公爵令嬢と王太子は今日も二人だけがすれ違ってる

荷居人(にいと)

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「もう殿下とは婚約破棄しますわ!」

「そうかい?こちらこそわかってくれない君なんかとはやってられないね」

なんて思っていればよりヒートアップしていた喧嘩。あーはいはいお決まりの婚約破棄ですね。けど婚約破棄は39回目。最後はなんだかんだと俺を巻き込んで仲直りするんだ。俺を巻き込んでな!

「あー、お二人ともまずは頭を冷やしま……」

「外野は黙っていなさい!」

「ぐへらべあ………っ」

それは一瞬でした。二人を止めようとした瞬間アイ様の拳が俺の頬にクリティカルヒットし………飛んだのです。なんという力でしょう。ってかかなり痛いんだが???

「あ………」

「わ、私そんなつもりは」

「あー、アイ様、大丈夫です。大丈夫ですからまずは頭を冷やしてからお話をし直しましょう」

「え、ええ……その、ごめんなさい………。少し頭を冷やしてからまた来るわ」

こうして俺の犠牲で一旦落ち着いた喧嘩。俺の頬を犠牲にな……いや、歯もか。とれた歯………治るだろうか……。

という感じで今がある。

そんなわけでアイ様がいなくなった執務室は一気にどんよりとしていた。

「まさか浮気を疑われるとは思わなかったんだ………」

「そうですね……」

二人になれば俺は相談役になるわけで、二人が仲直りするために頑張らなくてはいけない。目撃者として。

しかし、殿下。浮気を疑われるとは思わなかったのはその通りとしか言い様がない。浮気相手猫だもんなあ。

「誤魔化したいわけじゃないんだが、にゃあとしか話してないんだ」

「まあ、そう……ですよね」

猫だからそりゃそうだろとしか言えない。

「いや………まあ、少し撫でたが………まさかこれが浮気……?」

「大人しい猫でしたからね」

アイ様の思考も大概だが、それに疑問を抱かず浮気になるのかならないのか悩む殿下も殿下だ。似た者同士なんだよな……どっちも疲れてるんだろうか。

「猫とにゃあにゃあ言い合ってたのがいけないのか………?」

「にゃあにゃあ言い合ってたんですか………?」

見ていないところで何をしているんだ、王太子ともあろう人が。

「猫を抱き上げたのがだめだったのかもしれない……!」

「とりあえず猫のメスがだめなら、もはや人間の女性との会話すらだめになりません?」

そうなると公務に支障を来す場合もある。とはいえ今までそれで嫉妬とかアイ様がしているのを見たことはないが。

「いや、不快に思うこともあるのではと以前聞いたことがあるが、そんなので浮気とか嫉妬するほど心は狭くないと言っていた」

「ソウデスカー」

益々謎は深まるばかり。アイ様の思考回路がわかりません!人間よくて猫がだめな理由を誰か教えてくれ。
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