婚約破棄に激怒したのはヒロイン!?

荷居人(にいと)

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「さて、殿下も起きたことだしそろそろ現実を見てもらいましょうか」

にっこりと笑みを浮かべたお兄様ほど怖いものを私は知らない。ミニ殿下も同じことを思っているのか、先ほどからガクガクブルブルと私以上に震えている。いや……震えすぎじゃ?もはや震えすぎてミニ殿下の顔がぶれている。

「ぐー……」

この状況でも眠ってられるキョーモ様が羨ましい。でもこんな状況でも寝る人がよく側近に選ばれたなぁと思わなくもないけど。

「さて、殿下はどこまで今日のことを覚えてますか?」

「え、あ、う」

「殿下……私は殿下言語は知りませんのでわかる言葉でお願いします。優しく聞いている内に、ね?」

「ひえっひゃ、ひゃい!べべ、ベラにま、股を蹴られて、きき気絶した覚えがああある!」

ミニ殿下の震える証言にミニ殿下以外の人物全員が"ん?"となった。何せミニ殿下を気絶させた犯人が何故か私のお兄様にされているのだから。恐怖と痛みで記憶が書き変わってしまったのだろうか?

「ははは、殿下……私がそんな酷いことをするわけがないでしょう?」

「ひ、ひぃっ」

しそうだけどな……と思いながらも口には出さない。お兄様に怯えまくるミニ殿下以外白けた目でお兄様を見ているのがわかる。

「殿下を気絶させる痛みを与えたのはあちらの方ですよ」

そう言ってミニ殿下の頬を思い切り掴んでルルー様とルーン様の方へと強制的に顔を向かせるお兄様。そしてミニ殿下は二人を見て、気絶前にルルー様が二人になったときをえぐえぐ言いながら見ていたはずなのに目を瞬かせて驚いている。

可哀想に……記憶が混濁しているようだ。自業自得とはいえミニ殿下に同情の眼差しが集まる。主に男性から。

「る、ルルーがふ、ふたり、ふたりいる!」

「一人は双子の兄だそうですよ?殿下に色々言ったのは兄の方です」

「そ、そうなのか?」

「ええ」

事実を語っているだけだが、お兄様が何をしたいのか未だによくわからない。驚きが恐怖に勝って落ち着いてきた様子のミニ殿下に、お兄様の笑みが深くなった気がして少しばかり嫌な予感がし始めた。

「そ、そうか!お、おかしいと思ったんだ!ルルーが私に酷いことを言ったり、したりするはずがないと!」

まさかのまさか、婚約破棄宣言前のミニ殿下が復活したような瞬間。ルーン様はもちろん、ルルー様まで嫌そうな顔をしている。ポジティブになれるのはいいけど、どちらにしてもルルー様の心はミニ殿下にないのは明らか。

それに気づけていないのは自分を取り戻してしまったミニ殿下ひとりだろう。お兄様はにこにことしたままだし、本当に何を考えているかわかったものではない。

いつまで人目に晒されればいいのか……私の繊細な心は婚約破棄直前に比べればマシなものの、限界に近いというのに何故お兄様は巻き戻すような真似をしたのか問い詰めたい。

そんな勇気もないから見ていることしかできないのだけど……。どこでも寝られるキョーモ様の度胸がほしいとつくづく思う私だった。
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