前世って何のことですか?公爵様お願いですから平民の私を主人扱いしないでください!

荷居人(にいと)

文字の大きさ
上 下
11 / 15
1章~平民と公爵様の契約~

10

しおりを挟む
「これは猛毒とまでは言わぬが飲み続けることで体を蝕む。とはいえ薬は薬。たまに飲む程度なら効果として痛み止めや気分の好調として使える優れた薬じゃ。だが、飲み続けるような薬ではない。医者なら知っていて当たり前なほどに気を遣う薬。とんだやぶ医者でなければこんな処方はせん」

「そんな……俺は妻を苦しめるために生活を苦しめてまで高い薬代を……っ」

お父さんが頑張ってきたのを知っているだけに私も心苦しいし、薬を飲ませていたのは私だから騙されていたことが悔しくて仕方ない。

「最近庶民に無料で診察し、適当な病状を言って不安を煽り高い薬を売る医者がいると聞いていてな、もしやとは思ったが……お嬢さんらも被害者じゃな」

「そんな……っお母さんごめんね」

今なお苦しそうに咳と呼吸をするお母さんの後ろ姿に涙が出て止まらない。私もお父さんも信じきっていたから。

「先生!お願いします!すぐには無理ですが必ず言われた金額を払いますから妻を、妻を治してください!」

「わ、私も、私も頑張るから、お母さんを治してくださいっ!」

お父さんが土下座をして頼むのを見て、私もお願いしなきゃとお父さんと同じように土下座をして頼む。これでもっと生活が苦しくなってもお母さんが救われるなら私は毎日ご飯が食べれなくなったって構わない。

「あ、頭をあげてください……!わしは最初から治す気じゃ」

「「ありがとうございます……っ!」」

涙ながらにお礼を言う私たちにお医者さんが困ったように頬を掻く。困らせる気はなかったが、お母さんの命がかかわっているのだから必死になるのも仕方ないと思ってもらいたい。

「それとお金に関してはいりませんぞ」

「さすがにそれは……」

全く払わないは払わないでお父さんも良心が咎めるのだろう。それとも後で何か言われたらと考えているのかもしれない。

「もうもらっていますからのぅ。元々奥方の病を治すよう公爵様に言われて来ましたから。治るかどうかは診ないとわかりませんでしたがあまりに必死に頼まれたので」

「公爵様……?」

「おや、先程ご当主様に説得された時聞いておりませんでしたか?」

お父さんがぎぎぎと固まったものを無理矢理動かすかのように首をかしげる様子を見てお医者さんがあれ?とばかりに言う。

『ええ、私にお嬢様をいただけないかと思いまして。とはいえただでいただくなど無論私としても許せない。大金を積むことも考えましたがお嬢様を育ててきたご両親ですからお嬢様が寂しがってを出ていかれたら私はとてもじゃありませんが申し訳なさで死んでしまいそうです。だからお嬢様の側仕えとして雇おうかと。もちろんお嬢様の母君も。体が弱いと聞いていますので治療はお任せください。ベッドで寝ているだけでもお嬢様の話し相手になるだけでお給料は払いましょう』

『ただお嬢様をの養子にさせていただければ生涯お金に困ることもないんですよ?それに何もお嬢様と引き離すつもりもないのはお話でわかるでしょう』

うん、確かに言ってた。急な貴族の訪問に色々頭いっぱいでお父さんはそこまでちゃんと聞いてなかったのかもしれない。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

人生の全てを捨てた王太子妃

八つ刻
恋愛
突然王太子妃になれと告げられてから三年あまりが過ぎた。 傍目からは“幸せな王太子妃”に見える私。 だけど本当は・・・ 受け入れているけど、受け入れられない王太子妃と彼女を取り巻く人々の話。 ※※※幸せな話とは言い難いです※※※ タグをよく見て読んでください。ハッピーエンドが好みの方(一方通行の愛が駄目な方も)はブラウザバックをお勧めします。 ※本編六話+番外編六話の全十二話。 ※番外編の王太子視点はヤンデレ注意報が発令されています。

軽い気持ちで超絶美少年(ヤンデレ)に告白したら

夕立悠理
恋愛
容姿平凡、頭脳平凡、なリノアにはひとつだけ、普通とちがうところがある。  それは極度の面食いということ。  そんなリノアは冷徹と名高い公爵子息(イケメン)に嫁ぐことに。 「初夜放置? ぜーんぜん、問題ないわ! だって旦那さまってば顔がいいもの!!!」  朝食をたまに一緒にとるだけで、満足だ。寝室別でも、他の女の香水の香りがしてもぜーんぜん平気。……なーんて、思っていたら、旦那さまの様子がおかしい? 「他の誰でもない君が! 僕がいいっていったんだ。……そうでしょ?」  あれ、旦那さまってば、どうして手錠をお持ちなのでしょうか?  それをわたしにつける??  じょ、冗談ですよね──!?!?

【完結】悪役令嬢の反撃の日々

くも
恋愛
「ロゼリア、お茶会の準備はできていますか?」侍女のクラリスが部屋に入ってくる。 「ええ、ありがとう。今日も大勢の方々がいらっしゃるわね。」ロゼリアは微笑みながら答える。その微笑みは氷のように冷たく見えたが、心の中では別の計画を巡らせていた。 お茶会の席で、ロゼリアはいつものように優雅に振る舞い、貴族たちの陰口に耳を傾けた。その時、一人の男性が現れた。彼は王国の第一王子であり、ロゼリアの婚約者でもあるレオンハルトだった。 「ロゼリア、君の美しさは今日も輝いているね。」レオンハルトは優雅に頭を下げる。

執着系逆ハー乙女ゲームに転生したみたいだけど強ヒロインなら問題ない、よね?

陽海
恋愛
乙女ゲームのヒロインに転生したと気が付いたローズ・アメリア。 この乙女ゲームは攻略対象たちの執着がすごい逆ハーレムものの乙女ゲームだったはず。だけど肝心の執着の度合いが分からない。 執着逆ハーから身を守るために剣術や魔法を学ぶことにしたローズだったが、乙女ゲーム開始前からどんどん攻略対象たちに会ってしまう。最初こそ普通だけど少しずつ執着の兆しが見え始め...... 剣術や魔法も最強、筋トレもする、そんな強ヒロインなら逆ハーにはならないと思っているローズは自分の行動がシナリオを変えてますます執着の度合いを釣り上げていることに気がつかない。 本編完結。マルチエンディング、おまけ話更新中です。 小説家になろう様でも掲載中です。

夫と息子は私が守ります!〜呪いを受けた夫とワケあり義息子を守る転生令嬢の奮闘記〜

梵天丸
恋愛
グリーン侯爵家のシャーロットは、妾の子ということで本妻の子たちとは差別化され、不遇な扱いを受けていた。 そんなシャーロットにある日、いわくつきの公爵との結婚の話が舞い込む。 実はシャーロットはバツイチで元保育士の転生令嬢だった。そしてこの物語の舞台は、彼女が愛読していた小説の世界のものだ。原作の小説には4行ほどしか登場しないシャーロットは、公爵との結婚後すぐに離婚し、出戻っていた。しかしその後、シャーロットは30歳年上のやもめ子爵に嫁がされた挙げ句、愛人に殺されるという不遇な脇役だった。 悲惨な末路を避けるためには、何としても公爵との結婚を長続きさせるしかない。 しかし、嫁いだ先の公爵家は、極寒の北国にある上、夫である公爵は魔女の呪いを受けて目が見えない。さらに公爵を始め、公爵家の人たちはシャーロットに対してよそよそしく、いかにも早く出て行って欲しいという雰囲気だった。原作のシャーロットが耐えきれずに離婚した理由が分かる。しかし、実家に戻れば、悲惨な末路が待っている。シャーロットは図々しく居座る計画を立てる。 そんなある日、シャーロットは城の中で公爵にそっくりな子どもと出会う。その子どもは、公爵のことを「お父さん」と呼んだ。

愛してほしかった

こな
恋愛
「側室でもいいか」最愛の人にそう問われ、頷くしかなかった。  心はすり減り、期待を持つことを止めた。  ──なのに、今更どういうおつもりですか? ※設定ふんわり ※何でも大丈夫な方向け ※合わない方は即ブラウザバックしてください ※指示、暴言を含むコメント、読後の苦情などはお控えください

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?

こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。 「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」 そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。 【毒を検知しました】 「え?」 私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。 ※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

ヤンデレ悪役令嬢の前世は喪女でした。反省して婚約者へのストーキングを止めたら何故か向こうから近寄ってきます。

砂礫レキ
恋愛
伯爵令嬢リコリスは嫌われていると知りながら婚約者であるルシウスに常日頃からしつこく付き纏っていた。 ある日我慢の限界が来たルシウスに突き飛ばされリコリスは後頭部を強打する。 その結果自分の前世が20代後半喪女の乙女ゲーマーだったことと、 この世界が女性向け恋愛ゲーム『花ざかりスクールライフ』に酷似していることに気づく。 顔がほぼ見えない長い髪、血走った赤い目と青紫の唇で婚約者に執着する黒衣の悪役令嬢。 前世の記憶が戻ったことで自らのストーカー行為を反省した彼女は婚約解消と不気味過ぎる外見のイメージチェンジを決心するが……?

処理中です...