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本編(完結)

勘違い

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「この数ヵ月、あの剣を持って転けた日からクウリは変わった。心配はあったけど嫌いになることはなかったよ」

え?俺今何を話されてるんだろ?こちらを見る目は変わらず背筋が凍りそうな思いで、聞こうとする気持ちはあるのに緊張か恐怖故か聞き逃してしまう。そんな中兄の手が俺の頬に触れる。え、何?と何とか声に出さなかったものの思わずびくっと動いてしまった。だがそれに対して兄が気に止めた様子はない。

「でもやっぱり前のクウリと違って少し戸惑いはあった。それ以上にクウリと触れ合う時間は素直に楽しかったけどね」

次はちゃんと聞こえた。少し兄の目が和らいだからだろうか?でも、触れ合うって何?勝負のこと?そんな触れ合うようなことしてないと思うんだけど。それよりもなんか言い方がやらしく感じるのは俺の心が汚いせい?

「だけどいつ終わるかわからないそれに不安もあったんだ」

「え?」

あの兄が……不安?そんな様子が見られた記憶は全くないんだけど……。

「頭を打つ前は私を嫌うほどの対抗心があったから勝ち続ければ続くんだって安心感はあった。けど、今のクウリはあまり対抗心、ないでしょ?」

「それ、は……」

ぎくりとする俺の反応はあまりにもわかりやすかっただろう。対抗心があるかと言われれば正直以前のクウリほどはない。そりゃ一度くらい勝負に勝ちたい気持ちはなくもないけど。それに目的の達成に近づけるためという理由の方が強いので対抗心というのはそこまで強くないだろう。実際、他に方法があるならそこまで勝負を仕掛けには行かなかっただろうし。

さすが兄レウルと言うべきか、お見通しだったみたいだ。まあそれでも勝負自体は兄にとってよかったのは見受けられる。楽しませただけに過ぎないし、何にしても正直せざる終えないあれではあったけど。

「大丈夫。対抗心がないのは確信しているから無理に答えなくてもいいよ。でも、だからこそわからないことがある。クウリは勝負を何故あんなにも挑んでくるのか。それだけがわからないんだ」

と思った矢先のこれ。確信してるなら聞く必要ないじゃん!とか今まで楽しんでいながら今それ聞くの?とか言いたいことは色々ある。でも一番はそれを兄さんが言います?だ。ぽかんとまぬけ面を晒してしまったがこればかりは仕方ないと思う。だって勝負を強要したの兄さんだよね?

そう思考して俺は頭を打った日の会話を思い出す。難易度高いけど勝負仕掛けなきゃと覚悟するきっかけとなったあの日の会話を。

『兄さん!』

そう、まずは勘です発言であれ以上突っ込まれないように強引にいこうとしたんだ。

『え?あれ、そういえばクウリはなんで』

今思えばこの時から自分を俺と言うことやら兄さん呼びについて疑問を持たせていたに違いないと別の問題が解決した。まあ、これはいい。

『待って、まずは聞いて』

『あ、うん』

『俺は今から寂しがり屋な兄さんを構い倒します』

今思えば何を強引にいこうとしたのか疑問になる言葉だなと自分のバカさ加減に気づく。まあこれも今は関係ない。

『構い倒す?』

『優秀な兄さんと並ぼうとするのがまず間違いだったと俺は気づいたんです!』

『間違い……?』

そうこの瞬間はよく覚えてる。前世の記憶を思い出して初めて背筋が凍りつくような恐怖を覚えたんだ。これで確か勝負を……

『あの、兄さん?』

『クウリも………私に媚びるつもりかい?』

勝負を強制……

『は?』

『あの大人たちや親の言いなりの子供らと同じようになるつもりかと聞いているんだよ』

勝負を強制され………てない?

ただ理不尽に怒りをぶつけられただけである。そうだ、その後俺が勝手にそう思考して……

『兄さん、今日は素振りの回数で勝負だ!』

『……ふふっそう、うん、いいよ。負けないけどね』

俺が今はこれしかないと勝負挑み始めたんだ。強要されてないじゃん、俺。兄が喜ぶから余計強要されたものだと勘違いしてた?いやいや、でも勝負してないと兄が機嫌悪くなっていたし……いや、しかし勝負以外を試した覚えがない。勝負以外特に思い付きもなかったけど。

もしかしてもう少し頭の回転働かせてれば勝負に拘る必要なかった……?兄と同等になるためには勝負が必要じゃないの?もしかして兄の望みって俺が考えてるほど難易度高いものじゃなかったとか?え、でもそうするとあの努力の数々は?兄の質問を過去の自分に問いたい。なんであんなに勝負を挑んだの?

とりあえず一気に頭の中は混乱の渦。最近パニクってばかりだよな、俺。
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