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「あ……私、つい」

「うぐ……っえぐ……ぎざま、どは……ごんやく、はきだぁあぁぁ……」

最後の足掻きとばかりに泣き出したミニ殿下の言葉に、今更繰り返されても……と思う私は今回のことで少し強くなったのかもしれない。

「エリス嬢、かっこよかったですよ」

「え!いや、私もうなんか必死で……」

「ふふ……」

そんなことを思ってればにこにこと笑うモブ様にかっこよかったなんて言われて顔中が真っ赤になるが自分でもわかる。なんだかはしたなかった気もしたが、モブ様はそんな私をあまりにも愛しげに見るものだから恥ずかしくなってしまうのだ。

「さてさて、こうなってしまっては殿下の婚約者はですね」

そんな雰囲気をぶち壊すように割って入るような言葉を発したのはお兄様だった。

「も、モブ様、お兄様は何を言っているんですか……?」

「で、殿下の婚約者になるのはだと……」

「わわ私のお兄様ってお姉様だったの!?」

「おお落ち着きましょう!お姉様だったんですよ!きっと!」

あわわあわわと二人して動揺する私たち。だってお兄様は乙女ゲームじゃ攻略対象のひとりで、殿下も……だからどちらも男のはずで……え?え?

「落ち着きなさい。私はお兄様で合ってますから」

「じゃじゃじゃあ!まさか、殿下が王女……」

「殿下も男です。今更何を言ってるんだ」

「う……で、でも」

だってそうなると男同士で婚約ってことになるわけで……確かに前世では同性同士で結婚が可能なところもあったけど……。まさか、私はここを乙女ゲームと認識していたけど、実は私が知らないだけで禁断のホモゲーだったと?だったと?

「ま、まあ、エリスには悪いことをした。嫉妬で怖がらせていただろうからね」

「嫉妬……」

「今だから言うけど私は同性愛者でね、ずっと殿下に恋をしてたんだ」

「殿下を……ですか」

えぐえぐ泣いて私たちの声すら聞こえてないだろうミニ殿下をちら見する。お兄様は今でもミニ殿下を……想えるのだろうか?

「恋は盲目と言うべきかな。あんなだめな部分を見ても愛しいんだよね」

「叩いたりしてましたよね……?」

「愛の鞭(物理)ってやつだね。それに嫉妬こそしたけど、妹が嫌いなわけじゃなかったから泣かせたならお仕置きはしないと」

「……お幸せに?」

「ありがとう」

こんなお兄様の本心からの笑顔を初めて見たのに、ミニ殿下の同情が先走るのはなんでだろう?愛の鞭(物理)のせい、かな……?

「男同士で婚約できましたっけ?」

「あ」

色々衝撃でモブ様の疑問な声にはっとする。そもそもの問題点があったことに。


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