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本編(完結)
思い出したら最後
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随分くだらない理由での自殺だと思う。自分のために頑張ってくれただろう妹を置いて逝くというのは妹から家族を奪ったに過ぎない。
それでもあの時ようやく呪縛から解放されたようで死が救いになっていた。今考えると妹に対して罪悪感はあるし、その記憶が妹にあるかどうかわからないけどあるなら謝りたいとも思う。
ちなみに死ぬきっかけとなった記憶を思い出してあの時のように戻らず済むのは、何も今の俺からして前世だからそう深く考えずに済んでいるわけではない。
傍に、俺と同じ境遇で明らかに俺よりもすごい人がそれでも俺を褒めてくれている。なんなら意識を失う前は俺に気づかれないように裏から手助けすらして俺の努力を誰よりもわかった上で認めてくれてさえいた。そんな兄の言葉は決して適当に言ってるわけじゃないとわかるからこそおかしくならずに済む。
今思えば俺はクウリになるべくしてなったと思う。全てはレウルと会うために。
それからは何故か俺の方が兄から離れがたくなってしまった。前世のようにならないよう生きていくためには兄が必要だと、兄だけが救いだとどこかで感じているが故に。死にたい訳じゃない。けれど、記憶を思い出したことでまたあの不安に駆られそうで、生きることが怖くなりそうでたまらないのだ。
なのに兄が傍にいるだけで大丈夫と理由なく思える自分がいる。兄はあの日から俺の方から傍を離れないようにしていることに気づいているだろう。でも理由まで理解しているとは思わない。
とはいえ、兄は俺が傍にいようとするその行動を咎めはしないし、勉学や剣など厳しい面もあるがそれ以外は甘やかしてくれているのがわかるほどに声も、その言葉すらも、なんなら行動全てが俺に対して甘い。
その甘さは頭を撫で、抱き締め、触れるだけのキスを頬や額に降らせ
「クウリ、愛しているよ。私の愛はクウリだけに生涯捧げよう。誰よりも何よりも……クウリのためなら私は国を敵にしようとなんだってするから、このままずっと傍にいておくれ」
耳に響くようなうっとりとしたくなる声で言葉を囁く。
「うん……俺も兄さんのこと……」
「大丈夫、わかっているよ。それを聞くのはまだ早いんだ。今聞いてしまえば私は片付けるべきことすら忘れてクウリに狂ってしまう。だから全てを片付けたときにそれを聞かせて?」
なのにそれはどこまでも一方的。たくさんの愛を伝えてくれるのに俺には言わせてくれないのだから。でもそれはそれで兄の深い愛を感じられて心地がいい。
そんな兄に対する感情に気づいたのは実を言うとつい最近。俺の中で前世の記憶は最後の砦だったのだろう。あの日、前世の死を思い出してすぐは確かに家族としての愛情を兄に注いだ。兄が落ち着いてのその日以降は死ぬまでの道程が頭から消えない日々が続き、そんな日々の中である日自分が無意識にあの日から兄の傍を離れられずにいることに気づく。その気づきでようやくその感情を知るに至ったのだ。
家族以上で恋と言うにはまだ足りない、心深くに根付いてとれないほどの愛に。
今まで兄を怖い怖いと内心言いながら離れようとはせず、身内に悪役にさせないためなんて理由まで付けて本当に離れたくなかったのは自分だったのだと今更気づいたその感情はまさに《依存》という言葉が当てはまるだろう。
俺は無意識に兄に自分へ執着するように仕向けていたのかもしれない。自分の存在価値を見出だすために。兄を自分がどうしようもないときに寄りかかれる存在とするために。そんな自分勝手な理由でそう仕向け、無意識とはいえ偶然の産物すら手伝って結果はこの通りうまくいっている。
「もう……離せない」
「クウリ?何か言った?」
「ん?何も言ってないですよ?それより頭撫でるのやめないでほしいです。俺、今日テスト頑張ったんですから!兄さんも満点よくできました!」
くしゃくしゃと両手で兄の髪を乱雑に撫でることで誤魔化せば目の前には嬉しそうに微笑む兄の姿。
「ふふ、ごめんね?ありがとう」
また一度止めた手で俺の頭を撫でてくれる俺だけの兄。そんな今の兄を失くせば俺は前世のように躊躇いなく死を選ぶだろう。
ー作者よりコメントー
久々の2ページ更新!仕事休みなので頑張ってみました!
今回、ついに本性を現したクウリと言うべきでしょうか。兄のヤンデレが目立ち、本来最初から病んでいたのはクウリの方という……。
兄がいなければだめなのは実はクウリでしたね。
これから二人はどうなるのか、最後まで見守っていただけたら幸いです!
それでもあの時ようやく呪縛から解放されたようで死が救いになっていた。今考えると妹に対して罪悪感はあるし、その記憶が妹にあるかどうかわからないけどあるなら謝りたいとも思う。
ちなみに死ぬきっかけとなった記憶を思い出してあの時のように戻らず済むのは、何も今の俺からして前世だからそう深く考えずに済んでいるわけではない。
傍に、俺と同じ境遇で明らかに俺よりもすごい人がそれでも俺を褒めてくれている。なんなら意識を失う前は俺に気づかれないように裏から手助けすらして俺の努力を誰よりもわかった上で認めてくれてさえいた。そんな兄の言葉は決して適当に言ってるわけじゃないとわかるからこそおかしくならずに済む。
今思えば俺はクウリになるべくしてなったと思う。全てはレウルと会うために。
それからは何故か俺の方が兄から離れがたくなってしまった。前世のようにならないよう生きていくためには兄が必要だと、兄だけが救いだとどこかで感じているが故に。死にたい訳じゃない。けれど、記憶を思い出したことでまたあの不安に駆られそうで、生きることが怖くなりそうでたまらないのだ。
なのに兄が傍にいるだけで大丈夫と理由なく思える自分がいる。兄はあの日から俺の方から傍を離れないようにしていることに気づいているだろう。でも理由まで理解しているとは思わない。
とはいえ、兄は俺が傍にいようとするその行動を咎めはしないし、勉学や剣など厳しい面もあるがそれ以外は甘やかしてくれているのがわかるほどに声も、その言葉すらも、なんなら行動全てが俺に対して甘い。
その甘さは頭を撫で、抱き締め、触れるだけのキスを頬や額に降らせ
「クウリ、愛しているよ。私の愛はクウリだけに生涯捧げよう。誰よりも何よりも……クウリのためなら私は国を敵にしようとなんだってするから、このままずっと傍にいておくれ」
耳に響くようなうっとりとしたくなる声で言葉を囁く。
「うん……俺も兄さんのこと……」
「大丈夫、わかっているよ。それを聞くのはまだ早いんだ。今聞いてしまえば私は片付けるべきことすら忘れてクウリに狂ってしまう。だから全てを片付けたときにそれを聞かせて?」
なのにそれはどこまでも一方的。たくさんの愛を伝えてくれるのに俺には言わせてくれないのだから。でもそれはそれで兄の深い愛を感じられて心地がいい。
そんな兄に対する感情に気づいたのは実を言うとつい最近。俺の中で前世の記憶は最後の砦だったのだろう。あの日、前世の死を思い出してすぐは確かに家族としての愛情を兄に注いだ。兄が落ち着いてのその日以降は死ぬまでの道程が頭から消えない日々が続き、そんな日々の中である日自分が無意識にあの日から兄の傍を離れられずにいることに気づく。その気づきでようやくその感情を知るに至ったのだ。
家族以上で恋と言うにはまだ足りない、心深くに根付いてとれないほどの愛に。
今まで兄を怖い怖いと内心言いながら離れようとはせず、身内に悪役にさせないためなんて理由まで付けて本当に離れたくなかったのは自分だったのだと今更気づいたその感情はまさに《依存》という言葉が当てはまるだろう。
俺は無意識に兄に自分へ執着するように仕向けていたのかもしれない。自分の存在価値を見出だすために。兄を自分がどうしようもないときに寄りかかれる存在とするために。そんな自分勝手な理由でそう仕向け、無意識とはいえ偶然の産物すら手伝って結果はこの通りうまくいっている。
「もう……離せない」
「クウリ?何か言った?」
「ん?何も言ってないですよ?それより頭撫でるのやめないでほしいです。俺、今日テスト頑張ったんですから!兄さんも満点よくできました!」
くしゃくしゃと両手で兄の髪を乱雑に撫でることで誤魔化せば目の前には嬉しそうに微笑む兄の姿。
「ふふ、ごめんね?ありがとう」
また一度止めた手で俺の頭を撫でてくれる俺だけの兄。そんな今の兄を失くせば俺は前世のように躊躇いなく死を選ぶだろう。
ー作者よりコメントー
久々の2ページ更新!仕事休みなので頑張ってみました!
今回、ついに本性を現したクウリと言うべきでしょうか。兄のヤンデレが目立ち、本来最初から病んでいたのはクウリの方という……。
兄がいなければだめなのは実はクウリでしたね。
これから二人はどうなるのか、最後まで見守っていただけたら幸いです!
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