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本編裏側外伝(※本編のメインキャラに関わった人たちの心情話です)
医師の意思~医師視点~(本編密着24時間宣言?をお読みになった後読んでください)
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さて突然だが、私は自分で言うのもなんだが王宮に勤められるほどのベテラン医師だ。これは私にとって誇るべきだと常々思っている。思ってはいるがそろそろ真剣に誰かに代わってもらいたい。
そう考え始めたのはこの国の第一王子で在らせられるレウル殿下が怖いから。子供相手に情けないと言われようがあれは子供と侮れば痛い目をみる。私にはわかる。
しかし、最初からそう思っていた訳じゃない。始めの違和感はクウリ殿下が倒れたとき。診察は私がしていたのだが、妙に視線を感じた気がした。でもそれは突然倒れたクウリ殿下を心配した視線だと思い、気に止めることはなかった。
その次も異常はないのに目を覚まさないクウリ殿下を診察した私。その際も視線を感じたが、異常がないのに目が覚まさないクウリ殿下が心配になるのも当然と気にしなかった。
三回目、視線が妙に痛々しく感じる。私の診察が疑われているのかもしれないと焦り、ちらりと視線を向ければ視線の正体はレウル殿下だと知った。クウリ殿下を見守る侍女たちが心配する様子もあったが、私に痛いほど視線を向けるのはレウル殿下だけ。まさか疑われてる?と嘘を吐いていないのに冷や汗が流れる。
四回目、視線を感じない。気になって振り向いて見てみればクウリ殿下をじっと見ているように思えた。何を考えてるかわからない真顔で。これはこれで怖い。
五回目、またクウリ殿下に目を向けている。次はほんのりと笑って……真顔よりも恐ろしかった。まるでクウリ殿下以外見えていないとばかりのそれは。
六回目、ついにレウル殿下がぶつぶつと言い始めた。まさか私の文句を?とクウリ殿下を診察しながら聞き耳を立てる。
「クウリクウリクウリクウリクウリ……」
もはや診察が必要なのはレウル殿下ではないだろうか?普通に怖い。
七回目、またぶつぶつ言っている。気のせいか侍女の数が減りつつある気がした。やめとけばいいのにまた聞き耳を立ててしまう私。その内医師やめさせられないかなという不安故に。だって異常はないのだからどうしようもない。
「クウリに触ったら殺さないと……殺す殺す殺す殺す」
医師やめさせられる以前の問題だった。あの笑みを浮かべた穏やかなレウル殿下はどこへ。手を出さないだけ理性はあると判断する。なかったら既にこの世にいないからね、私。
八回目、九回目、十回目……診察に行く度に殺意を向けられ医師の大変さが身に染みる。でも私はこれが仕事だからどうしようもない。それをわかっているからレウル殿下も言葉だけに留めているのだろう。できれば言葉も自重していただきたい。
「レウル殿下、少しばかりお疲れのようです。診察いたしませんか?」
さすがに見かねて勇気を出して言った私。レウル殿下の理性がある内に精神面のケアが必要だと判断した。
「私は大丈夫です。今はクウリのことしか考えていませんし」
大丈夫どころか末期である。クウリ殿下を心配しすぎておかしくなってしまったのだろうか?そう思ったのは一瞬だった。
「クウリ以外のこと考えたくないんですよ。だからね、先生」
違う、そうじゃない。そう瞬時に思えるほどに鋭い目で私を見つめる殿下に、思わず後ずさりをしてしまう。
「邪魔、しないで」
止めとばかりのこの言葉に、この方はわかっていてこうなのだ。そう理解するのは簡単だった。
「心配しなくてもクウリを私から奪わなければ殺しはしないから……ね?」
さらに追い討ちをかける言葉。これは私ではどうしようもできないことを悟らされた。それと共にレウル殿下に対する恐怖も植え付けられたのだろう。それからは診察の度に殺されないとわかっているのにそれでも身体が震えるようになった診察の時間。
寧ろ私が病みそうだと思っていた矢先のクウリ殿下の目覚め。恐らくクウリ殿下が目を覚まして一番喜んだのは私だと断言できる。何せ怯える日々から解放されるのだから。
そういうわけでだからこそできれば次が来る前に是非王宮医師を誰かに譲りたいと思う。子供に怯える情けない医師と言われても構わないから………切実に。
裏側外伝医師の意思~END~
ー作者よりコメントー
登場こそした医師ですが、やっとの外伝登場ですら一言しか話せないという。本当はクウリの診察をした次ページに書く予定だったんですが……本編優先しました。
頭打った最初に出た医師もこの方です。
これを気に、本編に関わる周囲の心情番外編を新たに作ります。
そう考え始めたのはこの国の第一王子で在らせられるレウル殿下が怖いから。子供相手に情けないと言われようがあれは子供と侮れば痛い目をみる。私にはわかる。
しかし、最初からそう思っていた訳じゃない。始めの違和感はクウリ殿下が倒れたとき。診察は私がしていたのだが、妙に視線を感じた気がした。でもそれは突然倒れたクウリ殿下を心配した視線だと思い、気に止めることはなかった。
その次も異常はないのに目を覚まさないクウリ殿下を診察した私。その際も視線を感じたが、異常がないのに目が覚まさないクウリ殿下が心配になるのも当然と気にしなかった。
三回目、視線が妙に痛々しく感じる。私の診察が疑われているのかもしれないと焦り、ちらりと視線を向ければ視線の正体はレウル殿下だと知った。クウリ殿下を見守る侍女たちが心配する様子もあったが、私に痛いほど視線を向けるのはレウル殿下だけ。まさか疑われてる?と嘘を吐いていないのに冷や汗が流れる。
四回目、視線を感じない。気になって振り向いて見てみればクウリ殿下をじっと見ているように思えた。何を考えてるかわからない真顔で。これはこれで怖い。
五回目、またクウリ殿下に目を向けている。次はほんのりと笑って……真顔よりも恐ろしかった。まるでクウリ殿下以外見えていないとばかりのそれは。
六回目、ついにレウル殿下がぶつぶつと言い始めた。まさか私の文句を?とクウリ殿下を診察しながら聞き耳を立てる。
「クウリクウリクウリクウリクウリ……」
もはや診察が必要なのはレウル殿下ではないだろうか?普通に怖い。
七回目、またぶつぶつ言っている。気のせいか侍女の数が減りつつある気がした。やめとけばいいのにまた聞き耳を立ててしまう私。その内医師やめさせられないかなという不安故に。だって異常はないのだからどうしようもない。
「クウリに触ったら殺さないと……殺す殺す殺す殺す」
医師やめさせられる以前の問題だった。あの笑みを浮かべた穏やかなレウル殿下はどこへ。手を出さないだけ理性はあると判断する。なかったら既にこの世にいないからね、私。
八回目、九回目、十回目……診察に行く度に殺意を向けられ医師の大変さが身に染みる。でも私はこれが仕事だからどうしようもない。それをわかっているからレウル殿下も言葉だけに留めているのだろう。できれば言葉も自重していただきたい。
「レウル殿下、少しばかりお疲れのようです。診察いたしませんか?」
さすがに見かねて勇気を出して言った私。レウル殿下の理性がある内に精神面のケアが必要だと判断した。
「私は大丈夫です。今はクウリのことしか考えていませんし」
大丈夫どころか末期である。クウリ殿下を心配しすぎておかしくなってしまったのだろうか?そう思ったのは一瞬だった。
「クウリ以外のこと考えたくないんですよ。だからね、先生」
違う、そうじゃない。そう瞬時に思えるほどに鋭い目で私を見つめる殿下に、思わず後ずさりをしてしまう。
「邪魔、しないで」
止めとばかりのこの言葉に、この方はわかっていてこうなのだ。そう理解するのは簡単だった。
「心配しなくてもクウリを私から奪わなければ殺しはしないから……ね?」
さらに追い討ちをかける言葉。これは私ではどうしようもできないことを悟らされた。それと共にレウル殿下に対する恐怖も植え付けられたのだろう。それからは診察の度に殺されないとわかっているのにそれでも身体が震えるようになった診察の時間。
寧ろ私が病みそうだと思っていた矢先のクウリ殿下の目覚め。恐らくクウリ殿下が目を覚まして一番喜んだのは私だと断言できる。何せ怯える日々から解放されるのだから。
そういうわけでだからこそできれば次が来る前に是非王宮医師を誰かに譲りたいと思う。子供に怯える情けない医師と言われても構わないから………切実に。
裏側外伝医師の意思~END~
ー作者よりコメントー
登場こそした医師ですが、やっとの外伝登場ですら一言しか話せないという。本当はクウリの診察をした次ページに書く予定だったんですが……本編優先しました。
頭打った最初に出た医師もこの方です。
これを気に、本編に関わる周囲の心情番外編を新たに作ります。
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