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本編(完結)
その頃の伯爵毛~シエル視点~
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あの日、クウリ様に出会った日から4年。長い眠りについていた私はようやく目を覚ます。
気を失ってから眠っている間、私は本来この世界にいるべきシエルと対話をして記憶と感情を引き継いでいた。ゲームと同じ話を辿る前のものすらも含めて。
『クウリ様を何度繰り返しても俺じゃ助けられなかった。あの方の気持ちを誰よりも知っていたってぇのに』
対話で聞いた本当のシエルの言葉は目を覚ましても酷く頭にこびりつくようにして離れない。何せその言葉は前世の私を思い出させたから。今思えば、私が女性でありながら男のシエルとして人生を再出発したのは似ている部分があったからかもしれない。
『なんで私は助けられなかったの?お兄ちゃんのこと誰よりも知ってたのに……っうあぁ……っ』
誰よりも守りたい人を誰よりも理解していると自負しながら助けられなかった気持ち。それはなくならない後悔と悲しみと苦しみしか残らない生き地獄に近い辛さ。シエルのことはどれも理解できるものだった。立場は違えど。
だからだろう。シエルとの対話と受け継がれた記憶らは繰り返してなるものかと強く私を奮い立たせた。それは自分を抑えるものすらも捨ててしまうほどに。
「パパ、私強くなりたいの!」
目が覚めてから一週間ほどでシエルの驚異の回復力により枯れていた声も復活し、ベッドから出て走り回れるほどになった。さすがゲームで脳筋キャラを務めていただけはある。関係あるかはわからないけれど。
どちらにしろシエルの身体能力を利用しない手はないと今の父に詰め寄ることにした。
「パパ!?」
「私クウリ様の騎士になるわ!」
「し、シエルがまるで女性のような言葉遣いを……っ」
しかし、返答はない。父は急なパパ呼びに目を丸くし、母は私の高い声と言葉遣いを信じたくないとばかりによろめく。返答どころじゃないとばかりに。まあ声が枯れて話せなかった一週間、ようやく話した第一声がこれだものね。
でも、そんな親を見ても私は口調などの私らしさを変える気はない。本当のシエルに会うまでずっとシエルである確証がなかったからいつ戻ってもいいようにシエルであろうとしたけれど、シエルは例え中身が私の兄でもクウリ様が幸せになるならそれでいいと、もう繰り返し生きるつもりはないとも言っていた。
ならば私は私らしく生きたい。人の真似事なんてそれだけで疲れるのだから。何せ元は女なのだから男の真似事なんて余計に……ね?
「ど、どうしたんだ、シエル?」
「そうね、いきなりだもの。パパもママも混乱するわよね。私今まで自分を抑えてきたの……。身体は男、だけど中身は女。もちろん公式の場では今まで通りするわ。でもそれ以外は私、自分らしくありたいのよ……」
「これは夢か……?」
「シエルが、シエルが壊れてしまったわ……ああ……っ」
「パパ、ママ!?」
それほどにショック、もしくは現実を受け入れられなかったのか親二人仲良く倒れてしまう。これには私と使用人たち共に慌てて二人をベッドのある場所へと運び、頭を打っていたら大変なので医師を呼んだりとその日は慌ただしい日となってしまった。
そこまでなる?というのが私の意見だけれど、前世みたいにこの世界にはそういった事例がないのかもしれない。
後日、騎士になるための本格的な指導者についてはつけてもらえることに。ついでに余談としてそれを許可してくれた父は前の方から大きくハゲ化が進み、隣で弱々しく笑って見ていた母は髪が白く染まってしまっていた。
これほどの変化をしながら、それでもシエルを見放さないでいてくれる二人は素晴らしい両親だと私は思う。
-お知らせ※最後一言に重大なお知らせあり※-
頑張っちゃいました。明日は休みなのでお知らせ削除済み。明日0時更新可能です。12時は未定。
※重大なお知らせ……小タイトル『その頃の伯爵毛』は誤字ではありません。
気を失ってから眠っている間、私は本来この世界にいるべきシエルと対話をして記憶と感情を引き継いでいた。ゲームと同じ話を辿る前のものすらも含めて。
『クウリ様を何度繰り返しても俺じゃ助けられなかった。あの方の気持ちを誰よりも知っていたってぇのに』
対話で聞いた本当のシエルの言葉は目を覚ましても酷く頭にこびりつくようにして離れない。何せその言葉は前世の私を思い出させたから。今思えば、私が女性でありながら男のシエルとして人生を再出発したのは似ている部分があったからかもしれない。
『なんで私は助けられなかったの?お兄ちゃんのこと誰よりも知ってたのに……っうあぁ……っ』
誰よりも守りたい人を誰よりも理解していると自負しながら助けられなかった気持ち。それはなくならない後悔と悲しみと苦しみしか残らない生き地獄に近い辛さ。シエルのことはどれも理解できるものだった。立場は違えど。
だからだろう。シエルとの対話と受け継がれた記憶らは繰り返してなるものかと強く私を奮い立たせた。それは自分を抑えるものすらも捨ててしまうほどに。
「パパ、私強くなりたいの!」
目が覚めてから一週間ほどでシエルの驚異の回復力により枯れていた声も復活し、ベッドから出て走り回れるほどになった。さすがゲームで脳筋キャラを務めていただけはある。関係あるかはわからないけれど。
どちらにしろシエルの身体能力を利用しない手はないと今の父に詰め寄ることにした。
「パパ!?」
「私クウリ様の騎士になるわ!」
「し、シエルがまるで女性のような言葉遣いを……っ」
しかし、返答はない。父は急なパパ呼びに目を丸くし、母は私の高い声と言葉遣いを信じたくないとばかりによろめく。返答どころじゃないとばかりに。まあ声が枯れて話せなかった一週間、ようやく話した第一声がこれだものね。
でも、そんな親を見ても私は口調などの私らしさを変える気はない。本当のシエルに会うまでずっとシエルである確証がなかったからいつ戻ってもいいようにシエルであろうとしたけれど、シエルは例え中身が私の兄でもクウリ様が幸せになるならそれでいいと、もう繰り返し生きるつもりはないとも言っていた。
ならば私は私らしく生きたい。人の真似事なんてそれだけで疲れるのだから。何せ元は女なのだから男の真似事なんて余計に……ね?
「ど、どうしたんだ、シエル?」
「そうね、いきなりだもの。パパもママも混乱するわよね。私今まで自分を抑えてきたの……。身体は男、だけど中身は女。もちろん公式の場では今まで通りするわ。でもそれ以外は私、自分らしくありたいのよ……」
「これは夢か……?」
「シエルが、シエルが壊れてしまったわ……ああ……っ」
「パパ、ママ!?」
それほどにショック、もしくは現実を受け入れられなかったのか親二人仲良く倒れてしまう。これには私と使用人たち共に慌てて二人をベッドのある場所へと運び、頭を打っていたら大変なので医師を呼んだりとその日は慌ただしい日となってしまった。
そこまでなる?というのが私の意見だけれど、前世みたいにこの世界にはそういった事例がないのかもしれない。
後日、騎士になるための本格的な指導者についてはつけてもらえることに。ついでに余談としてそれを許可してくれた父は前の方から大きくハゲ化が進み、隣で弱々しく笑って見ていた母は髪が白く染まってしまっていた。
これほどの変化をしながら、それでもシエルを見放さないでいてくれる二人は素晴らしい両親だと私は思う。
-お知らせ※最後一言に重大なお知らせあり※-
頑張っちゃいました。明日は休みなのでお知らせ削除済み。明日0時更新可能です。12時は未定。
※重大なお知らせ……小タイトル『その頃の伯爵毛』は誤字ではありません。
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