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「いちたすにーは、さん!」
指を三本立ててアオガネに自信満々に答えを言う。体調がよくなっていき5歳を越えた頃から始めた勉強はとても楽しい。前は勉強なんてしなかったから。いや、できなかったというべきだろうか?
「正解だ。これは?」
「ゆび、たりない……あ!あしのゆび!えぇっと……ごーたすろくは、じゅういち!」
「ふ……っ正解だ」
「えへへ」
最近はアオガネも時々ひそかだけれど笑うようになった。小さな見過ごしそうな笑みだけどそれがなんだかとても嬉しくて仕方ない。僕も人を笑わせられるんだって。
「今日の勉強はここまでだ」
「つぎはなにするの?」
「仕事がある。留守番できるか?」
「……はやく……かえってきてくれる?ぼく、すてられない?」
「ああ、心配するな」
赤ん坊から連れていってくれていた仕事だが、僕が人の死ぬところを見て気絶しているのをアオガネが気づいてから僕は家で留守番するようになった。
さすがに気絶して迷惑をかけるというのにアオガネと離れたくないからと泣いて我が儘を言うわけにもいかない。でもアオガネが僕と離れるために帰ってこないんじゃないか、捨てられるんじゃないかと毎回不安になる。
何より危険な仕事だからこそアオガネが知らぬ間に殺されでもしたらと留守番は留守番で怖くて仕方ない。
「ぎゅ……ってして?」
「ああ」
仕事へ行く日は行く前に抱き締めてもらう。人の温かみを、アオガネの生きている温かさと自分はひとりじゃないという実感も湧いて留守番もこれのおかげでできるというものだ。
アオガネが仕事へ行き、寂しく思うもそれを紛らわすためにもひとりで勉強を始める。たくさんたくさん頑張れば帰ったときアオガネは絶対に褒めてくれるから。
それがいつもの留守番の時の日常だった。
ガチャ
「あおがね……?」
「子供……?」
しかし、今日ばかりは違ったようだ。知らない人が当たり前のようにノックもせずこの家に入ってきたために。
「だ、れ?」
椅子から降りて少しでもその不審者から離れようと後ずさる。
「何故子供が……そんな報告は受けていないが……。まさかアオガネの?いや、あいつに近づく女がいればすぐわかるはずだが、アオガネだしな……」
僕の問いを無視してぶつぶつ言う不審者は気のせいかアオガネの知り合いのようにも思えた。だけど、それが必ずしもアオガネにとってのよい人物で僕にとって安全な人物とは限らない。
「まああいつは留守のようだし、ここひとりでいれば君が危ない。俺が保護してやろう!」
「い、いやだ!」
「大人の言うことは聞くもんだぞ!」
「あおがねっあおがねっ」
そう言って力のない非力な子供である僕は傍にいないアオガネに助けを呼ぶも都合よく帰ってくるはずもなく急に現れた不審者に誘拐されることとなったのだった。
指を三本立ててアオガネに自信満々に答えを言う。体調がよくなっていき5歳を越えた頃から始めた勉強はとても楽しい。前は勉強なんてしなかったから。いや、できなかったというべきだろうか?
「正解だ。これは?」
「ゆび、たりない……あ!あしのゆび!えぇっと……ごーたすろくは、じゅういち!」
「ふ……っ正解だ」
「えへへ」
最近はアオガネも時々ひそかだけれど笑うようになった。小さな見過ごしそうな笑みだけどそれがなんだかとても嬉しくて仕方ない。僕も人を笑わせられるんだって。
「今日の勉強はここまでだ」
「つぎはなにするの?」
「仕事がある。留守番できるか?」
「……はやく……かえってきてくれる?ぼく、すてられない?」
「ああ、心配するな」
赤ん坊から連れていってくれていた仕事だが、僕が人の死ぬところを見て気絶しているのをアオガネが気づいてから僕は家で留守番するようになった。
さすがに気絶して迷惑をかけるというのにアオガネと離れたくないからと泣いて我が儘を言うわけにもいかない。でもアオガネが僕と離れるために帰ってこないんじゃないか、捨てられるんじゃないかと毎回不安になる。
何より危険な仕事だからこそアオガネが知らぬ間に殺されでもしたらと留守番は留守番で怖くて仕方ない。
「ぎゅ……ってして?」
「ああ」
仕事へ行く日は行く前に抱き締めてもらう。人の温かみを、アオガネの生きている温かさと自分はひとりじゃないという実感も湧いて留守番もこれのおかげでできるというものだ。
アオガネが仕事へ行き、寂しく思うもそれを紛らわすためにもひとりで勉強を始める。たくさんたくさん頑張れば帰ったときアオガネは絶対に褒めてくれるから。
それがいつもの留守番の時の日常だった。
ガチャ
「あおがね……?」
「子供……?」
しかし、今日ばかりは違ったようだ。知らない人が当たり前のようにノックもせずこの家に入ってきたために。
「だ、れ?」
椅子から降りて少しでもその不審者から離れようと後ずさる。
「何故子供が……そんな報告は受けていないが……。まさかアオガネの?いや、あいつに近づく女がいればすぐわかるはずだが、アオガネだしな……」
僕の問いを無視してぶつぶつ言う不審者は気のせいかアオガネの知り合いのようにも思えた。だけど、それが必ずしもアオガネにとってのよい人物で僕にとって安全な人物とは限らない。
「まああいつは留守のようだし、ここひとりでいれば君が危ない。俺が保護してやろう!」
「い、いやだ!」
「大人の言うことは聞くもんだぞ!」
「あおがねっあおがねっ」
そう言って力のない非力な子供である僕は傍にいないアオガネに助けを呼ぶも都合よく帰ってくるはずもなく急に現れた不審者に誘拐されることとなったのだった。
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