兄を悪役にさせないために全力を出した結果~ヤンデレブラコン化は悪役よりマシですか?~

荷居人(にいと)

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本編(完結)

料理3

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「すごいピンクだね」

結果は作り上げた瞬間から惨敗だった。これが無謀な挑戦ってやつだな。ったく……誰だ、なんとかなるって言ったやつ。あ、俺だ。

特に何の料理で勝負というのはしなかった。兄自身初めての料理なわけだし、レシピ本は料理長によって用意されその中からということに……。俺はたらこスパゲッティを作った。麺は茹でるだけです。卑怯とか言うなよ?ソースはがんばったんだから。5歳児の料理なんてこんなものだ……だよな?

とりあえずこれならピンクでも……と思ったが、なんで茹でただけの麺はたらこソースをかける前からピンクに染まっているのか。あの兄でさえ、料理中だんだんピンクになる麺にえ?と驚いていた。審査員の料理長はいつものミラクルに見慣れているので憐れみの目で見られました。

気持ちスープもつけたがもちろんピンクスープ。彩り最悪すぎるが、たらこスパゲッティなだけラーメンよりはマシ……だよな?

ちなみに兄は本当に初めてですか?ってくらいプロ並みの料理を披露してくれた。おい、最近の7歳児はすげぇなと主婦顔負けの手際のよさ。正直スパゲッティ茹でてる時点で負けは悟ってたさ。久々に勝負を仕掛けられたせいか、兄の機嫌は一気によくなった。この辺やっぱチョロヒーローの兄なんだなと思わなくもない。

恐らく時間を空けたのは俺のさらなる敗因を作ったものだと思われる。だっていつも以上にやる気満々なのが輝かしい笑顔でわかるもんよ。

そして出来上がったのは料理長顔負けのどこぞの高級料理店で作られたかのようなフルコース。もうこの時点で負けたよ、俺。

兄からにこにことすごいピンクだねと感想を頂いた俺です。きっとこの世でこんな感想を頂いたのは俺くらいだろう……うん、嬉しくねぇよっ!

正直負けは確定だが憐れんだ料理長は味も評価しようと食べてくれるらしい。その優しさが今は痛い。どうせ初心者だろうと兄のは美味しいに決まっている。すごいいい匂いするもん!涎が垂れそうだよ!

「………ん?」

と思っていれば兄の料理を食べた料理長が首を傾げた。そしてもう一口違う料理を食べ進めていく。そしてまたもや首を傾げた。兄もその反応を不思議に思った様子で料理長に視線を向ける。

「料理長、どうしたんだ?」

俺も気になったので訊ねてみることにした。このまま見ていても首ばかり傾げてそうな料理長に。

「いや……その、レウル様のは決して食べられないものではないのですが……」

料理長の歯切れの悪さを見て、まさかのまさか料理の味で勝てるかもしれない希望が出てきて俺も兄の料理を食べてみることに。

「……ん?」

これまたびっくり、兄の料理は味が何一つしなかった。確かに料理のいい匂いはするし、料理中調味料も使っていたのを俺も見ていたはずなのにまるで相殺してしまいましたとばかりに味がない。いやいや、いくら初心者でもまずいなり、普通なり、美味しいなり、味はあるものだろう!え、何でいい匂いはするのに味は全くの無味なの?残念すぎるよ!

ついでに俺たちを見ていた兄も俺たちの反応を気にしてか自分の料理を口にし固まっていた。恐らく今まで兄がやることなすこと結果的に失敗ひとつなかっただけに、料理の味がないというのは兄にとって初めての失敗だったのかもしれない。

嫌味かよと思うかもしれないが事実なのだから仕方ない。ってか初めての失敗が料理に味がついてないとは思わなかった。些細なことかもしれない。それでも兄でも失敗することあるんだなと思えば少しばかり安堵する自分がいた。
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