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本編(完結)
期待
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それはある日の勉強時間。俺は先日のことで今後どう動くべきか全くわからずにいた。あくまでわかったのは別に勝負をせずとも兄に会う時間をつくれば、兄が不機嫌にならないこと。構ってちゃんか!と思ったもののならばあの日、兄に構い倒すと言った俺に兄が何に対して苛立ちを覚えたのかわからない。
何がどう考えれば媚びると思われてしまうのか。
『あの大人たちや親の言いなりの子供らと同じようになるつもりかと聞いているんだよ』
ここにヒントがある気がしたけど、どんな大人を指して何が兄にとって許せない同じになるのかが全くわからないのだ。
「集中できませんか?殿下」
「あ、すみません」
考えすぎて勉強時間に上の空になっていたのだろう。いつもなら兄にいつか勝つためと頑張る俺が急にこうなれば教師も怪訝に思っても仕方ない。
「何か悩みごとでも?」
そう聞いてくれたのはやはり明らかにいつもと違う俺を気遣ってくれたのがわかる。もういっそのこと誰かに相談した方が解決できるのでは?と考えた俺は教師に聞いてもらうことにした。
「それが前兄さんを怒らせたことがあり、何を怒らせたのかと自分なりに考えて行動したんです。結果的に許してもらえたと思うんですが先日兄さんと話してて自分が怒らせた原因は自分が考えていたものと違ったことに気づいて、それが何か考えてたんですけど全くわからなくて……」
「なるほど。その時何をして怒らせたんです?」
「えっと……」
その時の会話を思い出しながら無駄なことは省きつつ兄を怒らせただろう会話を話せば教師は心当たりがあるのか笑みを溢す。え?笑う要素あった?と思ってしまったのは俺が兄を理解しきれてない証拠だろう。
「そういえば私どもからしましたら当たり前のことで殿下は知らないのでしたね」
「え?」
「第一王子殿下はいつも勉強時間の最後に殿下がどこまでやれて躓いているか聞いてくるのが日課なんです。教師である私が恥ずかしい話、殿下が躓いている部分をいつも教えているやり方は第一王子である殿下の教えなんですよ。こうすれば殿下も理解できるはずだと。教師だというのにあの方には勉強させられてばかりです」
「そうだったんだ……。兄さんが……」
思わぬところで兄からの助力を知った。直接教えてくれればと思うものの以前対抗心を燃やしていたクウリが素直に教えを受け入れるとは思えないし、やり方として間違ってはないと考え直す。
「殿下ができたことを報告すると雰囲気がいつも和らぐんですよ。なんとなくですけど、第一王子殿下は殿下に期待してるんじゃないですかね?」
「期待?」
「いつか自分と並び立つ存在になるんじゃないかと。きっと怒ったのは殿下自身がその可能性を潰そうとし、期待を裏切られる気持ちだったんじゃないですか?」
「あ……」
『優秀な兄さんと並ぼうとするのがまず間違いだったと俺は気づいたんです!』
確かにあの時俺はこう言った。兄がクウリの努力を援助し、将来を期待していたにも関わらず俺の軽はずみな言動で兄の本当の希望すら打ち砕こうとしていた。つまりは勝負でなくとも何事も努力して兄に追い付こうとするその過程さえあれば兄はよかったわけだ。
ついでに兄に構う時間もつくって……。
わかりづらい!わかりづらいよ!でもとりあえず今までの努力は無駄ではないことだけはわかったためよしとすべきだろう。こうして俺はあの日兄の不機嫌になった理由を今一度理解し直したのだった。ある意味考え方としてはどちらにしろ兄と同じくらい優秀にならなければいけない難易度は変わらないわけだが。俺に救いはないのか、救いは。でもバカだと認定されたわけだし、少しくらいは……と言っても多分そういうことじゃないのは自分でわかっている。
その日、それから勉強にようやく集中できたのは言うまでもない。
何がどう考えれば媚びると思われてしまうのか。
『あの大人たちや親の言いなりの子供らと同じようになるつもりかと聞いているんだよ』
ここにヒントがある気がしたけど、どんな大人を指して何が兄にとって許せない同じになるのかが全くわからないのだ。
「集中できませんか?殿下」
「あ、すみません」
考えすぎて勉強時間に上の空になっていたのだろう。いつもなら兄にいつか勝つためと頑張る俺が急にこうなれば教師も怪訝に思っても仕方ない。
「何か悩みごとでも?」
そう聞いてくれたのはやはり明らかにいつもと違う俺を気遣ってくれたのがわかる。もういっそのこと誰かに相談した方が解決できるのでは?と考えた俺は教師に聞いてもらうことにした。
「それが前兄さんを怒らせたことがあり、何を怒らせたのかと自分なりに考えて行動したんです。結果的に許してもらえたと思うんですが先日兄さんと話してて自分が怒らせた原因は自分が考えていたものと違ったことに気づいて、それが何か考えてたんですけど全くわからなくて……」
「なるほど。その時何をして怒らせたんです?」
「えっと……」
その時の会話を思い出しながら無駄なことは省きつつ兄を怒らせただろう会話を話せば教師は心当たりがあるのか笑みを溢す。え?笑う要素あった?と思ってしまったのは俺が兄を理解しきれてない証拠だろう。
「そういえば私どもからしましたら当たり前のことで殿下は知らないのでしたね」
「え?」
「第一王子殿下はいつも勉強時間の最後に殿下がどこまでやれて躓いているか聞いてくるのが日課なんです。教師である私が恥ずかしい話、殿下が躓いている部分をいつも教えているやり方は第一王子である殿下の教えなんですよ。こうすれば殿下も理解できるはずだと。教師だというのにあの方には勉強させられてばかりです」
「そうだったんだ……。兄さんが……」
思わぬところで兄からの助力を知った。直接教えてくれればと思うものの以前対抗心を燃やしていたクウリが素直に教えを受け入れるとは思えないし、やり方として間違ってはないと考え直す。
「殿下ができたことを報告すると雰囲気がいつも和らぐんですよ。なんとなくですけど、第一王子殿下は殿下に期待してるんじゃないですかね?」
「期待?」
「いつか自分と並び立つ存在になるんじゃないかと。きっと怒ったのは殿下自身がその可能性を潰そうとし、期待を裏切られる気持ちだったんじゃないですか?」
「あ……」
『優秀な兄さんと並ぼうとするのがまず間違いだったと俺は気づいたんです!』
確かにあの時俺はこう言った。兄がクウリの努力を援助し、将来を期待していたにも関わらず俺の軽はずみな言動で兄の本当の希望すら打ち砕こうとしていた。つまりは勝負でなくとも何事も努力して兄に追い付こうとするその過程さえあれば兄はよかったわけだ。
ついでに兄に構う時間もつくって……。
わかりづらい!わかりづらいよ!でもとりあえず今までの努力は無駄ではないことだけはわかったためよしとすべきだろう。こうして俺はあの日兄の不機嫌になった理由を今一度理解し直したのだった。ある意味考え方としてはどちらにしろ兄と同じくらい優秀にならなければいけない難易度は変わらないわけだが。俺に救いはないのか、救いは。でもバカだと認定されたわけだし、少しくらいは……と言っても多分そういうことじゃないのは自分でわかっている。
その日、それから勉強にようやく集中できたのは言うまでもない。
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