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本編(完結)
疲労~レウル視点~
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「それで?どういうお話でしょうか?」
そう切り出したのは私を睨むシエルという伯爵家の息子。目を覚ましてから突然別人のようになったと聞いたときから、私はひとつの可能性を考えてはいた。その可能性も一度しか会ってないクウリに対する言葉を聞くことで確信を得るに至る。
その可能性とはあの忍者の末裔である彼と同じく前世を持つ人物。言葉の数々からあの『君と共に』を知る人物であること。
そして恐らくは前世の記憶を持つであろう前世のクウリの関係者。ただわからないのは『君と共に』の本来のヒロインであろうその存在。
今思えば少し前のあれは失態だった。ピンクすぎるからこそヒロインだと勝手に勘違いし、何故同じ中等部にいるのかと焦ってしまったから。どうあがいてもあれが言っていた可能性、強制力が働いているのかと。
クウリが奪われる。
そんな考えに囚われムキになった。結局は偽物だったようだけど、今思っても紛らわしく、クウリを自分のものと断言するようなあれは頭がおかしい。ヒロインでないと判断できたのはシエルの言った偽ヒロインという言葉のおかげ。
恐らくヒロインの姿を知っているからこそ言えたのだろう。そのヒロインの姿はシエルの隣にいる人物ではないかと考えている。彼女を見てクウリは確かに驚きを隠せなかったようだから。
ちなみに毒牙を沈めたシエルを男がご令嬢に暴行なんてと言って罰する気はない。ただ足を滑らすことなんてよくあることだからね。
思考を巡らせても次へは進めないので、そろそろシエルとやらの答えに答えよう。
「単刀直入に聞くけど、前世で今のクウリとはどんな関係だったのかな?」
クウリと離れている無駄な時間はできるだけ省くべきものとして確信をついた質問からする。思わぬ質問だったのか、驚いたように目を見開いたシエル。
「まさか貴方も前世の記憶があるの?」
思わず自分の言葉が出るほどに動揺しているようだ。質問しているのは私だけれど、前世の記憶持ちが気になるのは仕方ないかもしれない。あえて、あると答えてもいいけれどどうしたものかな。
「お二人は何を言って……?」
「ハナちゃんは気にしないで?これは私と殿下とのお話だから」
「シエルちゃんがそう言うなら……」
そんな中理解できないとばかりのピンク嬢の言葉は彼女に前世の記憶がないことがわかる。それだけでもひとつの収穫だろう。随分とシエルに従順な様子が気になるけど、記憶がないならやりようはある。
あの様子から見て、今のクウリがピンク嬢に惹かれるとは思えないしね。ある意味ピンクすぎて別の意味で目がいくことはあるかもしれないけど。
「今のクウリとの関係は私が妹で、クウリがお兄ちゃんだったのよ」
どうやら返事をしない私に前世の記憶があると勝手に判断し、勝手に気を許した様子で質問を答え出す。まあ今は周囲に人もいないし、タメ口を使うななんて言わないけどね。話し方なんて正直どうでもいい。でもそれとは別に警戒心解かすの早すぎないかな?と思わなくもない。
例え前世の記憶が私にあったとしても味方とは限らないのに。実際はないけどね、記憶。向こうが勝手に勘違いしただけ。
どちらにしろクウリの元妹なら……クウリもクウリでちょっとあれなところがあるから変に思い込んで警戒心なくしても納得かな。クウリと似てる部分があると思うと少し腹が立つけど。今は私の弟なのに。
「え、シエルちゃん、お姫様なの!?」
「ハナちゃん、何か勘違いしてるけど、まず私はこんな口調だけど男よ」
「そうだったね!あれ、でも、シエルちゃん、殿下の妹って……」
「気になるならもう耳塞いでなさい。貴女は私よりバカなんだから」
「うん!」
私の周りにはバカしか集まらないのかな?私が考え込んでいる間に漫才を始めた二人。しばらくその漫才を見せられた私はもはや腹が立ったことすらどうでもよくなった。シエルはともかく、ピンク嬢はまともだと最初こそ思ったけどあの偽と比べてしまえば誰だってまともに見えるものだと今更気づく。
なんならシエルは自分がバカだと認めているし、ピンク嬢に関しては自分以下のバカ認定をしている。本人は頷いてるし……。そう言えばクウリも確か自分が頭弱いと認めていたっけ?自覚あるおバカさんが多いことで……。喜べないからね、これ。
とりあえず自覚ないバカよりかは自覚ある方がいいかもしれないけど、クウリ以外のバカを見てもちっとも心が動かない。バカ可愛いのはクウリだけで十分だからバカの披露漫才はやめてくれないかな、本当。
そう切り出したのは私を睨むシエルという伯爵家の息子。目を覚ましてから突然別人のようになったと聞いたときから、私はひとつの可能性を考えてはいた。その可能性も一度しか会ってないクウリに対する言葉を聞くことで確信を得るに至る。
その可能性とはあの忍者の末裔である彼と同じく前世を持つ人物。言葉の数々からあの『君と共に』を知る人物であること。
そして恐らくは前世の記憶を持つであろう前世のクウリの関係者。ただわからないのは『君と共に』の本来のヒロインであろうその存在。
今思えば少し前のあれは失態だった。ピンクすぎるからこそヒロインだと勝手に勘違いし、何故同じ中等部にいるのかと焦ってしまったから。どうあがいてもあれが言っていた可能性、強制力が働いているのかと。
クウリが奪われる。
そんな考えに囚われムキになった。結局は偽物だったようだけど、今思っても紛らわしく、クウリを自分のものと断言するようなあれは頭がおかしい。ヒロインでないと判断できたのはシエルの言った偽ヒロインという言葉のおかげ。
恐らくヒロインの姿を知っているからこそ言えたのだろう。そのヒロインの姿はシエルの隣にいる人物ではないかと考えている。彼女を見てクウリは確かに驚きを隠せなかったようだから。
ちなみに毒牙を沈めたシエルを男がご令嬢に暴行なんてと言って罰する気はない。ただ足を滑らすことなんてよくあることだからね。
思考を巡らせても次へは進めないので、そろそろシエルとやらの答えに答えよう。
「単刀直入に聞くけど、前世で今のクウリとはどんな関係だったのかな?」
クウリと離れている無駄な時間はできるだけ省くべきものとして確信をついた質問からする。思わぬ質問だったのか、驚いたように目を見開いたシエル。
「まさか貴方も前世の記憶があるの?」
思わず自分の言葉が出るほどに動揺しているようだ。質問しているのは私だけれど、前世の記憶持ちが気になるのは仕方ないかもしれない。あえて、あると答えてもいいけれどどうしたものかな。
「お二人は何を言って……?」
「ハナちゃんは気にしないで?これは私と殿下とのお話だから」
「シエルちゃんがそう言うなら……」
そんな中理解できないとばかりのピンク嬢の言葉は彼女に前世の記憶がないことがわかる。それだけでもひとつの収穫だろう。随分とシエルに従順な様子が気になるけど、記憶がないならやりようはある。
あの様子から見て、今のクウリがピンク嬢に惹かれるとは思えないしね。ある意味ピンクすぎて別の意味で目がいくことはあるかもしれないけど。
「今のクウリとの関係は私が妹で、クウリがお兄ちゃんだったのよ」
どうやら返事をしない私に前世の記憶があると勝手に判断し、勝手に気を許した様子で質問を答え出す。まあ今は周囲に人もいないし、タメ口を使うななんて言わないけどね。話し方なんて正直どうでもいい。でもそれとは別に警戒心解かすの早すぎないかな?と思わなくもない。
例え前世の記憶が私にあったとしても味方とは限らないのに。実際はないけどね、記憶。向こうが勝手に勘違いしただけ。
どちらにしろクウリの元妹なら……クウリもクウリでちょっとあれなところがあるから変に思い込んで警戒心なくしても納得かな。クウリと似てる部分があると思うと少し腹が立つけど。今は私の弟なのに。
「え、シエルちゃん、お姫様なの!?」
「ハナちゃん、何か勘違いしてるけど、まず私はこんな口調だけど男よ」
「そうだったね!あれ、でも、シエルちゃん、殿下の妹って……」
「気になるならもう耳塞いでなさい。貴女は私よりバカなんだから」
「うん!」
私の周りにはバカしか集まらないのかな?私が考え込んでいる間に漫才を始めた二人。しばらくその漫才を見せられた私はもはや腹が立ったことすらどうでもよくなった。シエルはともかく、ピンク嬢はまともだと最初こそ思ったけどあの偽と比べてしまえば誰だってまともに見えるものだと今更気づく。
なんならシエルは自分がバカだと認めているし、ピンク嬢に関しては自分以下のバカ認定をしている。本人は頷いてるし……。そう言えばクウリも確か自分が頭弱いと認めていたっけ?自覚あるおバカさんが多いことで……。喜べないからね、これ。
とりあえず自覚ないバカよりかは自覚ある方がいいかもしれないけど、クウリ以外のバカを見てもちっとも心が動かない。バカ可愛いのはクウリだけで十分だからバカの披露漫才はやめてくれないかな、本当。
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