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本編(完結)

共同作業

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「わあぁっ待って待って!」

味付け係を舐めていた。兄の料理の段取りのよさがすごすぎて着いていくのが大変なのだ。

「料理は時間との勝負だからね。一番いい状態で仕上げたいんだ。ほら、今だよ味付け」

「いや、え、はい?ちょ、えー!」

兄との料理の共同作業はなんとも目まぐるしい。兄はただなんでも完璧にできる人というより完璧主義な部分があることを料理をしていて初めて気づく。

そして今まで一人で何でもこなしてきた兄は二人で何かをすることに慣れていない。つまり俺が大変ってことです!

いや、高級料理並みのフルコースの味付けなんて知らないし!何これ、まず料理名がわかんない!スープはわかる。サラダもわかる。何サラダ?って言われたらおしゃれなサラダとしか言えないけど。後は何か、何とか肉の何々づけの何々風みたいな長い名前がありそうな料理の数々。俺前世庶民ですし、今5歳ですから!味付けにすら自信なくしそうだよ!兄は7歳で何を目指しているのか……あ、将来王様にさせなきゃだった。

とりあえずなんだかんだとできた料理がピンクにならずに済んだことをまず俺は喜びたい。やったの味付けだけですけどね!後はその味があるのか、あったとして俺がよくわからないその料理にあった味付けができているかだけだが………。

「味がある………!」

「やりましたね!」
 
結果は大成功!料理はピンクにならず味もある。普通に美味しいので大成功と言えよう。味付けだけとはいえまともな料理ができたとテンションがあがる俺。料理長も興奮気味だ。

「………」

「兄さん?」

ただひとり兄だけは無言で料理を食べ続ける。食べることに集中しているというべきだろうか?何が兄をそうさせているのかは全くわからない。しばらくして食べることをやめた兄は急に俺をじっと見つめ始めた。

「…………」

じー………っと

「…………」

じー………っと

「…………」

じー………っと……いや、いつまでこれ見られるの?ちょっと怖いんだけど。

「に、兄さん?」

「ねぇ、なんで急に兄さんなの?」

「へ?」

「頭打つ前は兄上だったよね」

え?え?なんで急に俺問い詰められてんの?ってか今更だが、確かにクウリの記憶はレウルを兄上と呼んでいたからこそ俺の頭の中はパニック寸前だ。

しかし、兄さんと呼んでたのには理由がある!名前を覚えるのが苦手な妹がよく悪役レウルを兄さんと呼んでいたからつい普通に呼んでいたんだよな。クウリは弟くん、ちなみに俺のことはお兄ちゃんと……これはどうでもいいか。

なんで今!どうして急にとは思わなくもないが、兄にとって今聞くべき……もしくは聞いておきたい理由ができたのだと考える。これはもしかしなくても答えを間違えれば未来が危うかったりするんじゃないだろうかと思わなくもない。

ああ、一難去ってまた一難どころか一難続いてまた一難だよな、これじゃ。

「頭を打って思ったんだよ。兄上より兄さんの方が兄さんっぽいって!」

ようやく考えた結果がこれである。自分で言ってて意味がわからない。だが、さすがに勘ですはこんな時役に立たないのはわかる。前世の記憶について言えない今、他に納得できる答えなんて兄が寂しがり屋についての件を勘と答えた俺に答えられるわけがないだろ?
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