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本編(完結)

料理

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「そんなクウリ様に料理をさせるなど……火傷でもしたら大変です!」

調理室と言えば料理、要は料理勝負を考えたわけである。まず王子は料理をする必要もなければ前代未聞と言われるほどに料理をしない。嫌な言い方をすれば作ってもらって当たり前なのだ。

それ故に初心ならば勝てる見込みはあるかもしれない。何より料理勝負は第三者の力も必要になる。今までなら確実性に勝負の勝ち負けがわかるものだっただけにまだこの方が勝てる可能性が出なくもない。味の好みとかそういうので人の評価は変わるものだし?せこいと思ったやつ、なら他に兄に勝つ方法を教えてくれ土下座するから!

………ごほん!ま、そういうわけで料理を調理台の端の方でもいいからさせてほしいと許可をもらおうとしたが、何を言い出すんだとばかりに料理長は許可を出してくれなかったわけである。それ以前に5歳児が何言ってんの?ってなるよね。まあ、予想はしていたがここで諦めるわけにもいかないわけで………

「兄さんに負けてばかりだから……せめて料理で勝ちたいんだ。王子としてふさわしくないかもしれないが、兄さんがやったことないものなら勝てないかと挑戦してみたくて……」

本音を言うことにした。情に訴える……というわけでもないが、こういうのは下手に嘘を吐くより本音を言う方が納得してもらえるはず。何より毎日俺が兄に勝負を仕掛けているのは城の中では知れ渡っているのも理解しているのでこれほど説得力のあるものはないだろう。

「レウル様にまで料理をさせるおつもりで………?」

「勝負だからな、もちろんだ。卑怯かもしれないが練習をまずしたい。ちゃんと作ったものは食べるのでお願いします!」

「ちょ、私なんかに頭を下げないでください!わかりました!わかりましたから!」

これある意味誠意に見せかけた脅しかもしれない。だが、未来のために何でも挑戦すべきなのは間違いない。料理だろうと勝負を挑めば兄は必ず受け入れてくれる……はずだ。

そして始まった料理教室。心配だからとさっき脅してしまった料理長自ら教えてくれることに。前世の記憶でレシピはそれなりに頭に入っている。レシピは。前世でした勉強はすっからかんというくらいに覚えてないのに何故レシピは思い出せているのか……。こればかりは考えても仕方ないのだが。

ちなみにこの世界には異世界あるある味付け塩だけとか硬いパンとかまずい料理ばかりなのかと言われれば前世とそう変わらなかった。味噌とか醤油とかそういった前世にあった調味料は存在するし、砂糖が高級とかそういうのも特にない。おかげで毎日の料理は馴染み深くて美味しいです、はい。

さて、今回作るのは卵焼き!これ、巻くのは得意なんだよ、巻くのは。でも前世は不思議な現象がなんでかね、うん……決して無謀なアレンジをしたわけじゃないんだぞ?それに今は前世の俺の記憶があるだけだ!やればそれなりにできるにはできる凡才クウリの腕を俺は信じる!

そして材料を用意して5秒後足りないものがあったことに気づく。

「届かない……!」

ががーんとばかりに大袈裟にショックを受けたように言えば慌てて料理長が足台を持ってきてくれました。5歳の背丈舐めんなよ!

そしてさらに数十分後。

「………これは、ある意味すごいですね?」

「何故だぁあぁぁ!」

卵はもちろん使った。調味料だって変なのは決して使ってないし、証人として料理長だっている。なのに何故俺の卵焼きはピンク色になっているのだろうか?
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