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本編(完結)
クウリ~レウル視点~
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クウリが目を覚まさない。あの日、クウリとシエルという伯爵のご子息が倒れたパーティーはもしや毒か暗殺かとパニックになった。
もちろんすぐにクウリたちは城内にある救護室へ運び込まれ、料理や飲み物には検査が入り、それらを口に含んだ者たちには一応高位貴族を優先に診察が入ったりと大忙し。そのためクウリの誕生日は無事を確認後自然と幕を閉じることに。何にしても主役がいないのだから仕方ない。
無事を確認は言葉通りで、特に毒や暗殺の可能性はなく二人の体に異常はないと判断された。けれど、それからというものの目を覚ます気配が一向にない。シエルという少年も伯爵家の屋敷に届けられたものの同じくして目を覚まさないと聞く。
あの日から私は今まで以上に業務等に励み、暇さえあればクウリの傍にいるようにしている。今日もまたクウリの目が覚めないかと願いながら、ふとクウリに期待するようになった自分の過去を振り返った。
それはまだクウリを国のための物としか考えていなかった時に遡る。
『殿下はまるで人の心をお読みになっているかのように聡いですなぁ!』
そんなバカなことを言う貴族がいた。その言葉に私は心なんて読めるはずないでしょと心の中でバカにしたものだ。
顔の表情や仕草、目や口許、どこかしらに目を向けて会話の流れで自然と探せば何が嘘で本当か、必要な知識さえあれば何が目的か、何を求めているかくらいすぐにわかるようなことだったのだから。
それに呆れていれば似たような人はいくらでもいるということだろう。またもや呆れるようなことを言われる。
『殿下は神童です!常に先をお読みになられるなんてまるで神の使いですね!』
これまたお伽話みたいな存在になった覚えもないのになんだろうね?これは。情報と知識さえあれば先を読むことは誰だってできることじゃないか。否定することすら疲れそうなそんなことばかり。
最初に誰が言ったかなんてもう忘れたくらいに言われ続けた言葉。私からすればこんなことも大人なのにわからないの?と周囲が私の成果を褒める度に私は表面では笑えていても、心の中は冷めていくばかりだった。
それを変えてくれたのはクウリ。
私にとってクウリは唯一読めない人間だった。クウリの対抗心だとか嫌われているのは理解していたけど、私が嫌いなのにほぼ毎日勝負を仕掛けてきて負けても負けても来るため、私に勝っても誰も気にしないだろうにこんなことをして何か意味があるの?と疑問ばかりが浮かんだのはクウリが初めてで、何度もしている内に自分が楽しんでいることに気づく。それは勝負をするごとにクウリは確かに上達していていたから。
そして勝負が日常化した辺りからクウリの教育に教師を使ってクウリの知らないところでクウリの苦手分野をサポートすることにも手をつけた。正直これに関しては気まぐれだったと思う。
その気まぐれにクウリは勝負の中で苦手分野を克服し成長する姿を見せてくれたのだ。それに気づくのは簡単で、その日の計算テスト勝負に勝った後私は無意識に言葉が出た。
「よく頑張ったね。凡ミスはあるけれど、この難しい問題ちゃんと解けてる。すごいね、クウリ」
それはクウリを褒める言葉。私が初めて人を褒めた瞬間だ。
「ほほ、ほめらても、う、うれしくなんてないからっ!」
それを聞いた私を嫌っているクウリは、顔を真っ赤にしてそう言いながら去ってしまった。しかし、それが妙に癖になりクウリの教育に裏から口出すのも日常のひとつとなった私は意外にも単純なのかもしれない。さらにはクウリに著しく努力の結果が垣間見れたら必ず褒めるようにもなった。
もしかしたらクウリならと期待したのはこの時からだろう。クウリなら未来永劫このどうしようもない人類ばかりの世界で、私の孤独を癒す存在になると……そう願わずにはいられなかった。
もちろんすぐにクウリたちは城内にある救護室へ運び込まれ、料理や飲み物には検査が入り、それらを口に含んだ者たちには一応高位貴族を優先に診察が入ったりと大忙し。そのためクウリの誕生日は無事を確認後自然と幕を閉じることに。何にしても主役がいないのだから仕方ない。
無事を確認は言葉通りで、特に毒や暗殺の可能性はなく二人の体に異常はないと判断された。けれど、それからというものの目を覚ます気配が一向にない。シエルという少年も伯爵家の屋敷に届けられたものの同じくして目を覚まさないと聞く。
あの日から私は今まで以上に業務等に励み、暇さえあればクウリの傍にいるようにしている。今日もまたクウリの目が覚めないかと願いながら、ふとクウリに期待するようになった自分の過去を振り返った。
それはまだクウリを国のための物としか考えていなかった時に遡る。
『殿下はまるで人の心をお読みになっているかのように聡いですなぁ!』
そんなバカなことを言う貴族がいた。その言葉に私は心なんて読めるはずないでしょと心の中でバカにしたものだ。
顔の表情や仕草、目や口許、どこかしらに目を向けて会話の流れで自然と探せば何が嘘で本当か、必要な知識さえあれば何が目的か、何を求めているかくらいすぐにわかるようなことだったのだから。
それに呆れていれば似たような人はいくらでもいるということだろう。またもや呆れるようなことを言われる。
『殿下は神童です!常に先をお読みになられるなんてまるで神の使いですね!』
これまたお伽話みたいな存在になった覚えもないのになんだろうね?これは。情報と知識さえあれば先を読むことは誰だってできることじゃないか。否定することすら疲れそうなそんなことばかり。
最初に誰が言ったかなんてもう忘れたくらいに言われ続けた言葉。私からすればこんなことも大人なのにわからないの?と周囲が私の成果を褒める度に私は表面では笑えていても、心の中は冷めていくばかりだった。
それを変えてくれたのはクウリ。
私にとってクウリは唯一読めない人間だった。クウリの対抗心だとか嫌われているのは理解していたけど、私が嫌いなのにほぼ毎日勝負を仕掛けてきて負けても負けても来るため、私に勝っても誰も気にしないだろうにこんなことをして何か意味があるの?と疑問ばかりが浮かんだのはクウリが初めてで、何度もしている内に自分が楽しんでいることに気づく。それは勝負をするごとにクウリは確かに上達していていたから。
そして勝負が日常化した辺りからクウリの教育に教師を使ってクウリの知らないところでクウリの苦手分野をサポートすることにも手をつけた。正直これに関しては気まぐれだったと思う。
その気まぐれにクウリは勝負の中で苦手分野を克服し成長する姿を見せてくれたのだ。それに気づくのは簡単で、その日の計算テスト勝負に勝った後私は無意識に言葉が出た。
「よく頑張ったね。凡ミスはあるけれど、この難しい問題ちゃんと解けてる。すごいね、クウリ」
それはクウリを褒める言葉。私が初めて人を褒めた瞬間だ。
「ほほ、ほめらても、う、うれしくなんてないからっ!」
それを聞いた私を嫌っているクウリは、顔を真っ赤にしてそう言いながら去ってしまった。しかし、それが妙に癖になりクウリの教育に裏から口出すのも日常のひとつとなった私は意外にも単純なのかもしれない。さらにはクウリに著しく努力の結果が垣間見れたら必ず褒めるようにもなった。
もしかしたらクウリならと期待したのはこの時からだろう。クウリなら未来永劫このどうしようもない人類ばかりの世界で、私の孤独を癒す存在になると……そう願わずにはいられなかった。
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