兄を悪役にさせないために全力を出した結果～ヤンデレブラコン化は悪役よりマシですか？～

本編(完結)

神じゃなく王子です

ピンク増殖に伴い、あれからとにかく兄とただならぬ仲の良さを見せた雰囲気を醸し出してピンクを追い払っていた。ピンクがあまりにも俺ばかりを狙おうとするため中等部の男子生徒やピンク化していないみんなは俺たちに同情した様子を見せる。

正直一般性生徒に俺と兄のことについて何か言うやつはいないし、まず言えないだろう。だが、実際見ている感じ嫌悪感を出している様子のある人は全く見られない気がするのが不思議だ。別に受け入れられないのは仕方ないと思っているし、俺からすれば兄がいいならそれでいいのでどう思おうが構わないとは思っていたけど、俺と兄がピンクの前で二人の世界とばかりの雰囲気を出せば、拝んでいるものがちらほらいるのはどうしていいかわからない。予想のななめ上を行きすぎて。

それに同じことを繰り返してヒロインになるのを諦めてもらおう作戦だったはずが、ピンクは減らずともピンクまで一部拝む様子が見られてきたのは本当になんだこれ状態だ。

何故拝む、何故祈りの姿勢？おかげで兄といい雰囲気を見せようと突進してきそうな物理型ピンクを阻止できているのは助かっているけど。気がつけば椅子に座る兄の膝に乗り、向かい合って抱き合う俺たち兄弟を円に囲んで祈りのポーズをとるのだからやりづらい。

「素晴らしいですです！まるで神のごときの尊さ！すんばらすぃーですぅうぅぅ！」

「あ」

そんな気まずさを覚えていれば、急に叫ぶ声。そちらに目を向けるとそこには『君と共に』の眼鏡キャラとして出てくる画家志望の変わり者のビィ･ガク。ガク侯爵家の子息。忘れていたが、隠しキャラに近い唯一の先輩キャラとしても出てくる攻略対象だったはずだ。

恐らく学年がひとつ違うのだろう。今年入学したばかりでなければ見かけて気づいたはずだ。確か兄よりもひとつ下だったのを今思い出した。それにしてもこんな状況で出てくるのはゲームたる運命が強制的に俺たちを合わせようと動いているとでも言うのだろうか？

「手が手が勝手に動くですよぉおぉぉ！」

そうした思考を遮る叫びに、こんな濃い人物をよく忘れてたなと自分で思う。明らかにその目は俺と兄に向けられ、スケッチブックに描かれているのがわかる。確か説明書に写真のような絵を描くとあったな。

「これぞ神ごとき兄弟王子の尊き絵！」

「「「「「おぉぉ」」」」」

「クウリが光ってるね」

「兄さんも光ってますよ……」

たった数分で俺と兄に祈りを捧げる民たちというべき絵が掲げられた。確かにうまいが、どこをどう見たら教室を教会の中のように描き、俺たちを神みたく神々しく描けるのか。服すらも制服ではない。だが、その絵に描かれた主要たる人物は俺と兄だとはっきりわかる。

これは俺と兄にとって吉となるか凶となるかわからぬ出会い。その日は結局その絵の奪い合い合戦により俺たちは周囲こそ騒がしいが、久々に二人で穏やかな時を過ごした。

残りの攻略対象はあと一人。不思議とその一人も自分の方からやってくる気がしなくもない。