兄を悪役にさせないために全力を出した結果～ヤンデレブラコン化は悪役よりマシですか？～

本編(完結)

犯人は既に

ピンクを問い詰めようとすれば最初の子と同じくおかしくなっていき話にならない。そのため何の進展もなくイライラしている時に現れたのはシエル元妹とヒロインのピンク嬢。そして………これまた見たことある顔がピンク嬢に引きずられている。

「り……シエル、久しぶり……その……」

そんな気になる人物はいるがそれよりもシエルとまさか中等部の廊下でまた会うとは思わずどう接していいかわからない。前世勝手に自殺なんかしてひとりにしてしまったことを謝らなければと思うが、シエルがどこまで記憶があるかまではわからないのだから。

しかし、そんな俺を気にしていない素振りでシエルは満面の笑みをこちらに向けた。

「お兄ちゃ……いえ、クウリ様、犯人ぼこぼこにしときました！」

「「え？」」

思わぬ報告に兄と二人して疑問の声。ぼこぼこにされた人物は明らかにピンク嬢に引きずられた人物だろう。見たことがあると表現したのは正に顔の原型がほぼないから確信できなかったに過ぎない。

犯人ってやっぱりあの犯人なのだろうか？

「ピンクを汚す悪を制裁致しました！」

「ぼうじばぜんもうしません。ゆりゅじで許して」

「許すもんですか！あんなにピンク量産して！」

「ぐべっ」

既にぼろぼろなのにシエルによって顔へ蹴りを入れられ、より見たことある原型すらなくなりつつある男はいっそ憐れ。だが、シエルの言葉にやはりその犯人なのかと思えばいい気味だとすら思う。ついでに言えば、それなりに苦労して犯人の手がかりさえ掴めない間に犯人を連れてこられて複雑な気持ちもある。

「どうやって見つけたんだ？」

「んー、ハナちゃんのピンク察知能力でかな？」

聞いてもわからない理由で見つけられたらどうしようもない。やはりヒロインなだけに何か特別な……？まあ考えても仕方ないが。本当にこれが犯人ならピンクの増加もなく普通の日常に戻り、なんなら兄を悪役の道へ行かずに済む未来を得られるということ。万々歳だ。とはいえ、喜んでばかりもいられない。

シエルの言葉とはいえ、本当にピンク増加の犯人で黒幕なのか見極めなければ。

とりあえずまずは……

「これ、サイ･ミーウン先生だよな？」

原型がなくなりつつあるそれは俺が見る限りそうとしか思えない。

サイ･ミーウン。最後の『君と共に』の攻略対象で謎めいたミステリアスさを秘めた本来クウリの担任になるはずだった教師のひとり。今の担任は美形でもなんでもないそこらにいそうな若いだけのモブ教師である。

とまぁそれはともかくなんでこの人が？という気持ちでいっぱいだ。最初から攻略対象を除外していただけに。