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1章~平民と公爵様の契約~

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家族との絆が深まっただろうその日に早くもあの公爵様が現れた。さすが貴族というべきなのか何なのか家を知られていることに呆然としたのは父が仕事に出掛けようとして扉を開けた瞬間。

昨日見た豪華な馬車と共に公爵様がにこやかに立っていた。後ろに人を携えて。

「こ、これは……あの……」

さすがの父も動揺して膝をつこうとするが、公爵様にすぐ立たされた。

「お嬢様の父上様が私などに膝をつく必要はございません」

「お、お嬢様……?」

「ええ、お嬢様です。私にとって命よりも大事な……おはようございます。お嬢様」

「お、おはようございます」

父の何がどうしてそうなったと言う視線が痛い。私だってわからないけど、そのことに関しては昨日話したのに。……まあお父さんは半信半疑だったし、貴族が平民の子供をお嬢様って呼ぶのも普通は信じられないよね。

「失礼ですが、どなたかとお間違えでは」

やはり親子。お父さんもまた昨日私と同じようなことを言っている。そう思うよね、やっぱり。私なんて名前間違えられてたし。

「いいえ、大丈夫です。信じられないかもしれませんがお嬢様こそ私の探し求めていた魂でございますからして」

「「魂……」」

思わず父と二人目が点になる。

「横から失礼します。申し訳ございませんが、旦那様とお付き合い頂けると助かります。昨日からこの調子でして……いつもならもっと表情の固い冷徹なお人なのですが」

「表情の固い……?」

「冷徹……?」

父と二人で次は首を傾げた。目の前の人は明らかににこやかで頭のおかしい人だ。公爵様の後ろの人が頭を抑える。この人は結構苦労している人なのかなとなんだか可哀想に思えた。

「ルド、余計なことは言うな。お嬢様に嫌われたらどうする」

「申し訳ありません」

うん、今のは想像してた貴族様っぽいかもしれない。

「あの、お父さん仕事行ってもいいですか?」

「ラフレっ」

とりあえずここで立ち尽くしても困るし、父は家庭で一番の稼ぎ頭だからこのまま仕事に行けないのも困るからと言ってみたけど父がとたん真っ青になって私を叱る。私を心配してくれたんだろうけど公爵様なら大丈夫な気がしていた。だって昨日も今日もこんなだから。

「ああっ!お嬢様、申し訳ございません。そのこともあり朝早くから伺ったのです」

「え?」

そのことも……ってことは父の仕事に何か言いにきたという解釈になる。お父さんは何か悪い想像でもしているのだろうか?青い顔から白へと顔色を変貌させていた。
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