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本編(完結)
忘れていた記憶
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あの日、原因はわからずじまいだったけど兄の弱さを自覚したその時に俺はひとつの記憶を思い出していた。死んだ理由を。
前世死んだのだという認識はあったが、その理由までは思い出せないでいたのだ。くだらない理由で死んだ自分の末路を。
当時俺は……いや、俺たち家族は仲がよすぎるくらいによかった。他人よりも友達よりも、家族を優先するのは当たり前で家族以外の約束は破っても仕方ない……。それが当たり前だった。
でも他人からすればそれは異常で、その最初の餌食となったのは妹。
「もう、学校行きたくない」
それは妹が中学生にあがって間もない時。家族ばかりを優先する妹をおかしいと誰かが言ったのが始まりだったらしい。その日から妹はいじめを受け始めたのだ。それを耐えに耐えて俺たち家族が知った時には昔の明るい妹には陰りがあった。
何故すぐに家族に相談しなかったのか?それを聞けば俺たちに心配させたくなかったから。気づかれないように今まで明るく振る舞ってくれていたようだ。何より妹が小学校高学年になった辺りから両親が忙しく家に帰らなくなってきたせいもあっただろう。肝心の俺は受験シーズンで勉強に励んでいたため、それも妹に言いにくくさせていたに違いない。本人から聞いたわけではないけど。
家族に話した妹はその日から引きこもりとなった。それを親も俺も咎めはせず、様子を見ることに。勉強は復習がてらに俺が教えればいいという話になった。
けどここからさらなる不幸が……。妹が引き込もって5年、俺は大学へ通っていたその時。親が交通事故で亡くなったという電話が。
それはだんだんと明るさを取り戻しつつあった妹を狂わせた。しかし、それは妹だけでなく俺も。親が亡くなってから俺はすぐ大学をやめ妹の傍から離れなくなった。妹もそれは同じだ。大学をやめて就職すらせずそうしていられたのは共働きだった親の遺産のおかげ。だが、それが長く続かないのはわかっていた。
わかっていた、わかっていたけどそれでももう俺には家族が妹しかいないと思うと気が気でなかった。知らないところで親みたいに死んでしまったら?その恐怖が離れない。
それでも遺産はもしものときに残すべきだと自分に言い聞かせ、半年間妹との生活を得て就職を果たした。妹を養えるのは俺しかいないと自分を奮い立たせて。
しかし、それが死の運命が動き出す始まりだった。
「お疲れ様です!お先にしつれ……」
「おいおい、まだ仕事残ってんぞ!」
「え、でもそれ先輩の……」
「手伝えってんだよ!何?お前俺の言うこと聞けねぇの?親父に言ってクビにしてもらってもいいんだぜ?」
何故俺だったのかと今でも思う。就職した場所で俺は社長の息子である上司に目をつけられたその日から地獄が始まったのだから。
前世死んだのだという認識はあったが、その理由までは思い出せないでいたのだ。くだらない理由で死んだ自分の末路を。
当時俺は……いや、俺たち家族は仲がよすぎるくらいによかった。他人よりも友達よりも、家族を優先するのは当たり前で家族以外の約束は破っても仕方ない……。それが当たり前だった。
でも他人からすればそれは異常で、その最初の餌食となったのは妹。
「もう、学校行きたくない」
それは妹が中学生にあがって間もない時。家族ばかりを優先する妹をおかしいと誰かが言ったのが始まりだったらしい。その日から妹はいじめを受け始めたのだ。それを耐えに耐えて俺たち家族が知った時には昔の明るい妹には陰りがあった。
何故すぐに家族に相談しなかったのか?それを聞けば俺たちに心配させたくなかったから。気づかれないように今まで明るく振る舞ってくれていたようだ。何より妹が小学校高学年になった辺りから両親が忙しく家に帰らなくなってきたせいもあっただろう。肝心の俺は受験シーズンで勉強に励んでいたため、それも妹に言いにくくさせていたに違いない。本人から聞いたわけではないけど。
家族に話した妹はその日から引きこもりとなった。それを親も俺も咎めはせず、様子を見ることに。勉強は復習がてらに俺が教えればいいという話になった。
けどここからさらなる不幸が……。妹が引き込もって5年、俺は大学へ通っていたその時。親が交通事故で亡くなったという電話が。
それはだんだんと明るさを取り戻しつつあった妹を狂わせた。しかし、それは妹だけでなく俺も。親が亡くなってから俺はすぐ大学をやめ妹の傍から離れなくなった。妹もそれは同じだ。大学をやめて就職すらせずそうしていられたのは共働きだった親の遺産のおかげ。だが、それが長く続かないのはわかっていた。
わかっていた、わかっていたけどそれでももう俺には家族が妹しかいないと思うと気が気でなかった。知らないところで親みたいに死んでしまったら?その恐怖が離れない。
それでも遺産はもしものときに残すべきだと自分に言い聞かせ、半年間妹との生活を得て就職を果たした。妹を養えるのは俺しかいないと自分を奮い立たせて。
しかし、それが死の運命が動き出す始まりだった。
「お疲れ様です!お先にしつれ……」
「おいおい、まだ仕事残ってんぞ!」
「え、でもそれ先輩の……」
「手伝えってんだよ!何?お前俺の言うこと聞けねぇの?親父に言ってクビにしてもらってもいいんだぜ?」
何故俺だったのかと今でも思う。就職した場所で俺は社長の息子である上司に目をつけられたその日から地獄が始まったのだから。
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