前世って何のことですか?公爵様お願いですから平民の私を主人扱いしないでください!

荷居人(にいと)

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1章~平民と公爵様の契約~

8~ラルク公爵視点~

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「公爵様、治療をさせていただいても?」

お嬢様に泣かれた、睨まれた、怒られたショックで呆然としていれば元々お嬢様の母君のために連れてきた医師に許可を求められた。

「あ、ああ、もちろんだ」

拒否などするはずもない。したとたんにお嬢様に嫌われる未来が………いや、もしやもう既に嫌われたのではと泣きそうな気持ちになる。決してお嬢様を泣かせたかったわけではない。

私は私なりに考えてお嬢様を養子にいただきたかっただけなのに………!

「では、奥様早く中へ」

「ですが……っ」

「お、お嬢様を無理矢理養子にする気はありません!断りは受けますからどうか中へ!」

中へ入ろうとせず私を見るお嬢様の母君に焦りが募る。だってお嬢様が私を睨んでいるから。これ以上お嬢様の中での私の評価を下げたくはない。もし今お嬢様の母君に何かあれば取り返しのつかないのがわかるので頼むから安静にしてほしいと思わずにはいられなかった。

「そう、ですか……ごほっごほっ」

安心したようにようやく中へ入っていただけた母君に続いてお嬢様の父君は母君を支えながら同じく中へ入り、医師も続く、私も見ていられず続こうとしてお嬢様に止められた。

「入らないでください」

「お、お、おじょ……」

「お母さんを苦しめた公爵様なんて嫌いです!」

ばたんっと拒絶と共に閉められた扉。立ち尽くす私と同じく入れなかった幼い頃からの従者でもあるルド。爽やかな朝は一瞬でどんよりとした。

「お嬢様に……嫌われた……きら、嫌いと………拒絶、され………」

「旦那様、お気を確かに」

「な、何故だ……。何故こんなことに……」

お嬢様をずっと探し続けて出会った時に苦労させまいと公爵家の当主という立場ももぎ取りようやく会えたお嬢様だと言うのに……私はお嬢様に愛想をつかれてしまった。こんなはずではなかったのに。

「まあ……愛されてるが故かと」

「どういう意味だ?」

「旦那様立場を変えて考えてみてください。旦那様がお嬢様の父親だったとします。そんな中お金を払うからお嬢様をくれと言われたらどうします?」

「渡すわけがない!」

「ご飯もろくに食べられない貧乏だったとしてもですか?」

「当たり前だ!お嬢様をお金に変えるなど無礼にも……!ん?」

「気づかれましたか?」

「わ、わ、私は何ということを!」

お嬢様に会えたことに浮かれすぎてとんでもない過ちを!ルドの言いたいことに気づいて自分を殺したくなった。お嬢様の母君、父君は親として、お嬢様を愛するから故に当然のことをおっしゃっていたのだ。

寧ろ間違っていたのはお金でお嬢様を買おうとも言える行為をした私の方………。しかも母君に無理をさせてしまったわけで……お嬢様に失望されても仕方ないというもの。

「カルロ医師が治療に失敗すればそれこそ旦那様はもうお嬢様と和解は厳しいでしょうね」

「お嬢様ぁあぁぁぁっ!」

もはや私の命はカルロ医師次第となった。
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