ってはいない。可愛がらなければ番外編もないのだから。 そしてまさかのモブの恋愛まで始まったようだ。 お気に入り1000突破は私の作品の中で初作品でございます!ありがとうございます! 2018/10/10より章の整理を致しました。ご迷惑おかけします。 2018/10/7.23時25分確認。BLランキング1位だと・・・? 2018/10/24.話がワンパターン化してきた気がするのでまた意欲が湧き、書きたいネタができるまでとりあえず完結といたします。 2018/11/3.久々の更新。BL小説大賞応募したので思い付きを更新してみました。

母の再婚で魔王が義父になりまして~淫魔なお兄ちゃんに執着溺愛されてます~

トモモト ヨシユキ
BL
母が魔王と再婚したルルシアは、義兄であるアーキライトが大の苦手。しかもどうやら義兄には、嫌われている。 しかし、ある事件をきっかけに義兄から溺愛されるようになり…エブリスタとフジョッシーにも掲載しています。

何をされても起きない僕は弟の友達の美形くんに食われちゃいました

霧乃ふー  短編
BL
ベッドで寝るのが大好きな僕。 いつものようにぐうぐう寝ていると、だんだんと身体にいやらしい感覚がやって来て、、、 弟の友達の美形くん×寝るのが大好きな主人公

【完】ゲームの世界で美人すぎる兄が狙われているが

BL
 俺には大好きな兄がいる。3つ年上の高校生の兄。美人で優しいけどおっちょこちょいな可愛い兄だ。  ある日、そんな兄に話題のゲームを進めるとありえない事が起こった。 「あれ?ここってまさか……ゲームの中!?」  モンスターが闊歩する森の中で出会った警備隊に保護されたが、そいつは兄を狙っていたようで………?  重度のブラコン弟が兄を守ろうとしたり、壊れたブラコンの兄が一線越えちゃったりします。高確率でえろです。 ※近親相姦です。バッチリ血の繋がった兄弟です。 ※第三者×兄(弟)描写があります。 ※ヤンデレの闇属性でビッチです。 ※兄の方が優位です。 ※男性向けの表現を含みます。 ※左右非固定なのでコロコロ変わります。固定厨の方は推奨しません。 お気に入り登録、感想などはお気軽にしていただけると嬉しいです!

僕のお兄様がヤンデレなんて聞いてない

ふわりんしず。
BL
『僕…攻略対象者の弟だ』 気付いた時には犯されていました。 あなたはこの世界を攻略 ▷する  しない hotランキング 8/17→63位!!!から48位獲得!! 8/18→41位!!→33位から28位! 8/19→26位 人気ランキング 8/17→157位!!!から141位獲得しました! 8/18→127位!!!から117位獲得

処理中です...