前世って何のことですか?公爵様お願いですから平民の私を主人扱いしないでください!

荷居人(にいと)

文字の大きさ
上 下
9 / 15
1章~平民と公爵様の契約~

8~ラルク公爵視点~

しおりを挟む
「公爵様、治療をさせていただいても?」

お嬢様に泣かれた、睨まれた、怒られたショックで呆然としていれば元々お嬢様の母君のために連れてきた医師に許可を求められた。

「あ、ああ、もちろんだ」

拒否などするはずもない。したとたんにお嬢様に嫌われる未来が………いや、もしやもう既に嫌われたのではと泣きそうな気持ちになる。決してお嬢様を泣かせたかったわけではない。

私は私なりに考えてお嬢様を養子にいただきたかっただけなのに………!

「では、奥様早く中へ」

「ですが……っ」

「お、お嬢様を無理矢理養子にする気はありません!断りは受けますからどうか中へ!」

中へ入ろうとせず私を見るお嬢様の母君に焦りが募る。だってお嬢様が私を睨んでいるから。これ以上お嬢様の中での私の評価を下げたくはない。もし今お嬢様の母君に何かあれば取り返しのつかないのがわかるので頼むから安静にしてほしいと思わずにはいられなかった。

「そう、ですか……ごほっごほっ」

安心したようにようやく中へ入っていただけた母君に続いてお嬢様の父君は母君を支えながら同じく中へ入り、医師も続く、私も見ていられず続こうとしてお嬢様に止められた。

「入らないでください」

「お、お、おじょ……」

「お母さんを苦しめた公爵様なんて嫌いです!」

ばたんっと拒絶と共に閉められた扉。立ち尽くす私と同じく入れなかった幼い頃からの従者でもあるルド。爽やかな朝は一瞬でどんよりとした。

「お嬢様に……嫌われた……きら、嫌いと………拒絶、され………」

「旦那様、お気を確かに」

「な、何故だ……。何故こんなことに……」

お嬢様をずっと探し続けて出会った時に苦労させまいと公爵家の当主という立場ももぎ取りようやく会えたお嬢様だと言うのに……私はお嬢様に愛想をつかれてしまった。こんなはずではなかったのに。

「まあ……愛されてるが故かと」

「どういう意味だ?」

「旦那様立場を変えて考えてみてください。旦那様がお嬢様の父親だったとします。そんな中お金を払うからお嬢様をくれと言われたらどうします?」

「渡すわけがない!」

「ご飯もろくに食べられない貧乏だったとしてもですか?」

「当たり前だ!お嬢様をお金に変えるなど無礼にも……!ん?」

「気づかれましたか?」

「わ、わ、私は何ということを!」

お嬢様に会えたことに浮かれすぎてとんでもない過ちを!ルドの言いたいことに気づいて自分を殺したくなった。お嬢様の母君、父君は親として、お嬢様を愛するから故に当然のことをおっしゃっていたのだ。

寧ろ間違っていたのはお金でお嬢様を買おうとも言える行為をした私の方………。しかも母君に無理をさせてしまったわけで……お嬢様に失望されても仕方ないというもの。

「カルロ医師が治療に失敗すればそれこそ旦那様はもうお嬢様と和解は厳しいでしょうね」

「お嬢様ぁあぁぁぁっ!」

もはや私の命はカルロ医師次第となった。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢は永眠しました

詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」 長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。 だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。 ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」 *思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m

【完結】悪役令嬢の反撃の日々

くも
恋愛
「ロゼリア、お茶会の準備はできていますか?」侍女のクラリスが部屋に入ってくる。 「ええ、ありがとう。今日も大勢の方々がいらっしゃるわね。」ロゼリアは微笑みながら答える。その微笑みは氷のように冷たく見えたが、心の中では別の計画を巡らせていた。 お茶会の席で、ロゼリアはいつものように優雅に振る舞い、貴族たちの陰口に耳を傾けた。その時、一人の男性が現れた。彼は王国の第一王子であり、ロゼリアの婚約者でもあるレオンハルトだった。 「ロゼリア、君の美しさは今日も輝いているね。」レオンハルトは優雅に頭を下げる。

邪魔しないので、ほっておいてください。

りまり
恋愛
お父さまが再婚しました。 お母さまが亡くなり早5年です。そろそろかと思っておりましたがとうとう良い人をゲットしてきました。 義母となられる方はそれはそれは美しい人で、その方にもお子様がいるのですがとても愛らしい方で、お父様がメロメロなんです。 実の娘よりもかわいがっているぐらいです。 幾分寂しさを感じましたが、お父様の幸せをと思いがまんしていました。 でも私は義妹に階段から落とされてしまったのです。 階段から落ちたことで私は前世の記憶を取り戻し、この世界がゲームの世界で私が悪役令嬢として義妹をいじめる役なのだと知りました。 悪役令嬢なんて勘弁です。そんなにやりたいなら勝手にやってください。 それなのに私を巻き込まないで~~!!!!!!

【完結】なぜ、お前じゃなくて義妹なんだ!と言われたので

yanako
恋愛
なぜ、お前じゃなくて義妹なんだ!と言われたので

人生の全てを捨てた王太子妃

八つ刻
恋愛
突然王太子妃になれと告げられてから三年あまりが過ぎた。 傍目からは“幸せな王太子妃”に見える私。 だけど本当は・・・ 受け入れているけど、受け入れられない王太子妃と彼女を取り巻く人々の話。 ※※※幸せな話とは言い難いです※※※ タグをよく見て読んでください。ハッピーエンドが好みの方(一方通行の愛が駄目な方も)はブラウザバックをお勧めします。 ※本編六話+番外編六話の全十二話。 ※番外編の王太子視点はヤンデレ注意報が発令されています。

遠くに行ってしまった幼なじみが副社長となって私を溺愛してくる

有木珠乃
恋愛
休日、入社したての会社の周りを散策していた高野辺早智。 そこで、中学校に入学するのを機に、転校してしまった幼なじみ、名雪辰則と再会する。 懐かしさをにじませる早智とは違い、辰則にはある思惑があった。 辰則はもう、以前の立場ではない。 リバーブラッシュの副社長という地位を手に入れていたのだ。 それを知った早智は戸惑い、突き放そうとするが、辰則は逆に自分の立場を利用して強引に押し進めてしまう。 ※ベリーズカフェ、エブリスタにも投稿しています。

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?

こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。 「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」 そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。 【毒を検知しました】 「え?」 私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。 ※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

罪なき令嬢 (11話作成済み)

京月
恋愛
無実の罪で塔に幽閉されてしまったレレイナ公爵令嬢。 5年間、誰も来ない塔での生活は死刑宣告。 5年の月日が経ち、その塔へと足を運んだ衛兵が見たのは、 見る者の心を奪う美女だった。 ※完結済みです。

処理中です...