兄を悪役にさせないために全力を出した結果~ヤンデレブラコン化は悪役よりマシですか?~

荷居人(にいと)

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本編(完結)

悪役レウル

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正直ヒロインと恋仲になりたいとは思ってない。キミトモの説明書にヒロインイラストがあったがヒロインのイラストはこうきゃぴっとした感じでピンクレディというべきかピンクすぎて引くレベルなため単純に好みじゃなかった。

いや、正直イラストの時点でこれがヒロイン?と妹と二人で引いていた。実際乙女ゲームが始まればオープニングと攻略対象とのイベントイラスト以外でストーリーを進める分にはヒロイン目線になるため姿が見えないので普通にやったが。

まさかのまさかだがあのヒロインが現実にいるのだろうか?この世界に。あのピンク女が。髪から目から服から手袋から靴から化粧かどうかはわからんが唇すらピンクの肌以外ピンク、傘さえピンク、鞄すらピンク、イベントイラストで知ったいらない情報ばかりだが、ピンク以外の色を知らないのかと思うピンク女は痛いので付きまとってほしくはない。

ヒロインを目立たせたいとはいえやりすぎにも程がある。正直現実ならヒロインを応援する気にはなれないし、俺自身攻略対象であるのが今から恐ろしい。ゲームのクウリ、ヒロインの何に惹かれたんだ!頭の中も花畑のピンクなのがあからさまだっただろう!

まああまりにバカらしすぎて妹と笑いながらした覚えがある。君と共にじゃなくピンクと共にの題名間違いじゃないかとツッコミながら。

妹付き合いで異世界転生ものとか本読んで話したりもして想像を膨らませたりした記憶もあるが、この世界だけは勘弁願いたかった……。

「ハンカチ、使うかい?」

「ありが、とう」

兄からの言葉にまた現実世界に戻る。迷った様子でハンカチを渡してくれる兄のなんと優しいこと。素直にお礼を言えばまたもや兄は驚きながらもどことなく嬉しそうだった。

うーん、やっぱり今の現実でのレウルは弟と仲良くしたいのかもしれないなんて思う。ゲームではもっと冷たい印象だっただけに意外だ。まあまだ俺の年齢的にゲーム開始前ではあるが。

こんないい兄が悪役……犯罪者かぁ。

「いや、ゲームならともかく現実で身内が悪役犯罪者になるのわかってて放置……ってのもなぁ。何より兄さんってただの寂しがり屋が拗れただけだし?それに俺が王様とか絶対無理だし」

「クウリ?」

あ、口に出てたか。何言ってるの?とさすがの優秀な兄も理解できていない様子だ。

「あ……あー、ハンカチありがとう」

誤魔化すようにハンカチを返す。あ、洗濯して返すべきだったろうか?と思う前に兄がハンカチをとって仕舞ってしまった。

「うん、その、クウリから見たら私は寂しがり屋に見えたのかな?」

聞こえてた!何言ってるか聞こえなかったわけじゃなかった!違うんだ、俺はただゲームで兄レウルがただの寂しがり屋が拗れて犯罪者になっただけだと思っただけなんだ!

…………うーん、どうしよう。ああ、こういうとき癒しの妹に会いたい。
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