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「ぐ……う……っま、まあ、人には失敗というものも……」
「ということは殿下は身分だけの男ということで?」
ルルー様もここぞとばかりに責める責める。もはや私が入る隙がない。入りたいとも思わないけど……もう婚約破棄は受け入れるから帰っていいかな……。
ありがたいことに私は注目されてない気がするし……そろりと帰れば……。
「エ・リ・ス・?」
「ひぇっ」
背後から聞こえた声に動き出そうとした足が止まる。恐る恐る後ろに振り向けば相手はお兄様。先程までミニ殿下の隣にいたのは確認していたのに……え?え?
「まさか逃げる気じゃないよね?」
「そそそんな!め、滅相もない!」
怖い怖い怖い怖い!お兄様が笑ってるのに怖いよぉ……っ!
「兄上、エリス様が怖がりますので」
「……っな……」
そしてそんなお兄様を背後から現れたのはルルー様……いや、声の低さからルーン様。お兄様も気づかなかったのかばっと振り返っては素早く離れた。お兄様の背後にいながら私すら声を出されるまで気づかなかったのはさすがスト……いえ、そう考えるのは失礼、よね。
でも気配の消し方が……なんか洗練されてる気がしたの。気がしただけなんだけど、あまりにあのお兄様が警戒した様子で睨むから……。
というより、ルーン様もルルー様の隣にいたよね……?あの二人はまだ
状況変わらずでミニ殿下が押され気味のようだけど……。あれ?でもトンチン様が意気消沈してる?え、この一瞬に何が!?もうわけがわからない!
「兄上驚かせてすみません」
「き、君の兄になった覚えはないんですけどね?」
「ああ、これからエリス様にアプローチする予定でしたのでつい先走ってしまいました」
こちらはこちらで私を挟んでなんか言い合いを始めたみたいだし、もう逃げるのは無理そうだ。逃げようとしなければ傍観者でいられたかもしれないのに……。
視線が、視線がいたいぃぃっ!
「うわあぁぁぁんっ」
「エリス様!?」
「え、エリス?」
「もういや……っ帰りたいっ!私に悪役令嬢なんて無理だもん……っ死にたくないだけなのにぃっ!」
自分でも何を言っているかわけがわからなかったけど、もう限界だった。ただでさえ人目から逃げてきた人見知りな私が、ヒロインと王子の対決に巻き込まれたり、ヒロインが兄だったり、お兄様が怖かったりでわけのわからない状況に泣いて何が悪い。
これが周囲に混じってならば傍観者として問題なかっただろう。けど、私は巻き込まれた側で、本来なら悪役令嬢。逃げられるはずもないのだと思えばもう泣くしかない。
私はただ普通の令嬢でいたかっただけなのに。
「え、エリス様~?ほ、ほら、エリス様の欲しがってたテディベアですよー?」
「なんでじっでるのぉ!ごわいぃっ」
「う……っ」
「あーエリス、今度新しいドレスを買ってやるから泣き止みなさい」
「いらないぃぃっ」
「ぐ……っ」
「エリス様、その、私は、決して泣かせたかったわけじゃないんです……!ちょっと殿下に腹が立ちすぎて」
「うぅぅっ」
「はぅ……っ」
「そ、そそそんなに私との婚約破棄が嫌だったんだな!よ、よし、婚約破棄を取り消して……」
「それは結構です」
何故かミニ殿下の言葉に一瞬だけ涙が止まり、気がつけばそんな言葉が出ていた。
「何故、私だけ塩対応!?泣けよ!」
そしてそんな私に対して泣けよと強く言われた私は……
「うわあぁぁぁんっでん、か……おこったぁっ」
大泣き。自分でもうざったい自覚はあるが、もう涙が止まらないのだ。もうなんで泣いてるのかすらよくわからなくなってきている。
「え、えぇぇっ!?これ、私が悪いのか!?」
とりあえず泣けよと言って泣き出す私に慌てるミニ殿下は滑稽だった。
「ということは殿下は身分だけの男ということで?」
ルルー様もここぞとばかりに責める責める。もはや私が入る隙がない。入りたいとも思わないけど……もう婚約破棄は受け入れるから帰っていいかな……。
ありがたいことに私は注目されてない気がするし……そろりと帰れば……。
「エ・リ・ス・?」
「ひぇっ」
背後から聞こえた声に動き出そうとした足が止まる。恐る恐る後ろに振り向けば相手はお兄様。先程までミニ殿下の隣にいたのは確認していたのに……え?え?
「まさか逃げる気じゃないよね?」
「そそそんな!め、滅相もない!」
怖い怖い怖い怖い!お兄様が笑ってるのに怖いよぉ……っ!
「兄上、エリス様が怖がりますので」
「……っな……」
そしてそんなお兄様を背後から現れたのはルルー様……いや、声の低さからルーン様。お兄様も気づかなかったのかばっと振り返っては素早く離れた。お兄様の背後にいながら私すら声を出されるまで気づかなかったのはさすがスト……いえ、そう考えるのは失礼、よね。
でも気配の消し方が……なんか洗練されてる気がしたの。気がしただけなんだけど、あまりにあのお兄様が警戒した様子で睨むから……。
というより、ルーン様もルルー様の隣にいたよね……?あの二人はまだ
状況変わらずでミニ殿下が押され気味のようだけど……。あれ?でもトンチン様が意気消沈してる?え、この一瞬に何が!?もうわけがわからない!
「兄上驚かせてすみません」
「き、君の兄になった覚えはないんですけどね?」
「ああ、これからエリス様にアプローチする予定でしたのでつい先走ってしまいました」
こちらはこちらで私を挟んでなんか言い合いを始めたみたいだし、もう逃げるのは無理そうだ。逃げようとしなければ傍観者でいられたかもしれないのに……。
視線が、視線がいたいぃぃっ!
「うわあぁぁぁんっ」
「エリス様!?」
「え、エリス?」
「もういや……っ帰りたいっ!私に悪役令嬢なんて無理だもん……っ死にたくないだけなのにぃっ!」
自分でも何を言っているかわけがわからなかったけど、もう限界だった。ただでさえ人目から逃げてきた人見知りな私が、ヒロインと王子の対決に巻き込まれたり、ヒロインが兄だったり、お兄様が怖かったりでわけのわからない状況に泣いて何が悪い。
これが周囲に混じってならば傍観者として問題なかっただろう。けど、私は巻き込まれた側で、本来なら悪役令嬢。逃げられるはずもないのだと思えばもう泣くしかない。
私はただ普通の令嬢でいたかっただけなのに。
「え、エリス様~?ほ、ほら、エリス様の欲しがってたテディベアですよー?」
「なんでじっでるのぉ!ごわいぃっ」
「う……っ」
「あーエリス、今度新しいドレスを買ってやるから泣き止みなさい」
「いらないぃぃっ」
「ぐ……っ」
「エリス様、その、私は、決して泣かせたかったわけじゃないんです……!ちょっと殿下に腹が立ちすぎて」
「うぅぅっ」
「はぅ……っ」
「そ、そそそんなに私との婚約破棄が嫌だったんだな!よ、よし、婚約破棄を取り消して……」
「それは結構です」
何故かミニ殿下の言葉に一瞬だけ涙が止まり、気がつけばそんな言葉が出ていた。
「何故、私だけ塩対応!?泣けよ!」
そしてそんな私に対して泣けよと強く言われた私は……
「うわあぁぁぁんっでん、か……おこったぁっ」
大泣き。自分でもうざったい自覚はあるが、もう涙が止まらないのだ。もうなんで泣いてるのかすらよくわからなくなってきている。
「え、えぇぇっ!?これ、私が悪いのか!?」
とりあえず泣けよと言って泣き出す私に慌てるミニ殿下は滑稽だった。
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